■海外の部 ABU地域 最優秀オーツキ賞
「軍備縮小による余剰金と基金を障害者のために」
インド P.S.スリーニバサン 
40歳・男性
写真-P.S.スリーニバサン
はじめに
 今、世界は戦場となりつつある。その戦場の中では、私たちが求めている、いわゆる「安全地帯」の隠れ家は兵器の大量使用によって、あとかたもなく砕かれつつあるようだ。戦争には兵器が必要で、兵器が使用されると戦争になることが多い。その意味で戦争と兵器は同義語であるだけでなく、お互いに切っても切れない関係にある。兵器による大量破壊は地球の生物に対する深刻な脅威である。そして大金が兵器獲得につぎ込まれているという事実は「最大多数の最大幸福」を信じている多くの人にとって当然のことながら詳しく吟味されなければならない。
 もし、防衛費の割り当てが急激に増加すれば、「最底辺の人たち」に対する新しい対策や福祉関係の支出は大幅に削減され、私たちはそれに甘んじなければならないだろう。障害者が福祉予算から多額の支援をうけていることは良く知られていることである。

軍備縮小の意味するもの
 軍備を縮小するということは武器を放棄することにつながる。軍備縮小は国の軍事費の削減あるいは廃止を意味している。地球上に住むほとんどの人々にとって一番大事なのは平和と安穏である。人々の平和と安穏のために武器の製造をやめ、戦争の問題解決のために武器を使用するのではなく交渉することは、非常に簡単なことと思われる。平和を目指すという大義名分の元に武器を蓄積することは、まるで悪魔に天国への道を教えてほしいと懇願するようなものだ。
 敵から自分たちをまもるために武器の力に頼るのはばかげている。第二次世界大戦のとき広島と長崎に投下された原爆によって人々が体験せざるを得なかった苦痛や悲惨さを今の皆は忘れてはいないだろうか? 原爆によって死亡・負傷した人数は男女子ども合わせて16万人。回復できない損失を引き起こしたのである。すべての国が核拡散防止条約(NPT)と核実験全面禁止条約(CTBT)を批准しなければ、核軍縮は単なる夢のままだろう。
 インド人は世界の中で誰よりも軍備縮小に対して発言する資格がある。なぜなら、私たちがかつて平和を求める戦いの中で武力を使わずに独立を勝ち取ることができたことを世界に示したからである。マハトマ・ガンジーが英国の支配に対して、非暴力が唯一の効果的な手段であることを示すまでは、誰も武器なしに戦うことが実現可能だとは思ってもみなかったかもしれない。軍備縮小は世界平和のための解決策であり特効薬である。もし政府がテロリストたちに対し、武装解除のために最善の努力を重ねることができれば、テロの惨劇や過激主義はこの地上から消え去るに違いないと私は確信する。

防衛費に関する全体像
 世界各国は自国の防衛準備と軍事力強化を最優先に掲げており、多額の予算をそれにつぎ込んでいる。2009年2月16日に開かれた議会の暫定予算に関する答弁で、インド財務大臣は09年から10年の財政年度における防衛費は全体の23.5%、1兆4170億3000万ルピーであると述べた。防衛・軍事力強化のために各国でどのくらい使われたか詳しい金額は各国の会計年度における数字を詳しく分析することにより明らかにすることができる。
人口約2億5000万人の米国は防衛費でも世界のトップを占め、05年から06年にかけての米国の防衛費の概算は2兆ルピーという膨大な数字である。第二位は英国、日本、中国でそれぞれ2000億ルピー、サウジアラビアは1000億ルピー、そしてインドの防衛費予算は7800億ルピーだった。パキスタンは1300億ルピーである。もし、私たちが政府に働きかけて25%防衛費を削減して予算全体の30%とし、差額を障害者のニーズを満たすための財源として活用すれば、本当に地上に楽園を見ることができるだろう。兵器は人を障害者にし、そしてその人が自分の人生を選択することを不可能にする。戦争によって障害者となった人たちの窮状は大きな懸念であり、政府は他の人々より彼らを援助する義務がある。
 米国統計局によれば05年、米国の視覚障害者の失業率は84%と非常に高い数値であることを知って私は非常に驚いた。これが開発国での現実なら、開発途上国や未開発国でのみじめな状況は容易に想像がつく。
 今年度の国家予算における防衛費を30%削減すると、インド政府が障害者の教育・訓練・リハビリテーションのために活用できるその差額は4000億ルピーとなる。インドでは視覚障害のある児童・生徒約28万2000人が特別学級や普通学級に通い、政府は彼らに点字教科書やその他の福祉教材を支給する義務を負っている。障害者が自立した尊厳のある生活を送れるように、彼らが有給の職につけるよう支援することは政府が率先して行わなければならない建設的な手段である。
 障害種別のすべてを網羅した特別地方レベルの訓練センターを建設しなければならない。
 賃金の良い仕事を得る可能性を高めるスキルを獲得するにはこれから先、長い道のりである。
 障害者法が施行してから14年たつが、財源の不足を理由に多くの条項がいまだ実行に移されていない。私たちは上記の4000億ルピーを活用してその条項が実質ともに実行されることを求めている。政府から障害者に支給される障害者助成金は、米国の障害者が受け取る社会保障給付金と比べると、あまりにも低すぎる。生活費の値上がりに伴い助成金は大幅に増額されるべきなのである。
 さらに政府は雇用の拡大と貧しい障害者を援助するための施策を実行し、強力なキャンペーンを立ち上げて、障害者の能力を一般社会の人々に理解してもらい、障害者差別を終わらせなければならない。

まとめ
 軍備縮小は良いことづくめである。軍備縮小は平和に貢献するだけでなく、障害者の利益を押し進めるに必要不可欠な資金も提供する。もし障害者の福祉のためのシステムが最大限で機能すれば、視覚障害者は「見る」ことができ、聴覚障害者は「聞く」ことができ、歩行困難者は歩けるようになると私は確信している。比喩(ひゆ)としてではなく、実際に可能だと言うことだ。「意志のあるところに道がある」のである。

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