海外の部 WBU-AP地域 シニア・グループ 佳作
遠い昔に諦めた夢を再び
インドネシア  アーディナル・プルボウォ(34歳・男性)

「天空の夢」という言葉がありますが、私は「諦めた夢を再び」と言いたいと思います。

最初に部分的失明と診断されたのは2004年のことでした。医師からは近い将来、完全に失明すると言われました。そして、すぐにその通りになりました。予言があたったのです。そのときはずいぶん落ち込みました。目が見えないことで人生が終わったかのように思いました。

でも、自分の境遇を受け入れられるようになってからは、まるで自分が生まれ変わったかのように感じました。歩行訓練で白杖を使えるようになり、点字で読み書きを学び、パソコンとインターネットもできるようなりました。

スーパーマンの映画をご覧になったことがありますか。クリプトナイトというスーパーマンの弱点である架空の物質で満たされた真っ暗な部屋に閉じ込められたスーパーマン。それが私だと思ってください。自分の目が見えなくなると知ったときの私の気持ちです。でも、新しいスキルを身につけ、新しい自分を受け入れてからは、クリプトナイトの部屋から確実に抜け出すことができたスーパーマンの気分でした。長く閉じ込められていた場所を抜け出して、スーパーマンのように空を飛んで、どんな困難でもヒートビジョンで突破できるんだと思いました。

バンドンに行ってからは、まるで新しい人になったかのように感じました。全知全能の神が新しい世界、新しい魂、新しい人生の目的を授けてくださったかのような感覚でした。私の血の中にポジティブなエネルギーが流れ、勇気が湧いてくるようでした。

2013年、それまで胸の奥深くにしまいこんでいた夢を抱えて、プルウォケルトに戻りました。インドネシア視覚障害者協会(PERTUNI)のバニュマス支部で友人がたくさんできました。皆、親切な人ばかりでした。

その友人たちからある日、唐突にこんなお願いをされました。
「ボウォさん、古いタイプの携帯電話を探してもらえないかな。新しく出たのはキーボードがQwerty(クワーティ)配列だから使えないんだよ」。

それを聞いて、ずいぶん時代遅れな人たちだと思い、思わずからかいたくなりました。だんだんその気持ちが抑えきれなくなったので、代わりにQwerty配列の携帯電話の使い方を教えてあげました。うまくいきました。今では全員が、Qwerty配列の携帯電話どころか、スマートフォンまで使えます。画面読み上げアプリのインストールを手伝ってくれ、と言われると嬉しくなります。少しずつとはいえ、そのうち携帯電話に入っているアプリは、オンラインの交通アプリも含めて、全部確実に使いこなせるようになると思います。オンラインの交通アプリで通勤がこれほど安く、しかも簡単になるとは思いもしませんでした。視覚障害者が安全に移動するのにこのアプリは実に便利です。

PERTUNIの総務を担当したとき、会計用にマイクロソフト・エクセルなどのソフトの使い方を他のメンバーに教えたことがあります。また、ビジネスツールとして、フェイスブックなどソーシャルメディアの使い方も説明しました。そのおかげで、フェイスブックで新しい顧客を獲得した人もいました。

私はマッサージ、リフレクソロジー、部屋貸しなどの仕事をしていますが、広告をソーシャルメディアで発信したところ、ビジネスが拡大しました。以前から書くことが好きだったのですが、自分が書いたものをブログに掲載したりもしました。

さらに、何より重大で嬉しいことがありました。最愛の人と結婚したのです。最初、妻の家族は私のような視覚障害者がはたして家族を養っていけるのかと思っていたようです。妻が容姿端麗だったこともあり、なおさら私の能力に疑念を抱いていました。

でも、実際に行動で示して、ようやく安心してもらうことができました。床掃除、洗濯、妻のバイクの洗車などの家事を私が、食事の支度、バルコニーとトイレの掃除を妻が担当することにして、2人でうまく家事を分担しました。

時間があると、人体構造や臓器、各臓器に関連する病気についてインターネットで調べています。マッサージの仕事にとても役立つからです。あるとき、ねん挫した人が来たのでYouTubeで知った施術をやったところ効果が出て、とても満足してもらえました。まさか視覚障害者がYouTubeの動画で知っただけの施術を実践するなんて、誰が想像したでしょう。私自身でさえ思いもよらないことでした。

その他にも、道に迷う心配もなくどこにでも行けます。Googleマップ上には仕事先のピンを立てて使っています。

神とつながるためにコーランを暗唱するのに、ずっと苦労してきました。でも、今は点字版かデジタル版のコーランを使うことができるので、コーランを暗唱して神とつながりたいという気持ちが強くなりました。人生を終えるときまで暗唱を続け、願わくは来世において、現世で神とつながるために私がどうしたか、を誇らしく神に伝えたいと思います。

「神は置き去りにしようとあなたをこんなに遠くまで連れてこられたのではない」。ボン・ジョヴィがアルバムのジャケットに記したこの言葉を耳にすると、いつも涙がこみ上げてきます。幸福と感謝の涙があふれます。この言葉通り、アッラーは、私が本物の真珠だと思いこんでいたものが、実はまがいものだったのでお召し上げになり、それを本物に変えてくださったのです。

遠い昔に埋めてしまった箱。夢がいっぱい詰まったその箱を、今まさに掘り返しているように思います。箱を開けると、この上なく美しい場所に私を運んでくれる、最新型ロケットが入っていました。こんなに美しい世界に連れてきてくださった神に感謝いたします。