第11回オンキヨー世界点字作文コンクール 国内部門
本年度は75編の応募があり、作家の難波利三さんを審査委員長とする選考委員会で審査した結果、以下の応募者が入選されました。(敬称略)
最優秀オーツキ賞 正賞20万円と、副賞ラクラクキット付きミニコンポ
成人の部
優秀賞 正賞10万円と、副賞ラクラクキット付きミニコンポ
佳作 正賞5万円と、副賞ラクラクキット付きミニコンポ
学生の部
優秀賞 正賞ラクラクキット付きミニコンポ
佳作 正賞ラクラクキット付きミニコンポ
特別賞(小・中学生対象) 正賞ラクラクキット付きミニコンポ
 
選評 「点字が導く光」

作家 難波利三(なんば・としぞう)氏
 最優秀賞・杉元忠幸さんの「支えられ、生かされて」は、働き盛りの時、頭にできた腫瘍の手術で視力を失う。だが娘の言葉に励まされ、退院後は点字を習い、弁論大会に参加、マラソンにもチャレンジする。盲導犬の素晴らしさを知って共に暮らし始め、猛勉強してマッサージ・指圧師の資格免許を取得し、今度は就職して社会に貢献、恩返ししたいと願う。新たな人生の目標を見定めて、一つずつ着実に乗り越えていく。その精神力の強さと行動力が頼もしく、まだ次々と挑戦を目指しそうな情熱が伝わる。
 成人の部の優秀賞・鈴木恵美さんの「我が家の点字物語」。点字をめぐる家族それぞれのエピソードが温かく、ほほ笑ましい。地震に負けなかった40年前の点字用紙の健在ぶりも、感動的だ。
 佳作・荒美有紀さんの「一筋の光」。聴力と視力を失い、深い絶望と孤独の底から一筋の光を見いだす。それが点字を学ぶことだった。学ぶ努力が不可能を可能にし、生きる力を与えてくれる。その尊さを教えられる。
 同じく佳作・バトバヤル・エンフマンダハさんの「点字が生きがいにつながった」。モンゴル出身のバトバヤルさんは、日本の点字との微妙な違いを克服して六つの考えを得る。そして学んだ知識や技術を母国に広め、未来を歩みたいと。両国の懸け橋になる予感がする。
 学生の部の優秀賞・緒方健人さんの「一歩外へ踏み出す勇気を」。バンド活動がしたいため、福岡から上京してネットでメンバーを探し、プロドラマーになる夢を描く。その勇気と行動がすがすがしい読後感を与える。
 佳作・中村彩佳さんの「広がる世界」。先生の勧めで声楽を始め、自分の世界が広がった気がする。そして入賞し、更に練習を重ねて次の大きな目標に向かっていく。声楽に打ち込む強い決意があふれている。
 特別賞・西本ひよさんの「習字に対する私の思い」。習字を習う楽しさと、うそをつかないという反省の気持ちが正直につづられている。練習の場面が浮かび、筆の感触と墨の匂いがほのかに伝わってくる。
 同じく特別賞・平林太一くんの「せんせいあのね」。どの部分にも素直な発見と感動があり、つい笑顔を誘われる。
 
入賞おめでとうございます
オンキヨー株式会社 名誉会長
  大朏 直人(おおつき なおと)
本年度も、心に響く素晴らしい作品が届けられました。
受賞された皆様に、心よりお祝い申し上げます。
最優秀オーツキ賞 「支えられ、生かされて」  杉元忠幸さん
人生というものは気持ち次第でどこからでもやり直しがきく、ということを杉元さんの作品を読んで改めて実感いたしました。42歳という年齢で仕事を辞めなければならない。守るべき子供達もいる。そのような状況の中で点字という新たな文字を勉強しなければならなく、更には新しい仕事を探さなければならないなど非常にご苦労もあったことと思います。しかし、杉元さんの作品からはそういったご苦労というよりはむしろ、今までにはなかった発見や喜びにあふれていらっしゃいました。環境が変わったことにより、杉元さんは新たな自分を見つけられ、今までとは違った考え方や見方を実感していらっしゃることと思います。これからもご苦労はあると思いますが、新たな仕事を通じて新しい発見や喜びもあふれていらっしゃることでしょう。是非これからも新しい道を楽しみながら歩んでください。
成人の部
優秀賞 「我が家の点字物語」  鈴木恵美さん
40年前の点字用紙が偶然見つかったことから、ご家族との懐かしい思い出が蘇ってこられたのですね。どのエピソードも心温まるものでしたが、お父様のエピソードがとても印象に残りました。「つろとキツネ」のエピソードでは、点字の打ち間違いをからかわれていじけてしまったお父様の姿を想像して笑いを誘われました。本棚のエピソードでは、お父様が点字辞典を傷つけないよう工夫を凝らしながら、鈴木さんのために一生懸命本棚を作っている姿が目の前に浮かんでくるようで、お父様の優しいお人柄と鈴木さんへの愛情がとてもよく伝わってきました。
すてきな点字本を作ってくれたお母様、点字の教本にチャレンジして手紙を書いてくれた弟さん、全てのエピソードを読み終えてほっと心が温かくなるとともに、点字を通じて鈴木さんのご家族がつながっていらっしゃるのだなと感じました。すてきなご家族との絆、いつまでも大切にしてください。
佳作 「一筋の光」 荒美有紀さん
音も光もない世界など私には想像すらできませんでしたが、「真っ暗で無音の深海の底」という表現に深い絶望感を伴ったリアリティを感じました。健常者だった作者が次々に病魔に襲われ、聴覚を失い、やっとその苦しみから何とかして頑張ろうと立ち上がったばかりの3か月後には視覚も奪われてしまう。なんというむごい現実なのでしょう。神様を呪う気持ちにならない方が不思議なくらいです。そんな絶望の淵に追い込まれながらも、ブレイルセンスという機械との出会いによって点字を通して外界とつなぐことができるようになる過程が生き生きと語られます。
読者にとっても、ブレイルセンスは本当にそんなことができるのかという驚きを与える「魔法の箱」であることがよく伝わってきますし、点字がまさに「一筋の光」であることを実感することができます。前半の絶望感から一転して後半は外界とつながる喜びがあふれんばかりに語られ、今後の作者の活躍が目に浮かぶようです。
佳作 「点字が生きがいにつながった」  バトバヤル・エンフマンダハさん
「記録する」ことはとても重要なことです。エンフマンダハさんも大学のクラスで点字が使えるようになった後では、学習のスピードや理解の深さが、点字が使えなかった時に比べて大きく改善されたことでしょう。大学では周囲の理解を得るためにひたむきに努力した結果、点字でメモを取ることが認知されるようになりました。人は、一所懸命な人にはそっと手を差し伸べるものだという良い例ではないでしょうか。エンフマンダハさんのおっしゃる6つの考え方は、障がい者ではない者にとっても同様に考えることができます。ひょっとすると企業にも同様のことが言えるかもしれません。明るく前向きに、ともに歩んでいきましょう。
学生の部
優秀賞 「一歩外へ踏み出す勇気を」 緒方健人さん
「バンドを組みたい。ドラムがしたい。」という音楽に対する緒方さんの熱い情熱を強く感じました。バンド活動に限らず、何か新しく物事を始める際は億劫になったり尻込みしたりするものですが、緒方さんはご自身で仲間を探しアポイントを取るという「行動」で一歩外へ踏み出す勇気を表現されています。また、緒方さんが持たれていた不安を一気に払しょくする程、理解のある気さくなバンドメンバーとの出会いがあったようですね。
障がいをもっていても、一歩踏み出したいという方々にとって大変励みになる作品です。是非これからも、技術を磨こうとする向上心や強い行動力をもって、音楽活動を精力的に取り組んでください。
佳作 「広がる世界」 中村彩佳さん
全盲ということで周囲の人々に特別扱いされていた小学時代、周囲に合わせようと無理をしていた中学時代、それまでとは全く違うタイプのクラスメートの態度に困惑した高校時代。いつも取り残されたような疎外感を持ち、悩んでこられた末にたどり着いた結論が、「ありのままの自分でいこう!」。とても力強い宣言に心が打たれました。どんな人でもその人なりの個性があり、ありのままでいることをお互いに受け入れること、その当たり前のことが真の理解につながるということを実感いたしました。ぜひそのまま強い心を持ち続けてください。そして、当たり前の共有が実現される世界が来ることを信じて、これからも前向きにいろんな事に挑戦してください。
特別賞 「習字に対する私の思い」  西本ひよさん
目の不自由な方が字を書くというのは非常に困難なことであるのに、点字に加え習字まで挑戦をするということに頭が下がる気持ちです。また、習字を続けていいく中で西本さんがファンである「嵐」の漢字の形がわかり、更に文字を身近に感じたのではないでしょうか。漢字には一つ一つ意味があります。耳で聞いて感じるニュアンスに加え、これからは一字一字を理解していくことでこれからの西本さんの人生に大きな財産になっていくのではないかと思います。
漢字の意味を理解して気持ちを込めて書けば、りっぱな文字に表現されます。ただ上手に字を書こうと思わず、その文字の意味を理解して習字を続けてください。まだまだ、覚える字がたくさんあると思います。習字で紙に文字を書く楽しさを感じながらこれからも頑張ってください。
特別賞 「せんせいあのね」  平林太一さん
平林君が、先生を大好きなことがこの作品を読んで強く伝わってきました。
毎日新しい発見や驚きがあり、それを大好きな先生に伝えたいという「まっすぐな気持ち」が作品に表現されていると思います。小学校1年生で、これだけの表現力がある文書を作られるのは、本当に文才があるのだと感じました。また、パーキンスを使って、「しりとり」を打つことは、難しいとかと思いますが、楽しんで打てると言うことは、すばらしいことだと思います。これからも、いろんな発見、楽しいことが、たくさんあると思います。先生と一緒にいろんな事に挑戦して、また楽しい作品を読ませてください。