国内の部 サポートの部 佳作
「感動の点字」 
和歌山県 美里 美保子(みさと みほこ) (36歳・女性)
うちには、一時期シャンプーと名前のつく物が3つあった。トリートメント の容器に入ったシャンプー、 ボディソープと見せかけて中味がシャンプー、 そして、 シャンプーの容器に入ったリンス。こうなると見えている私でもどれが 本物のシャンプーか分からなくなる。本物のトリートメントとボディソープを 入れると全部で5つ体用洗剤が並んでいた。
なぜこういう事になるかというと、詰め替えを入れる時に中味を間違えてしまうから。 私の両親は全盲なので、詰め替えパックに書かれている墨字を読むことが出来ない。なので、使う時になって違う事に気づくという事がよくあった。 捨てるのももったいないので、それを使いつつ、また、本体を購入していたら数がどんどん増えてしまった。 シャンプーをしてからトリートメントをプッシュする。さっきと同じように泡が立つ。
「あー間違えた、シャンプーやん。」
体を洗おうとボディソープを1プッシュ。何か、匂いが違う。
「これも違う、シャンプーやん。」
シャンプーどんだけあんねん! 使う度にツっこむ。 私は決して手伝おうとせず、せっかくなので本物がいつ当たるのかを毎日楽しみにする。
そんなある日、いつもの詰め替えパックに点字が打たれるようになっていた。 これを最初に見つけたのは随分前だけど、私はかなり嬉しかったのを覚えている。なぜなら見えなくも点字を読めばすぐに中味が何か分かるし、商品を作る会社も見えない人が使いやすいように工夫してくれているのだと思ったから。 私の楽しみは一つ減った。 けど、多くの視覚障害ある方は、この点字がとても ありがたい事だったんじゃないかなと思う。これはシャンプーに限った事ではなくて、最近では様々な商品に点字が打たれるようになった。缶ビールであれば、飲み口の近くに 「おさけ」と点字が打たれている。開ける前にジュースかお酒かを判別出来る。ふりかけにも点字が打たれている。食べたい時、食べたい味のふりかけを使う事が出来る。CDにも点字が打たれているのを見つけた時は、すごく驚いた! そうなると私の方が「何て書いてるん?」と両親に聞いたりする。
こうして考えてみると、点字の存在はすごく偉大だ。点字があるだけで、見えなくても出来る事が増えるから。点字があるだけで安心して生活ができるから。そして、点字があれば、視覚障害者と健常者がつながる事が出来るから。
うちでは昔から点字毎日をとっている。 私は小さい時から目にしていたので、 珍しくはなかったけど、ある日、中学校の先生をしている友達に点毎を見せたら、すごく感動していた。
「自分達が新聞を読む時は、ザッと目を通して気になった所をサット見つけて読むことが出来るけど、点毎を読む場合は自分達よりも時間も労力もずっと かけて読んでいるんやろうね。これを見ていると読み手の読みたい、知りたいという思いが感じるし、労力を惜しまず新聞を製作する熱意も伝わる」と言っていた。
それからその点毎は友達の学校に置かれて、そこからまた他の先生方が気になり手にとって見てくれていると聞いた。中には、「両面に点字が打ってある!」と驚いた先生もいたよと教えてくれた。点字が目新しい人には驚きの連続だったはず。「点字は紙の裏側から点字盤と点筆を使って右から左に打つんやよ。だから文字も左右対称に打つんやよ。」て事を言えばどうなっただろう。あまりの作業の複雑さに更に驚嘆したかもしれない。それと同じ位、点字を使っている人はすごいなと一目置くんじゃないかなと思う。
だから私は、点字は視覚障害者だけに必要なものではなくて、健常者にとっても、知れば知る程、新たな発見と感動に出会える素晴らしいものだと思っている。点字だからこそ、お互いの距離が縮まり、楽しいやりとりができる気がする。 今では小学校でも点字を習う事があるという。きっと子供たちもワクワクしながら点字を学んでいるんじゃないだろうか。覚えた点字を早速使って、コレは何ですよと視覚障害者とコミュニケーションしているかもしれない。
これからもどんどん点字が世の中に溢れてほしいなと思う。そうすればきっとバリアフリーの世界がもっとつながっていく。
点字は日常のあちこちで感動に出会うのを待っている。