第7回オンキヨー点字作文コンクール  [国内 入選作品]
本年度は54編の応募があり、作家の藤本義一さんを審査委員長とする選考委員会で審査した結果、以下の8作品が入選しました(敬称略)

【成人の部】
◆最優秀オーツキ賞 正賞・20万円とオンキヨー製ミニコンポ(ラクラクキット付き)
「妻と二人三脚で楽しむ点訳」 富山県 塘添 誠次(とうぞえ せいじ) 男性・60歳
◆優秀賞 正賞・10万円とオンキヨー製ミニコンポ(ラクラクキット付き)
「白い黒板」 新潟県 栗川 治(くりかわ おさむ) 男性・50歳
◆佳作(2編) 正賞・5万円とオンキヨー製ミニコンポ(ラクラクキット付き) 
「マイノリティーとして有意義に暮らす」 奈良県 片寄 健司(かたよせ けんじ) 男性・60歳
「イチゴ」 香川県 柳原 明子(やなぎはら あきこ)  女性・34歳
【学生の部】
◆優秀賞 オンキヨー製ミニコンポ(ラクラクキット付き)
「音を楽しむ、それが音楽」   鳥取県立鳥取盲学校高等部普通科3年 植田 悠郁(うえた はるか) 女性
◆佳作 オンキヨー製ミニコンポ(ラクラクキット付き)
「自分に出来ること」  富山県立盲学校高等部普通科1年 藤縄 佑樹(ふじなわ ゆうき)  男性
◆特別賞 オンキヨー製ミニコンポ(ラクラクキット付き)
「ドラムに出会って」 奈良県立盲学校中学部2年 脇本 翔太(わきもと しょうた)  男性
「僕とBUMPと響君」 東京都立葛飾盲学校商学部6年 大内 凌(おおうち りょう)  男性



入選作品は、作品タイトルのリンクからご覧いただけます。
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審査会の様子




  選評 「決断と勇気」   作家 藤本義一氏


藤本義一氏
 最優秀の塘添誠次(とうぞえ せいじ)さんは44歳の時に網膜色素変性症で視覚を喪(うしな)う。その後の1年間の苦しさは想像出来ないものだろう。
 市の点訳講習会に参加する。これも苦渋の連続だったが、奥さんがテキストの例文集を読み、2人で点訳がはじまる。奥さんは図書館通いがはじまり、テープに録音して夫婦で点訳する。知識の共有が二人三脚で進行し、こつこつタイプの奥さんは、通信教育で点訳者になった。夫婦の15年間は愛の進化、いや、深化ともいえる深い絆(きずな)の証しといえるだろう。
  優秀賞の『白い黒板』は板書の電子化に取り組み、失明してからも授業を続けている栗川治(くりかわ おさむ)さんの作品である。これは27歳の時に、突如として視力が低下した時から考えはじめた独自の開発である。盲学校から普通高校に戻るための一大決意の程が順序よく書かれていて、不屈の精神、それも栗川流やさしい情熱が生徒たちに注がれているのがわかる。現実に一番必要なのは“努力”と“繰り返し”だと教えられる。
  佳作に選ばれた『マイノリティーとして有意義に暮らす』の片寄健司(かたよせ けんじ)さんを評価したいのは、盲学校に勤務しながら、常に自分の決断を貫き通す行動力の爽快(そうかい)さである。決して後向きにはならない。1980年の青梅マラソンで、初めて伴走者と走ることを認めさせた。この一本気の凄(すご)さが他の視覚障害者たちに与えた意義は大きい。
  もう一つの『いちご』の柳原明子(やなぎはら あきこ)さんは、31歳の時、10回の手術に耐えたが、失明し、自分の殻に閉じ籠(こ)もり、自暴自棄に陥り、2年後に母から庭で摘み取ったイチゴを口にして、イチゴはいつまでもイチゴ、私はいつまでも私と感じて前向きになる。爽(さわ)やかな再出発の入り口を感じさせる。
  他の選考に残った他の作品も優劣つけ難いが、文章の平板な流れに、もうひとつの変化が欲しかった。
  「学生の部」は、これまたすべて秀逸な作品が並んだ。特別賞の14歳の脇本君、12歳の大内君の作品は自己中心になりがちな環境の中で、背伸びすることもなく、陽気に日常を語りつづけている点に好感を覚えた。いずれにせよ、これらの作品は視覚障害の人たちに、大きな発進力を与えるだろう




 入賞おめでとうございます  

 
オンキヨー株式会社 名誉会長 大朏 直人(おおつき なおと)
オンキヨー株式会社 名誉会長
  大朏 直人(おおつき なおと)

本年度も、心に響く素晴らしい作品が届けられました。
受賞された皆様に、心よりお祝い申し上げます。

日本国内
最優秀オーツキ賞 「妻と二人三脚で楽しむ点訳」
 塘添 誠次さん(富山県 59歳 男性)

 最優秀オーツキ賞、受賞おめでとうございます。 「点字がご夫婦の円満の源になった」。 そんなご自身の経験がさわやかに綴られており、こちらの気持ちまで晴れ晴れとしてくるようです。塘添さんの作品からは、奥様とまさに二人三脚で、生き生きと点訳に取り組まれる姿が浮かんできました。塘添さんが作られる点訳本にはきっと、楽しみに待っている読者への想いがたくさんこもっているのだろうと思います。そしてそんな本を手に取った読者の方々は、必ず塘添さんの想いまでも読み取ってくれるのではないかと想像できます。前向きに進み、充実した毎日を過ごしていらっしゃるのでしょう。そんな丁寧な暮らしぶりが文章から伝わってきて、読んだあとには清々しい気分になりました。これからも奥様と仲良く、点訳本を待っている方々のために、想いのこもった作品を届け続けていただきたいと思います。

優秀賞 「白い黒板」
 栗川 治さん (新潟県 49歳 男性)

 何気なく過ごしていれば忘れてしまいがちな、「周りの人々に支えられて生きている」ということに感謝する気持ちを持ち続けることの大切さを、本作品を通して教えていただきました。きっと授業を受けている生徒さんたちは、その授業内容からはもちろん、先生の姿そのものからも、たくさんのことを学んでくれているのではないかと思います。だからこそ、素直な心で率先して準備を手伝ってくれるのではないでしょうか。そんな素敵な生徒さんたちをはじめ、周りに助けられながらも、大きな壁を努力と工夫とで乗り越えらえてきた姿には、頭が下がる思いです。こらからも、教壇に立ち続けることで“人間社会で生きていくということ”を示し続けてください。生徒さんたちの中には、卒業してからも、きっと先生の授業や教えが生き続けることと思います。 素晴らしい作品をありがとうございました。

佳作  「マイノリティーとして有意義に暮らす」
 片寄 健司さん(奈良県 59歳 男性)

 片寄さんは、自らを「マイノリティーとして60年近くを生きてきた」と表現されていますが、全てを受け入れた上で、毎日を前向きに進まれているお姿が伝わってきました。その道中には壮絶な体験もたくさんされてきたのだと思います。しかしそれを悲観するのではなく、片寄さん自身が肌で感じてこられたひとつひとつの体験を通して、“あらゆる人々が思いやりながら共存していくことの大切さ”を、私たちに伝えてくださいました。人間として生きていくうえで、当たり前のものとして持っているべき“思いやり”の気持ちを、忘れてしまってはいないだろうか?そんなことを考えさせられる作品です。 これからも、この作品で伝えてくださったように、それぞれが役割を自覚し、楽しく暮らしていくことの大切さを伝えていってください。そして、(ほどほどに)お酒を楽しまれながら、悠々と人生を歩まれることを願っております。

佳作 「イチゴ」
 柳原 明子さん(香川県 34歳 女性)

 本作品を読んだあと、題名のイチゴを思わせるような、甘酸っぱくさわやかな後味が残ったような感覚を持ちました。しかしそれとは裏腹に、目が見えなくなるという事実と向き合わなければならなかった時には、大変な葛藤やご苦労があったのだろうと思います。負けそうになる気持ちに打ち勝ってこられたご自身の強さが、素晴らしい先生との出会いをもたらし、新しい世界へとすすむきっかけを引き寄せたのでしょう。これまでの努力は、かけがえのないあなたの財産であり、これからも必ずあなたを立つべき場所に連れていってくれることと思います。本コンクールの入選が、ますます新たな世界へと羽ばたかれるステップになれば、これほど嬉しいことはありません。入選おめでとうございます。

学生の部  優秀賞 「音を楽しむ、それが音楽」
 植田 悠香さん(鳥取県立鳥取盲学校高等部普通科3年 女性)

  「音を楽しむから音楽」。
 そのことに植田さん自身が気付き、物事に対する考えが変わっていく様子が、しっかりとした構成と文章で表現されています。音楽を通して、強くたくましく成長していく植田さんの姿が想像されて、頼もしい限りです。嫌いだった音楽を克服して、ついには好きになるまでに、植田さん自身のたゆまぬ努力と、音楽に素直に向き合ってきた姿勢があるのでしょう。またそれと同時にこの作品を通して、人の心をこれほどまでに変えてしまう音楽の持つパワーを、改めて感じさせられました。もっと多くの人に、素晴らしい音楽に触れ合って欲しい、そう想う我々としても、あなたのように純粋に、自由に音楽を楽しむ人が増えてくれることを願っています。

学生の部 佳作 「自分にできること」
 藤縄 佑樹さん(富山県立盲学校高等部普通科1年 男性)

 心のこもった藤縄さんのピアノ演奏は、きっとお年寄りの方々にとっては何よりの栄養剤になるのだと思います。それが皆さんに伝わるから、涙を流して喜んでもらえるのでしょう。落語では、一生懸命に練習したのに、なかなか思うように笑ってもらえなくて残念に思う気持ちがよく伝わってきました。自分の声や表情のみでお客さんに笑ってもらうのはとても難しいことだと思います。何がダメだったのだろう?と、お客さんの気持ちになって振り返ってみること、そして次こそは!とまた頑張ることは、あなたをまた一回り成長させてくれることでしょう。楽しみにしてくれている人たちのため、これからも心を込めてピアノ演奏も落語も続けていってください。

特別対象作品 「ドラムに出会って」
 脇本 翔太さん(奈良県立盲学校中学部2年 男性)

  「元気いっぱい」。そんな言葉がぴったりの脇本さんの作品からは、弾けるドラムのリズムに負けないエネルギーが感じられて、とても元気をもらいました。ドラムに出会った時のわくわく感や舞台で演奏した時の緊張感、ペダルを買ってもらった時の興奮した気持ちなどが、上手く文章で表現されていて、思わずそれぞれの場面での脇本さんの表情を想像してしまいました。これからも、プロのドラマーを目指して、楽しくリズムを叩き続けてくださいね。そしていつか、お母さんに新しいドラムセットを買ってもらえる日が訪れますように!

特別対象作品 「僕とBUMPと響君」
 大内 凌さん(東京都立葛飾盲学校小学部6年 男性)

 大内さんと響君とのやり取りでは、お互いの心の中が本当は見えているのではないかな?と思ってしまいました。作品全体から、大好きなBUMPの新曲について響君と話をしたいことや、手紙が届くことが待ち遠しい気持ちが伝わってきましたよ。そして、「響君のことが大好き!」という気持ちが、上手く表現されていましたね。 これからも、大好きなBUMPはもちろん、たくさん素敵な音楽を聴いて、響君と色々なお話ができるといいですね。大内さんの世界がどんどん広がっていくことを願っています。

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