第6回オンキヨー点字作文コンクール [国内の部 入選作品]
今年は70編の応募があり、作家の藤本義一さんを審査委員長とるす選考委員会で審査した結果、以下の8作品が入選しました。(敬称略)

◎最優秀オーツキ賞 正賞・20万円とオンキヨーステレオ・ラクラクキット付き
「拍手の中に『笑顔』が見える」 東京都・増田太郎 (バイオリニスト、40歳)
◎優秀賞 正賞・10万円とオンキヨーステレオ・ラクラクキット付き
「指先のキャンバス」  岐阜県・吉田沙矢香 (家事手伝い、24歳)
◎佳作(2編)   正賞・5万円とCD券2万円分
「文字が消えた日」 山口県・小森 弘 (教員、55歳)
「扉を開けば」  山梨県・八村宏道 (山梨県立盲学校高等部専攻科理療科2年、46歳)
◎特別賞(小・中学生対象・2編)  正賞・オンキヨーステレオ・ラクラクキット付き
「未来へ・笑顔・ハーモニー」  静岡市・前田咲綺 (静岡県立静岡視覚特別支援学校中学部2年、14歳)
「わたしの世界」  金沢市・伊奈喜子 (石川県立盲学校中学部2年、14歳)



入選作品は、作品タイトルのリンクからご覧いただけます。
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審査会の様子


  選評 「息遣いが届く」   作家・藤本義一氏


藤本義一氏
 40歳の増田太郎さんは、親友のバイオリンと共に会場の聴衆の中に踏み込んで行く。その陽気な自由に満ちている言葉の中に、増田さんの真摯な息遣いと心遣いが十二分に感じられる。弾きながら歌うという楽しさは会場と一体化していく。
 増田さんは、これを『拍手リサーチ』と名付けているが、それまでの演奏にたどり着く道程は厳しかっただろう。講演ライブが決して一方通行ではない《響き合い》の空間であるという表現に、これまでの経歴が窺われる。読み終わった時に、この空間が無限に広がっていくのを感じる秀作である。
 吉田沙矢香さんの『指先のキャンパス』は一字一字が毎日前進していく日常を描いている。誰かをサポートするために“指点字”の練習に励む吉田さんの努力と精神を評価したい。弱視の自分だからこそ五感を活用するべきだと自分に言い聞かせながら、人それぞれに世の中の事象の捉え方や表現の仕方はさまざまあると悩む作者の表現に触れた時、50年間作家生活をしている私は、改めて原点に連れ戻される。
  佳作2編の『文字が消えた日』は、読みはじめて大きなショックを受けた。小森さんにとっては人生最大の衝撃だったろう。その中で点字に向かって前進する姿には深い感動を受けた。『扉を開けば』の八村さんの初スキーとビールの味を語るところには、思わず微笑をおぼえ、SMDC入会の話には人間は一人ではないという心の豊かな広さを感じた。
 特別賞対象作品の最後に残った4編はいずれも優劣つけ難い。
 が、前田咲綺さんと伊奈喜子さんの2作が、1歩前に出ているように思う。前田さんの『未来へ、笑顔、ハーモニー』 会話の出だしから一体なにが展開されるのかを期待を抱かす構成(コンストラクション)が巧みにある。音楽そのものが全神経の栄養分となっていくのがわかる。伊奈喜子さんの『わたしの世界』は祖母の名にちなんだアップライトピアノ“みっちゃん”との交流である。はじめは気持ちが入らなかった作者はホ短調4分の4拍子の曲『雪』を完成させ、それから自分の世界が広がっていく。読む者に夢を届けてくれる作品である。




 受賞おめでとうございます。

 
オンキヨー株式会社 代表取締役会長兼社長 大朏直人
オンキヨー株式会社 代表取締役会長兼社長
大朏 直人(おおつきなおと)

 第6回点字作文コンクールの受賞おめでとうございます。
 今年も、多くの方に勇気を与え、心に響く素晴らしい作品に恵まれました。
 
  先ずは、増田太郎(ますだ たろう)さん、最優秀オーツキ賞受賞おめでとうございます。
  冒頭から押し寄せる圧倒的なスケールと躍動感みなぎる文章構成、先ずこれに圧倒されます。さらに、増田さんが《講演ライブ》に臨まれる前後の心境表現や、お客さんとの掛け合いシーンでも、その場の雰囲気が生き生きと伝わってきます。
  「拍手」や「笑い声」などでお客さんの性別や性格をつかみ、その響き合いの中で高まる気持ちを演奏で返されている。お客さんとの距離は、増田さんが目で見ておられた当時より、はるかに近くなっているのではないでしょうか。 
  「コミュニケーションは心の響き合い」であることを、この作品を通して多くの方に知ってほしいと思います。
  優秀賞の吉田沙矢香(よしだ さやか)さんは、「五感の活用で、弱視の自分だからこそ伝えられることがある」と、指点字による支援をされています。盲ろう者の方との会話を真っ白な心で淡々とつづっておられ、感慨深く拝見いたしました。いたわりの心ですべてを包む、そんな優しい気持ちでつかみ取られた世界を、盲ろう者の指先のキャンバスに、大きく大きく描いてあげてください。
  佳作に選ばれた小森弘(こもり ひろし)さん。視力を落とされた当時の心の葛藤(かっとう)と苦悩の日々、そしてその後、墨字への執着を手放すことで点字の世界をパッと開かれる。その喜びへの瞬間が、点字習得に悩んでおられる方の心をとらえ、今後の励みの一助になってほしいと思います。
  現在は点字の触読と音声パソコンを両立させ、夢と潤いのある人生を切り開こうとされていますが、さまざまな挑戦によって内なるエネルギーを燃やし続けてください。
  佳作お二人目の八村宏道(はちむら ひろみち)さんは、温泉友達から突然スキー滑走に誘われたものの、目が見えないので躊躇(ちゅうちょ)されました。そりゃあそうですよ。しっかり見えていても怖いものですからね。ただ、その後、多くの方の支えと「スキーの後のうまいビール」の後押しで滑走が実現。今では、この道をさらに極められていますが、その過程がわくわくする前向きさで表現されています。「思い切って意識と身体を家の外に向ければ人生が大きく変わるよ」という強いメッセージを込めて。
  特別賞の前田咲綺(まえだ さき)さん、中学校の校内放送を巡る先輩とのかかわりを、話し言葉を交えて、とてもさわやかに表現してくれました。
  題材の相談、自作自演の試み、失敗して慌てたこと……、あなたの周りの皆に守られ、いつもピカピカ輝いている姿が作品の中に溢れています。
  そして、「ごめんね」という友達の一言の謝りの電話から、人の温かさを受けとめられたその心はとてもステキですよ。大切にしてください。
  特別賞お二人目の伊奈喜子(いな よしこ)さんは、もの心のついたころからピアノに接し、ご家族から「みっちゃん」をプレゼントされ、ステップアップの機会が得られました。それが糧となって、今では自作自演で人を楽しませるまでに成長されましたが、その間のあなたの意志がしっかりと表現されています。ご自身の頑張りと共に周りの皆にも感謝し、これからもオリジナリティー豊かな演奏で多くの方に安らぎを提供してください。期待しています。
 
 最後に、ご応募いただいたすべての皆さまに心から感謝いたします。
 学校単位の出品も年を重ねるたびに多くなり、本コンクールの広がりを感じるとともに、この点字作文コンクールがきっかけとなって、点字文化が世界の隅々まで浸透していくよう願っています。

このページは音声読み上げソフトに対応するため配慮していますが、
本来の読み方とは異なることがありますので、ご了承ください。

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