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雑誌「企業家倶楽部」2005/10月号より転載
プロがプロに聞く経営の話
都心にセカンドハウス感覚の大型リゾートをつくる
Guest   リゾートトラスト社長   伊藤勝康
Host オンキヨー会長 大朏直人

オンキヨ−会長
Host 
大朏直人 Naoto Ohtsuki

リゾートトラスト社長
Guest 
伊藤勝康 Katsuyasu Ito

会員制リゾートホテル最大手のリゾートトラスト。新規契約のうち既存顧客からの紹介が8割というほどオーナー満足度は高い。時間をかけて築き上げたエクシブブランドを軸に、2008年には満を持して東京に大規模なリゾートホテルを完成させる。東京大学付属病院との提携で会員向け医療サービスも本格化、11万人の資産家を相手に本質を突き詰めたサービスは他社の追随を許さない。

大朏 僕がリゾートトラストを一番最初に知ったのは、1987年だったと思います。うちは三重県に工場があるのですが、鳥羽にエクシブがありますよね。こんな田舎にこんな素晴らしいものがあるのかと驚いたのを憶えています。
伊藤 鳥羽のエクシブは第1号で、しかも87年といえば開業の年です。
大朏 伊藤社長は、伊藤與朗会長とは何の血縁関係もないそうですね。
伊藤 名古屋には伊藤が多いのです(笑)。
大朏 伊藤社長は公認会計士であり不動産鑑定士でもあるということで、御社の事業を経営する上で、もうこれ以上の資格はありませんね(笑)。どのようないきさつで伊藤会長と一緒におやりになることになったのですか。
伊藤 会長とは以前から友人として付き合いがありました。72年に私が会計士の資格を取得して事務所を作った頃、当時はちょうど列島改造ブームにあり、私は会計士と不動産鑑定士の立場から、市街地の再開発における権利関係の仕事に携わっていました。そんな頃、伊藤会長がお父様を亡くされ「飲食関係の会社を継ぐことになったのだが、それまでの事業には若干の水商売的な色があったらから、そこから脱却して何か事業をしたい、何かアドバイスはないか」と言うので私も事務所をやりながら相談に乗るようになったのです。すると今度はその近くで、あまっている土地を再開発したいという方が現れて、会長と「いっそ一緒に会社を作ってやりましょう」ということになったのです。
大朏 つまり伊藤社長は共同創業者なのですね。
伊藤 私は自分の事務所を開いて間もない頃でしたので、いくつものわらじを履いていました。そうした中で名古屋の栄に分譲型ホテルの第1号を誕生させたのです。

■業界独走を決めた新型予約システム

大朏 1部屋を14人でシェアするということからエクシブ(]W、ローマ数字の14)というそうですね。このシステムは最初からあったわけではないそうですね。
伊藤 87年にスタートさせました。当時はいろんな会社が会員制リゾートを売り出していましたが、どこもある一定のところまでは伸びるのにそこからは苦労するのです。当社も同じでした。問題は予約システムにありました。それまで会員制ホテルの予約は早いもの勝ちで空いている順に予約を取るというものでした。これだとゴールデンウィークやお盆などに希望が集中してしまう。当社のように事業として拡大し、全国にいくつも施設を作って交換利用できるようにすると、これがさらに複雑な状況になります。それでもホテルが2〜3カ所まではなんとかなっていたのです。しかし、4カ所目を建てた頃には、他の初期のオーナーさんも新しい方を利用したいと思うようになります。もちろん新規に募集したオーナーさんも自分のホテルをまず利用するわけですから、大混雑になってしまう。
大朏 誰だって新しい方に泊まりたいですよね。
伊藤 新しいホテルが増えていくにしたがってクレームが増えていったのです。そして優秀な営業マンが次々と辞めていった。優秀な営業マンはそれだけよいお客さんを持っていますから当然、クレームも多い。きちんと対応できていた頃はよかったのですが、物理的にどうやっても予約を取って差し上げられない状況が続いてお叱りを受け、いたたまれなくなって辞めていった営業マンを見て、このシステムでは絶対にだめだと思いました。せっかくいいものを作ってもお客様に喜んでいただけないようではだめだと、全社をあげて作り出したのが現在のタイムシェアというシステムです。年間で日程を決めてしまうというものです。この時、全従業員から意見を出させたのですが、一人として反対する者はいなかった。みんな前のシステムによっぽど懲りていたのだと思います(笑)。
大朏 最初に全て利用日を決めてしまうということですね。
伊藤 ただそこしか行けないとなると不自由になります。基本の日程を決めたら、行かないところはそれぞれオーナー間で交換することができるようにする。この2段階システムにしたら、クレームはぱったりなくなりました。


■東京お台場に大型会員制リゾート

大朏 いよいよ都心にもリゾートをお作りになりますね。僕は新宿生まれだということもありますが、歳をとっても地方に引っ込みたいとは全く思いません。そう思っている人はきっとたくさんいます。御社もそう考えて東京にお作りになるのだろうと勝手に想像していたのですが。
伊藤 エクシブのオーナーさんの平均年齢は60歳前後ですから、健康なシルバー層をターゲットに商品開発をしています。当社の営業マンは、エクシブシリーズにしてからは自信をつけるようになり、百貨店の外商みたいな「御用聞き」としてお客様とお付き合いをさせていただいています。お蔭様で当社の新規契約の8割は既存会員からの紹介です。お客様の声に耳を傾ける中で最近分かってきたことは、リゾートに対する考え方が昔と変わってきていることです。15年前はリゾート地は自宅から3時間くらいの場所にあるのがいいという考えが主でした。たとえば都心在住の方にとっては、蓼科とか那須あたりです。ところがその距離がだんだん近づいているのです。自宅から2時間になり1時間になり、最近では「自宅や会社から近ければ近いほうがいい」とおっしゃるお客様も増えてきました。
大朏 セカンドハウスとして使うのだから、行きたいときにすぐ行ける場所の方がいいですよね。
伊藤 それにもまして、もう一つの理由が東京の地価が下がったことです。以前は東京では土地代が高すぎて採算が合わなかったのですが、ここへきてようやく、具体的に言えば坪当たり上海、北京とあまり変わらない、ロンドンよりも安い水準まで下がりました。そこで、先ほどのオーナーさんのニーズとも考え合わせて、東京のお台場に作ることにしたのです。
大朏 お台場って、初めて行った人は皆感動しますよね。海もあって毎日ディズニーランドの花火が上がって。リゾートですよね。
伊藤 今ナンバーワンと言われている新宿パークハイアットホテルの利用客の約6割が都内在住の人だといいます。もともとあのホテルは外国人比率が3割といわれてますので、残り1割の人しか地方の利用客がいないのです。6割の人は都内に自宅があるわけですから、なぜホテルを利用するかというとリゾートとしてなのですよね。
大朏 なんだかんだ言っても富裕層は東京に住んでいますからね。
伊藤 金融資産が1億円以上の日本人は約130万人という試算がありますが、そのうちの7割は東京に住んでいます。今後も、いい立地さえあれば、2号、3号と東京で作っていくことも考えたいと思っています。


■シェア7割ともなれば叩かれる

大朏 どこの会社も伸びれば伸びるだけ、マスコミにたたかれることがあります。ソフトバンクの孫さんなんかはその典型ですが、御社もリゾート産業で非常な伸びを見せている中、先日某ビジネス誌で厳しい書き方をされていましたね。利益創出のためには会員権を売り続けなければならない、というのが要旨でしたが、そんなことを言ったら僕の商売は、全世帯にステレオやホームシアターが行き渡ったら商売が終わりだということになる。道路が車でいっぱいになれば自動車産業に将来はないということになってしまう。
伊藤 私たちの事業は、ホテルを作って会員権を売却する利益が一つと、次にそれを受託して、ホテルとして運営していく過程で得られる利益、大きく分けるとこの二つがあります。後者は着実に増えていきますが価格弾力性はあまりなく、派手に利益が出るのは当然分譲の方で全体の7割弱がこちらです。私たちは欧米の建物のように、長く使えば使うほど味が出るようなものを作ろうというのが当初からの考えであり、長期間のメンテナンスが不可欠です。そのために預かり金をいただいています。その一部は償却させていただいていますが、今までの預かり総額は1千億円くらいになっています。ということは毎年10億円の改修があったとしても50年、100年は維持できる計算です。そういうことを考えた上で設計しています。それ以外の小さなメンテナンスについては年会費の中からやっています。ただ壊れた時どうするのか。これは本質は別荘と同じで、分譲で持っていただいたものですから、客室が滅失したときは区分所有法に従ってもう一度オーナーさんに拠出していただくことになります。このあたり、記者の方に「会員制事業」に対する一つの思い込みがあったのかもしれません。「お客様は高いお金を払って会員になっているのだから、壊れたときも会社が直してくれることを期待しているのではないですか」と。
大朏 高い商品なんだから絶対に未来永劫に壊れないものを作ってくださいとね(笑)。
伊藤 もちろん当社としても出来る限りご希望に添えるようにしますが、限度はあります。それから、ホテル・レストラン事業で毎年80億円〜100億円くらいの固定資産に計上される資本的支出があるのですが、その内訳を聞かれたとき、主なものを7割ほどお答えし、それ以外は「その他」としたのですがそれをメンテナンスにあてていると解釈されて「30数億円の維持更新投資がある」と。そうするとこの事業セグメントの営業利益10億円に26億円の減価償却費を加えるとキャッシュフローは36億円になりますから、預かり金償却収入の8億円と30数億円の維持更新投資を差し引くとこの事業ではキャッシュフローでマイナスだ、という書き方だったのですが、主なメンテナンスの費用は経費として落ちていますので、資本的支出というのはほとんどありません。そこのところに誤解があったのだと思います。ただ若干の分かりにくさは当社にもあったと思います。毎年のメンテナンス分は経費で落として、預かり金の償却はそれに見合う形で収益に計上し両建てしているのです。つまりその償却分でメンテナンスしているのです。もっと細かい説明をと言われるかもしれませんが、ただ一つひとつの支出にいちいち紐をつけて対応させるのは非常に大変ですよね?
大朏 とてもとても(笑)。一括処理でやるのが普通ですよ。逆にそういうものは人為的にどうにでもなる。今期はやらないと決めてしまえばやらないのですから。こういうことはなかなか一般の人には分かりにくいのかもしれません。
伊藤 資本的支出となる固定資産投資というのは会社は儲かる時しかやらないですよね。それとキャッシュフローとを混同されてしまったようです。確かに会員権分譲と違って、ホテル・レストラン事業の利益はどうしても年度ごとの波が大きいのです。というのはリゾートのオープン時はたくさんの消耗品を買いますが、費用として落とせるものはできるだけ開業時に落としてしまいます。損出しを先にしておいた方がいいことってありますからね。それをどのセグメントにおくかというとホテル・レストラン事業なのです。その一部をとらえて「ホテル運営ではもうからない」と言い切られてしまいました。
大朏 セグメント情報の出し方をもう少し詳しくした方がよかったのかもしれないですね。情報開示に関しては研究の余地があって、僕たちもその辺はどちらかというと不器用です。


■医療分野で東大と提携

大朏 御社はホテル会員権を売った後、長期間に渡って顧客に利用してもらい、サービスがよければさらに回転率を上げることができる。そういう資産をお持ちなのは、大変なことだと、同じ経営者として感じます。
伊藤 11万人の会員を組織できたことは幸運でした。私たちの戦略は、土台そのもの、つまり会員数を増やしていくのがもちろん基本ですが、もう一つは現会員への新しいサービスの提供にあります。昔からの会員の方も歳をとりましてね。30年前、50歳で会員になっていただいた方はもう80歳です。もちろん会員権の相続はされますが、そういうエイジングの問題にともなって、たとえば健康な老人がケアつきのレジデンスを求めています。
大朏 東大と医療分野で提携されたのですよね。どのようなものなのですか。
伊藤 国立大学も独立行政法人になってから、自分たちでビジネスをしていく必要に迫られています。そういう側面から民間と組みたいという背景が東大にありました。たまたま当社がやってきた検診事業が、特にガンの「早期の発見」に役立ち、そのうえ「早期の治療」の研究が非常に発達したのです。そこで早期に見つかれば、簡単に治す方法がいくらでもある、それは社会的意義があると東大も考えたのです。
大朏 具体的にはどのような提携なのですか。
伊藤 東大が我々のシステムを非常に気に入りまして、当初は新しく作るお台場のリゾートの地下に作る予定だった検診所を、東大病院の中に作ることになりました。これは我々にも東大にも非常に意義があります。というのは、我々のメディカル会員さんは年間数パーセントの確率で早期疾患が見つかる程度で、つまり大半の人は健康です。ですから「疾患」の画像というのは当然、多くはありません。反対に病院では病気の人の画像は山ほどありますが「健康人」のデータはあまりない。そこで我々と東大病院のデータを合わせることによって、疾患と健康データの比較が明確になり、飛躍的に画像診断の効率が上がるのです。疾患と健康のデータをある程度自動的に振り分け、今までの10分の1の画像だけを診断すればいいとなったら、誤診も少なくなるし医者の負担もぐんと減ります。当社としても、今までは診断だけだったのが、東大病院にあれば即治療が出来る。双方にメリットがあります。
大朏 医療分野での提携は東大以外にもあるのですか。
伊藤 名古屋大学とは再生医療の分野で提携することになりました。ガン、脳、心臓などの疾患は、血管の老化が一つの原因だと言われています。そこで自分の血管の細胞を増やして再注入する。女性だったら顔のシワに、別の部位から皮膚細胞をとって再生したコラーゲンを入れればあっというまに若返るそうです。これは非常にニーズがあるようなので是非共同で研究しようということになっています。
大朏 リゾートトラストの会員になると健康でシワができない。いいですねえ(笑)。


大朏 直人(おおつき・なおと)氏

1941年東京生まれ。
65年駒沢大学文学部卒業後、ラジオ部品メーカーに入社後独立。
電子機器製造の日本電通を設立、社長に就任。85年自動車部品メーカーの丸八工場(現テクノエイト)の再建を契機に、4社の再建に成功。
93年6月東芝傘下のオンキヨーを個人で買収、1年半で黒字経営に転換した。
03年2月オンキヨーがジャスダックに上場、3度目の株式上場を果たす。
伊藤勝康(いとう・かつやす)氏

1943年愛知県生まれ。1967年一橋大学商学部卒。73年伊藤與朗氏(リゾートトラスト代表取締役会長兼CEO)と共に宝塚エンタープライズ(現リゾートトラスト)を設立。74年名古屋市中区に高級テナントビル「ヴィア白川」を開業。87年4月三重県鳥羽市に高級会員制リゾートホテル「エクシブ(XIV)鳥羽」を開業。97年9月株式店頭公開。2000年11月 東証および名証第1部に上場。  

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雑誌「企業家倶楽部」2005/10月号より転載。
本欄は(株)企業家ネットワーク様のご好意により実現したことを記し、謝意を表させていただきます。


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