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雑誌「企業家倶楽部」2002/6月号より転載
プロがプロに聞く経営の話
 人材総合商社から日本経済の再起を図る
Guest   キャリアバンク社長 佐藤良雄
Host オンキヨー会長 大朏直人


キャリアバンク社長
Guest 
佐藤良雄 Yoshio Sato

オンキヨ−会長
Host 
大朏直人 Naoto Ohtsuki

失業率5%、思いもよらない大手企業の倒産――。厳しい状況の続く労働者市場で、北海道トップシェアを誇るキャリアバンク。人材総合商社経営の目を通して見えた日本におけるビジネスの未来を大朏会長と語った。


■ 北海道に特化した人材総合会社

大朏 今日はお忙しい中、ありがとうございます。ではまず、キャリアバンクについて教えていただけますか。
佐藤 わたくしどもは札幌に本社があります人材の総合会社です。なぜ総合会社かというと、地方では人材のマーケット・労働市場も小さいので、人材に関わるサービスを総合的に提供しないと、なかなか売り上げや利益を構築できないし、クライアントの注文にも応えきれないのです。
大朏 人材の総合会社というと、人材派遣や紹介などですか。
佐藤 キャリアバンクはもともと人材紹介会社として15年前に始めたのです。経営者や技術者を企業に紹介して、仲介料を頂くビジネスですね。そのうちクライアントのニーズに応え、労働者派遣法に基づいた労働者派遣というのを始めました。アウトソーシングも請け負っています。クライアントから派遣社員を雇うより、営業や販売の一部を任せるから請け負ってもらえないか、というニーズがありましたので。それから最近は、アウトプレスメントといって、再就職支援も手がけています。大手の企業などで希望退職者を募集する際、インセンティブを二つ付けるんですね。一つは退職金の割増サービス。もう一つはその人のスキルが生きるような会社へ、もしくは産業へブリッジしてあげること。その後者のサービスを提供する再就職支援のビジネスをやっています。コンピューター技術や営業能力など、新たにスキルを追加しないと新しい世の中では通用しなくなってきていますので、そういった職業訓練も手がけています。
大朏 職業紹介、その後のスキルアップなど、大変良い、綺麗な事業の伸ばし方をされていると思うのですが、有料で人材紹介する事業の歴史は極めて浅いわけですよね。
佐藤 法律的に言っても浅いです。基本的に労働行政に関することは、ずっと労働省などの役所が牛耳っていましたが二年ほど前に法改正があって、一気に自由化しました。いまや人の職業に関わる問題は国の問題ではなく、民間事業の問題になりましたので、この規制緩和の中でわれわれの業種はみんなが注目していますね


■ 家庭にも押し寄せるリストラの波

大朏 現在計算方法によっては、失業率が5.6%になっているそうですが、失業率の高さを肌で感じることはありますか。
佐藤 実感しています。バブル崩壊後十年あまり、企業がさまざまなリストラをやりましたが、個人の家庭生活においてはこの十年全く変わってない。皆さん転職する時に、今までもらっていた報酬と同じ、もしくは下がっても一割くらいの報酬を望みます。それはなぜかというと、高い住宅ローン、高い教育費、高い生活水準をすでに抱えているからです。ですが、企業はその間ずっと損益分岐点を下げる努力を続けて、必要な人件費も下げてきているんですね。そこに国民、個々人が対応していない、だから前は年収1,000万円もらっていたから1,000万円ほしいと言う。
大朏 最初は雇用保険があるからからいいけど、それ以降が問題だね。
佐藤 われわれに相談に来られる方に、1、2年就職できないという方が多くいます。高級ブランドのネクタイを締めて、いい背広を着ているけれど、住宅ローンを半年払ってない、サラ金から借金をして子供の学費を払っているような人です。こういう人が実は日本には山ほどいて、自殺者、破産者の数字に表れています。僕らはその人たちのために何とか役に立ちたいと思うんですが、せっかくのチャンスも、そんな安い給料で働けるか、そんな小さい会社に行けるか、と言って蹴ってしまって、あっという間に一年たってしまう。するともう世の中のスピードについていけず、活きが悪くなって腐ってしまうんですね。中高年以上は労働力として評価できるし、能力はあるんだけれどコストが高い。特別な技術、特別な能力・知識を持っている人以外、だ いたいはコストが見合わないんです。50代は確かに経験もあり、人の輪もあるけれど新しいものは知らない。30代は体力も可能性もあり、新しいものも知っている、しかし多少喧嘩早いと、どちらにも一長一短ある。ですが、労働コストをみると50代は1,000万円で、30代は500万円なんです。
大朏 確かに30歳を過ぎたら、40歳も50歳も仕事のできる具合は大差無い。ただ経験が長いというだけでね。スキルアップしないままでも50歳になったら給料がたくさん入る、というのはよくないですよね。会社を年令で言ったら、30歳の時と50歳の時とで内容が同じだったらとっくに潰れてしまう。
佐藤 その会社で培った社内での経験ということで、多少の付加価値があるのかもしれません。ですが、一般の労働市場に出たときには皆一からのスタートで、その付加価値は通用しないんですね。
大朏 そういうことに気がついていない人たちが不幸だよね。
佐藤 社員として働いている人は、一般の労働市場に出ることがない限り、自分の市場価格を認識することは無いですね。だから今もらっている給料が自分の市場価格だと思っていらっしゃいます。しかし実際の市場価格はそこから三、四割以上落ちます。北海道の場合、50代で年収1,000万円だった方でも、年収400万円以上で再就職するのは難しい。
大朏 非常に厳しいですね。


■ リタイアしたプロを生かしてコスト削減

佐藤 一度リタイアした人たちというのは、高度経済成長時代に最も働いた世代ですよね。その人たちが持っている人間性とか経験は中小零細企業にとって実は、非常に有用なんです。そういう人たちの中には企業のコンサルタントができる人もいる。現役のコンサルタントはサービスを安く売れないけれど、リタイアした人たちは安く売れる。この人たちの能力こそが、きっと日本の中小零細企業を救うんですよ。
大朏 いいですよね。僕なんかも社員が10人いるかいないかの会社を立ち上げたころから、給料計算、失業保険の計算、労務管理などのためにプロを雇っていた。月に一回会社に来て計算してもらう。顧客との契約などは弁護士に任せ、おカネのことは経理のプロに任せる。とにかく僕は、プロを使うことだけをやっていた。そういう使い方をすれば、会社は競争力ができるし、極めてやりよいですよ。でもそういうことをやる経営者は意外と少ない。今のベンチャー経営者は、頭はいいはずなのにコストに関してはあまりよくない。
佐藤 そうですね。最近若い人たちで、アウトソーシングしている会社はありますが、それでもまだ人材を抱え込んでやりたい、という人たちが半数はいるでしょう。
大朏 そのアウトソーシングも一つの流行で、自分の会社に必要なものを見極めずに、何でもするというのはどうかと思います。だからそういうことを知っているリタイアした人たちを生かせたらいいなあと思いますね。佐藤さんが北海道に特化してやっていらっしゃるのは非常にいいことだと思います。特化していれば、他の会社はまず入ってこれませんからね。
佐藤 そうですね。それは経営の明確なポリシーとしてやってきました。人材紹介において札幌のマーケットの7割は占めているでしょう。小さいマーケットですが、非常にシェアが高かったんです。
大朏 ままそういうことがありますね。札幌支店の人だったら、支店のことを決めるのは東京だからといって、本社に行ってしまうわけでしょう。だから現場でやっちゃうキャリアバンクが強い。
佐藤 ええ、札幌では強いのですが、問題はやはり次のステップですね。東京でわれわれが勝てるのだろうか、ということになると、今のところ全然自信が無いですね。
大朏 それはやはり、リタイアした人たちを上手に使われたら、チャンスはものすごくある。そういう人たちを大いに利用されたらいいのではないでしょうか。話は変わりますが、北海道のベンチャーに、特徴はありますか。
佐藤 自分で一旗上げて成功したい、という欲を持って最初からスキルを磨いている人たちが少ないですね。
大朏 公務員とか、大企業へ就職したい人が多いんだ。
佐藤 公務員が一番偉いといった風土がある。私は大学を卒業してすぐ自分で行政書士の仕事を始めて、勤めたことが無いんです。だから自分で事業を行うことが楽しくて面白いことはよく知っているつもりです。たくさんの人にチャレンジをしてもらいたいけど失敗する人もいる、それが資本主義なんだ、ということを根付かせないと、地域が勝ち残るなんていうことにはならない。ただ、私も実は一度失敗しているんです。それはエア・ドゥという航空会社で、会社設立から関わりまして、資金集めを担当していました。途中から行政が関わったのですが、全然ダメですね。
大朏 商売人じゃなかったんですね。
佐藤 もう話にならないですね。あんなに行政ってひどいものだとは。僕はちょっと甘かったですね。だから今行政の人たちに対して、行政でカネに関わる、つまり収益が発生する事業は、全部僕にアウトソーシングしませんか、と言いたいです。行政がやっているものを民間に落とせば、そこに新しい民間の雇用も発生するし、サクセスもできる部分がたくさんある。行政がやるから悪いんです。民間がやれば簡単に利益が出る。


■ 北海道拓殖銀行破綻の激震

大朏 ところで北海道拓殖銀行の破綻には、潰れるはずのない都市銀行が潰れたということで、日本全体に激震が走ったわけだけど、地元ではどんな状況だったのですか。
佐藤 地元で唯一の都市銀でしたからね。それ以外の都市銀は北海道では本当に小さな支店があるだけで地元に対する機能はほとんどなく、在京本社の企業に対する便宜供与的意味合いが強かったものですから、それだけ北海道拓殖銀行の地元における影響は大きかった。拓銀が取引してくれている、拓銀からお金を借りているということが、その会社の信用とイコールだったんですね。そこが吹っ飛ぶわけですから。拓銀が倒産して3ヶ月くらいの間に、知っているだけで200社潰れましたね。それで僕は思いました。経営者はそこの社長じゃなくて銀行だったんだなあと。だって、銀行が潰れたらみんな潰れるわけですから、どっちが経営者だかわからない。そのくらい、潰れなくていい会社も山ほど潰れました。
大朏 それは大変でしたね。


■ 経営者は選択肢を数多く持つべし

佐藤 それで思ったことは、金融機関からおカネを借りて経営をしていたら長くはもたないということ。これからは直接金融市場の方へ行こうと改めて決断をして、思い切ってビジネスモデルを変え、昨年札幌証券取引所アンビシャスに上場しました。そこで改めて思ったのは、経営者はあらゆる場面で選択肢をたくさん持っているべきだということです。
大朏 一つしかないと言われているような銀行が潰れたときに、対応を上手くやったところだけが生き延びたと思うんですよ。直接金融がいいことはみんな分かっているけれど、現実にはまだ、ほとんど間接金融に頼らざるを得ないことに対して提言はありませんか。
佐藤 結局、資金調達ができたかできないか、ですよね。おおむね拓銀と取引しているのがステータスだったのでみんないかれちゃったんですよ。北海道は今選択肢がないんです。拓銀は北洋銀行が引き継いで、北洋と札幌銀行が実質同じ会社になって、それ以外に北海道銀行だけなので、地元銀行は実質2行しかない。
大朏 まあ銀行も、あんまり合併を重ね過ぎて数が少なくなるのは、われわれ企業にとっても一般国民にとっても今言われたように、選択肢が少なくなって、問題ですよね。最後に、上場をめざしている若い経営者にアドバイスをお願いします。
佐藤 上場することは経営の選択肢の中の一つですが、高いバーだと思います。最も大きな障害は、個人オーナーの利権を捨てられないことですね。個人オーナーの利権を捨てないことも、会社経営の選択肢の一つですから、きちんとスタンスを決めることですね。上場するぞと言いながら、個人の利権も追いかけるのでは虫がよすぎます。それから地方の経営者は、最低でも月一回は東京やニューヨークに行き、世の中がどうなっているのか、どこにどんな経営者がいて、どんなことを考えているのか、まじめに情報収集しなければ、地方でも生き残っていけないと強く感じているので、ぜひやってほしいと思います。



大朏 直人(おおつき・なおと)氏

1941年東京生まれ。
65年駒沢大学文学部卒。
同年4月、ラジオ部品メーカーに入社後独立。電子機器製造の日本電通を設立、 社長に就任。85年、自動車部品メーカーの丸八工場(現テクノエイト)の再建を契機に、 4社の再建に成功。93年6月に東芝傘下のオンキヨーを個人で買収、1年半で黒字経営に転換した。
現在、12社の企業集団を率いる。
佐藤 良雄(さとう・よしお)氏

1953年札幌市生まれ。
74年小樽商科大学短大部商学科卒業。77年行政書士佐藤良雄事務所開設。79年労働保険事務組合労務事務指導協会設立、理事長就任。87年キャリアバンク設立、代表取締役就任。97年エコミック設立、代表取締役就任。札幌証券取引所アンビシャスクラブ会長。著書に『ふるさと転職』(二期出版)がある。

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雑誌「企業家倶楽部」2002/6月号より転載。
本欄は(株)企業家ネットワーク様のご好意により実現したことを記し、謝意を表させていただきます。

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