国内の部 学生の部 特別賞(小・中学生対象)
「出会い」
 栃木県立盲学校中学部3年 広瀬 由花(ひろせ ゆか)(15歳・女性)
 音楽は私にとって特別なものです。歌を歌うことやピアノを弾くことなど、音楽を奏でることは、私にとって楽しみでもあり、生きる力の源でもあります。そして、音楽がもたらした新たな出会いが私を大きく成長させてくれました。
 私は幼いころから歌うことが好きでした。いつもCDに合わせて様々な歌を歌っていました。小学生の頃、友達が合唱を始めたという話を耳にしたとき、「私もやってみたい。」と思いました。しかし、今まで地元で活動している合唱団の話など、聞いたことがありませんでした。また、人とコミュニケーションをとることが苦手だった私は、「きっと周りの人と上手く関われないだろうし、続かないだろう。」と思い、あきらめていました。当時の私は、合唱をやりたいという気持ちよりも、周りの人と会話ができずに仲間はずれになるのがこわいという気持ちの方が強かったのだと思います。
 それからも合唱をやりたいという気持ちは変わりませんでしたが、なかなか行動を起こすことができずに時間が過ぎていきました。そんな私を変えたのは、ある合唱団との出会いでした。きっかけは、昨年の夏に開かれた進路相談会でした。進路相談会の後、母が「市内で活動している合唱団はありませんか?」と尋ねました。すると、同席されていた施設の方が「知り合いに合唱団をやっている人がいるから声をかけてみるね。」と言ってくださったのです。その後、その合唱団の団長の方と連絡を取り、体験に行くことになりました。私の気持ちは複雑でした。念願の合唱ができてうれしい反面、その場の雰囲気になじめるか、団員の皆さんに受け入れてもらえるのかという不安もありました。だから体験に行く前は、入団するべきかどうかとても迷いました。でも、「歌いたい」という気持ちが強くありました。「迷っていても仕方がない、一歩踏み出してみよう。」、そう思いました。初めて練習に参加した日、私は合唱団の方々の歌声に圧倒されました。「やっぱり私には無理だ。皆さんの足を引っ張るだけだ。」と思いました。でもその思いは時間が経つごとに薄れていきました。一緒に歌ったり会話をしたりするうちに、その場の雰囲気にも慣れ、練習が終わった後には「楽しかった。また行きたい。」と思うようになっていました。私はすぐに入団を決めました。正式に入団した日、団長の方が「来てくれてよかった。」と言ってくださいました。その言葉がとてもうれしかったことを今でも覚えています。やはり初めのうちは不安もありましたが、団員の皆さんがたくさん声をかけてくださいました。誰かと一緒に歌うことがこんなにも楽しいことなのかと改めて感じました。少しずつ声をかけられるようになり、いつも楽しく会話をしています。団員の方々に「声がきれいだね。」とほめていただき、今までよりも自信をもって歌うことができるようになりました。今は合唱の練習が一番の楽しみとなっています。
 私はこの合唱団と出会って、少しずつではありますが、自分から人に話しかけられるようになってきました。引っ込み思案で家族や学校の先生、友達以外とはほとんど関わりのなかった私に、たくさんの人と関わる機会を、歌は与えてくれました。歌を好きでいなかったら、合唱団の皆さんと出会うことはありませんでした。合唱団の皆さんは私を優しく受け入れてくださいました。楽しいだけでなく、いろいろな意味で私を成長させてくれる合唱団は、私にとって大切な居場所です。これから生きていく中でたくさんの人に出会うことでしょう。そしてその出会いをきっかけに学べることもあるでしょう。私はその出会いの一つ一つを大切にしていこうと思います。そして、私にとって楽しみであり、また、生きる力の素でもあり、自信でもある歌をこれからも続けていきたいです。私は自分を成長させてくれたすべての人に感謝しています。合唱団を紹介してくださった施設の方や、団長をはじめ、障害をもつ私を優しく受け入れてくださった団員の皆さんに。それからあの時進路相談の場で合唱団はないかと相談してくれた母に。そして、すてきな出会いのチャンスをくれた「歌」にも。
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