海外の部 ABU地域 シニア・グループ 優秀賞
移民−その理由と目的
アフガニスタン シェール・アリ・ウメラ(27歳・女性) 

 移民とそれによる世界情勢の変化が現在重要な問題になっています。大量の移民が主にヨーロッパの国々に押し寄せています。加えて、移民問題は経済や安全保障とともに、欧米諸国における選挙戦の主要な争点の一つでした。これは国際社会が対処すべき21世紀の難題であり、その根本的な原因に国際社会が力を合わせて取り組むことでしか解決できません。各国のリーダーが移民問題に対して正しい決定ができるかどうかは、視覚障害者か晴眼者かにかかわらず、グローバル市民である私たちに掛かっています。

 この作文では、移民が発生する原因とその目的を考えます。まず全体像を描いてから、なぜ人は移民になるのかに焦点を当てます。そして最後に、社会の一員として私たちに何ができるか、どんな役割を果たすべきかを述べます。

 簡単に言えば、移民は新しい場所(別の国の場合もある)に移って生活することと定義されます。2015年の国連の報告によると、世界全体で国境を越える移民の数は2億人を超えています。その大多数はヨーロッパ、アジア、北米に住み、その数は増加し続けています。一方、自国内で住む場所を奪われた人の数の方がはるかに多く、8億に迫る勢いです。国境を越える移民と自国内での移民の数を合わせると、実に世界の7人に1人が移民ということになります。

 なぜ、また何の目的で移民するのかを理解するには、その背後にある要因を理解する必要があります。大まかに言うと移民の理由は、1)より良い住環境を求めて自ら移住する、2)困難な状況から逃れるために移住を余儀なくされるの2つです。移住するかどうか、また行き先をどこにするかを決めるときに、この「押し出される」のか「引き寄せられるのか」という点(移住の動機)が重要です。

 移民の1つ目のカテゴリー(より良い住環境を求めて)は、移民に選択肢があり、自分で選択できるという共通点があります。移住前の住環境が比較的満足できるものである場合が一般的です。「より良い生活」を心に描き、他の要因も合わせて移住するかどうかを判断します。特に交通と通信における技術の進展によって、この1つ目のカテゴリーの移民が増えました。

 この種の移民の最も重要な理由は機会があることです。それは経済の機会、雇用機会、教育の機会などです。国境を越える移民のほとんど、そして一部の国内移民はこのカテゴリーに入り、投資家、起業家、熟練労働者、単純労働者、学生などです。このグループの中で、経済的移民、特に単純労働者の移住の第一の理由は貧困です。田舎から都市へ移住(より良い仕事と収入を求めて村から都市へ移動)するのは、主に単純労働者です。

 家族が理由の場合もあります。移住の統計によると、家族と一緒に生活するというのも大きな理由です。その場合、より良い生活をしている家族のところに移り住むという傾向があります。最後に、移住の新しい傾向として、先進国で退職した人がより質の高い生活を求めて他の場所に移る退職後の移住があります。この移住では経済力があるかどうかが重要です。

 移民の2つ目のカテゴリーは、自宅を追われ、住んでいた村や町あるいは国から逃れることを余儀なくされる人達です。難民に加えて、自国内での移民の大半がこのカテゴリーに該当します。シリアからレバノンへの移民、近年ヨーロッパに大量に押し寄せた移民のように、ほとんどの場合、事前の計画や受け入れ側の地域や国との調整はありません。さらに、こうした移民の大多数は、精神状態や経済的な理由から緊急の人道支援を必要としています。

 こうした強制的な移民には紛争、迫害、開発事業、環境悪化、自然災害などさまざまな根本原因があります。中でも紛争と迫害が大きな要因です。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によると、シリア、アフガニスタン、ソマリアからの難民が世界の全難民の半数を占めており、戦争がいかに大きな要因であるかを物語っています。

 一方で、開発に関連する移民は、ダムや炭鉱等の政府あるいは民間の開発事業の結果生じたものです。移住が事前に計画されている場合が一般的であることから、他の強制的移民とはやや異なります。とは言え、こうした移民を保護する国際的な法律はありません。

 また、環境悪化や自然災害によって自国内で、あるいは国境をまたいで大規模な移民が発生することがあります。森林伐採、水質・土壌・大気汚染、さらには環境保護に対する政治的意志の欠如が気候変動の悪化を招く場合があります。その結果、より深刻な自然災害がより頻繁に発生することになります。これを食い止めなければ、将来移民発生の大きな要因になるかもしれません。

 移住することによって命が救われるだけでなく、移民は多様性や多様な文化、経済機会をもたらします。また、移民によって社会経済の基盤や人口動態が変わります。人身売買や規制外の移民に道を開くことになりかねず、それによって国家のアイデンティティや主権に関する懸念が高まります。移民と犯罪やテロの関係性が誤解され、極右政党が誕生し、反移民政策が進んでいます。そこで、私たち視覚障害者も晴眼者も、自国の社会や政府が正しい情報に基づいて意思決定ができるように市民レベルで取り組まなければなりません。人権活動に参加し、この問題に対処しようとする政党にチャンスを与えましょう。社会、業界、国、地域、世界とあらゆる規模で取り組むことで、移民の原因と目的を明らかにし、適切な政策を策定すれば、移民がもたらす可能性の恩恵を受けることができます。

 まとめると、移民の理由と目的はさまざまですが、自ら希望する移民と強制的な移民の大きく2つのカテゴリーに分けられます。そして行き先によって、国境をまたぐ移民か同じ国の中での移民かに分けられます。例えば干ばつなど、特に問題の深刻さが重要な場合には、自ら希望する移民と強制的移民の境界は曖昧になります。移民問題はこのように複雑なので、さらなる調査、政治的意志、集団的行動、短長期の解決策が必要ですが、何よりも市民の参加が求められます。