■海外の部 ABU地域 佳作
(シニア・グループ) 
「視覚障害教育で国がなすべきことは?」 スリランカ P.D.ニハール 47歳・男性

 教育はすべての子どもが享受すべき権利である。スリランカにおける視覚障害教育は1912年、ラトマラナに盲ろう学校が建てられたことに始まる。その後現在までに盲ろう学校が13校、盲学校が2校、合計15校が建てられた。
 それらの学校で、何千人もの子どもたちが教育を受けた。1977年の生徒数は414人であった。普通学校が視覚障害児の受け入れを始めたのは60年代の中ごろからである。これがインクルーシブ教育で視覚障害児童は晴眼児と同じ教室で授業を受けた。1977年の統計では357人が全盲、2,846人が弱視であった。これらの児童はその後、教師、弁護士、コンピューター関連技術者、会社員、セールスマンなどいろいろな分野で働いている。
 1994年に開かれたサラマンカ会議で採択された宣言の中で障害児にとって、自宅近くの学校が一番良いと明言された。会議の国家メンバーであるスリランカでは、その目的を実行するためにいろいろなプログラムが実行されている。私たちは教育が視覚障害者にとって質が高く十分に満足いくものかどうかを調査しなくてはならない。問題のいろいろな側面についても吟味する必要がある。視覚障害児は差別なく入学する機会があるのだろうか。すべての視覚障害児が教育を受けるための準備は整っているのだろうか。彼らに晴眼児同様に教育を受ける機会はあるのだろうか。
 特殊学校は視覚障害のある生徒を通常レベルの試験(GCE)の点数によって受け入れている。しかし、中等教育では普通校に通わなければならない。しかし、高等教育レベルになると受け入れる準備のない普通学校もある。その意味で差別なく学校に通えているとは言えないだろう。
 すべての視覚障害のある子どもが教育を受けるための準備は整っているのだろうか。特殊学校の数は全国で15校なので、視覚障害児には地理的な障害がある。教育の機会均等に関する問題は多方面にわたって討論する必要がある。視覚障害児が普通の小学校に入学することを阻むものはない。しかし、必要な施設・設備にかける経費がない。特殊教育担当の教師は数校を受け持たねばならず、一人の生徒に十分な時間が取れない。普通学校の1クラスの人数は約40人で、クラス担任は視覚障害のある生徒に特に注意をして対応する十分な時間が取れない。点字の読み書きについても知識は不十分である。教育に必要な備品や補助具も不足している。小学校教育を受けている視覚障害児童・生徒に関しては決して良い状態とは言えない。
 点字教科書の発行は8年に一度である。インド政府点字出版局が発行する点字教科書は活字版より遅れている。教育に携わる教育関係の官僚たちには責任がある。この状況は悪化し、訴訟問題になりそうな気配である。読書に必要とされている本は手に入りづらい。点字図書館の数は片手の指の数より少ない。つまり知識を得る機会は非常に限られているということだ。
 科学、数学、図表についても問題がある。視覚障害のある生徒は数学の通常レベルの試験(GCE)で限られた分野のものしか受けることができない。上級レベルの試験では人文科学関連の試験に限定され、経済・経営や科学では試験を受ける機会もない。これで機会均等などと言えるだろうか。
 視覚障害のある子どもが参加するスポーツ競技大会やスポーツ施設はある。また、それに参加する子どもの数は多い。しかし、普通学校には視覚障害学生のためのスポーツ設備がない。
 すべての特殊学校には宿泊施設がある。学校が家から遠いため児童は親や家族から離れて暮らしている。
 これらの不都合を減らし、視覚障害のある子どもに質の高い教育をするために国は何をすべきか。視覚障害の子どもが自分の意志で学校を選べるようにするべきである。学校長はこのことに気がつかなくてはならない。また、教育関係者は児童がこの選択権を得られるよう努力すべきである。政府は視覚障害のある子どもが小学教育で十分に教育を受けることができるように普通学校を準備すべきである。
 視覚障害児が科学、算数、図表などの学習が容易にできるように技術調整委員会を設立して、方法と手段を探す必要がある。政府が教科書を提供するとき、同時に点字の教科書も発行できるよう必要な対策が講じられなくてはならない。もし、関連施設の中に良い調整機関があればそれは容易になるだろう。
 政府は視覚障害者団体・機関の中に点字・録音図書館を設立し、継続できるよう支援すべきである。そうすれば視覚障害学生は多くの知識を得、読書の幅も広がるだろう。子どものころからコンピューターの知識を与えることは絶対に必要である。そうすれば子どもは自由に使いこなすことができるようなる。政府は視覚障害児童1人に1台コンピューターを提供するよう努力すべきである。
 視覚障害のある児童は5年生の段階で奨学金試験を受けることができるが、表を読むことができないため良い結果を出すことは難しい。最低合格レベルに近い視覚障害児は費用支援によって適切な補助教材があれば図表の問題を解決できるだろう。
 デビッド・ハートマン(米国)は世界初の全盲の医師である。これはわが国では奇跡に思えるが、視覚障害学生が経済・経営や科学分野の高等教育を受けることが出来るように必要な対策を取るのは政府の責任である。
 教育に対し財政支援の割り当てをさらに多くすることは一種の投資である。視覚障害児童に質の高い教育を提供するために、政府が必要な対策を取ることは、子どもにとって大きな利益である。国はこれらを明日ではなく今日やるとの印象を与えるべきなのである。


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