海外の部 EBU地域 シニア・グループ 優秀賞
こんにちは、レ二
ハンガリー  ボルディザール・ツェントバリートート(26歳・男性) 
 レニ、こんにちは。
 君は驚くかもしれないけど、今日、僕は政治について書こうと思うんだ。僕にとってはかなり珍しいことだし、君も僕が政治について語るのを、いままであまり見たことはないよね。僕に起こった全てのことは、これまでのメモから、君にもわかっているはずだ。でも、今日、僕は特別な経験をしたので、それを書き残しておきたい。君が大きくなったときに読めるようにね。君が選挙で投票できるようになってから…。
 僕が初めて投票権を行使することができたのは、2009年の欧州議会選挙だった。若くて、熱心で、意識の高い市民である僕は、一人で投票所に入った。15年経って大人になったら、きっと君も同じことをするだろう。白杖を手に入ってきた若い男(つまり僕)を見て、選挙管理委員会の人たちは目を見合わせ、混乱した様子だった。数秒間の当惑の後、僕は、そのうちの一人が付添うので、投票ブースに行くようにと言われた。僕が所定の欄に×印を入れて投票するのを手伝ってくれるというのだ。ブースの中では二人きりだったので、僕は彼に、僕が投票したい政党名を伝えた。彼は、僕から少し離れて、それからこう言ったんだ。

  • その政党への投票はお断りします。
  • 2秒ほど、ぎこちない沈黙が流れた。やっと彼はその場を離れ、同僚を呼んで、僕の介助をするように言った。一人の女性がブースに入ってきて、僕が頼んだとおりの欄に×印を入れてくれた(と思いたい)。
  • さて、かわいいレニ、これが数年前に起こったことだ。でも、そのとき君はまだ生まれていなかったし、僕も君がそんなにすぐに現れて、僕の生活を変えることになるとは思ってもいなかった。
  • その後、両親と一緒に投票に行ったこともある。「おばあちゃんとおじいちゃん」と一緒に、だ。でも、もうどんな事件にも遭遇しなかった。僕たちは投票ブースに入って、僕たち皆が支持していた政党に、一緒に投票した。
  • そして、今日のことだけど、君のお母さんのキンガと一緒に投票に行ったんだけど、全てが変わっていたのがわかった。投票所のスタッフは僕たちを笑顔で迎え、点字で書かれた投票用紙のテンプレートを手渡してくれた。ボール紙に穴が開いていて、投票用紙にかぶせるとどこにチェックを入れるかがわかるようなものだ。順に番号を振った候補者名と政党名が点字で書いてある一覧表も渡された。それぞれの穴の前には点字の番号がついており、どの穴がどの候補者もしくは政党に対応するかがわかるようになっていた。僕は投票したい候補者を選んで、テンプレート上でその番号を見つけて、所定の欄にチェックするか×印を入れるだけでよかった。そうすれば、僕の票は登録される。投票用紙を投票箱に入れた後は、誰も僕がどうやって投票したかなんてわからない。つまりまさに、誰に入れたかが秘密になるわけだ。

 僕が書いたことを読めば、現代のデジタル社会においてさえ、単純な解決法がどんなに役に立つかがわかるだろう。いや、わかるようになるだろう、と言った方がいいかな。盲人の投票権に関する基本的な問題が解決された。数年のあいだに、僕たちは、民主主義の世の中の期待に応える正当な投票方法を獲得したんだ。
 君には必要ないだろうけど、それでも、君には点字の書き方を学んでほしい。そのことから君は大きな恩恵を受けるからだ。それに、ひょっとすると、それを活用することができる時が来ないとも限らないし…。
 とにかく、かわいいレニ、僕が今日伝えたかったのは、希望はある、ということだ。いつだって希望はある…。