大朏 |
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現在計算方法によっては、失業率が5.6%になっているそうですが、失業率の高さを肌で感じることはありますか。 |
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佐藤 |
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実感しています。バブル崩壊後十年あまり、企業がさまざまなリストラをやりましたが、個人の家庭生活においてはこの十年全く変わってない。皆さん転職する時に、今までもらっていた報酬と同じ、もしくは下がっても一割くらいの報酬を望みます。それはなぜかというと、高い住宅ローン、高い教育費、高い生活水準をすでに抱えているからです。ですが、企業はその間ずっと損益分岐点を下げる努力を続けて、必要な人件費も下げてきているんですね。そこに国民、個々人が対応していない、だから前は年収1,000万円もらっていたから1,000万円ほしいと言う。 |
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大朏 |
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最初は雇用保険があるからからいいけど、それ以降が問題だね。 |
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佐藤 |
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われわれに相談に来られる方に、1、2年就職できないという方が多くいます。高級ブランドのネクタイを締めて、いい背広を着ているけれど、住宅ローンを半年払ってない、サラ金から借金をして子供の学費を払っているような人です。こういう人が実は日本には山ほどいて、自殺者、破産者の数字に表れています。僕らはその人たちのために何とか役に立ちたいと思うんですが、せっかくのチャンスも、そんな安い給料で働けるか、そんな小さい会社に行けるか、と言って蹴ってしまって、あっという間に一年たってしまう。するともう世の中のスピードについていけず、活きが悪くなって腐ってしまうんですね。中高年以上は労働力として評価できるし、能力はあるんだけれどコストが高い。特別な技術、特別な能力・知識を持っている人以外、だ
いたいはコストが見合わないんです。50代は確かに経験もあり、人の輪もあるけれど新しいものは知らない。30代は体力も可能性もあり、新しいものも知っている、しかし多少喧嘩早いと、どちらにも一長一短ある。ですが、労働コストをみると50代は1,000万円で、30代は500万円なんです。 |
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大朏 |
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確かに30歳を過ぎたら、40歳も50歳も仕事のできる具合は大差無い。ただ経験が長いというだけでね。スキルアップしないままでも50歳になったら給料がたくさん入る、というのはよくないですよね。会社を年令で言ったら、30歳の時と50歳の時とで内容が同じだったらとっくに潰れてしまう。 |
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佐藤 |
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その会社で培った社内での経験ということで、多少の付加価値があるのかもしれません。ですが、一般の労働市場に出たときには皆一からのスタートで、その付加価値は通用しないんですね。 |
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大朏 |
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そういうことに気がついていない人たちが不幸だよね。 |
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佐藤 |
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社員として働いている人は、一般の労働市場に出ることがない限り、自分の市場価格を認識することは無いですね。だから今もらっている給料が自分の市場価格だと思っていらっしゃいます。しかし実際の市場価格はそこから三、四割以上落ちます。北海道の場合、50代で年収1,000万円だった方でも、年収400万円以上で再就職するのは難しい。 |
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大朏 |
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非常に厳しいですね。 |
佐藤 |
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一度リタイアした人たちというのは、高度経済成長時代に最も働いた世代ですよね。その人たちが持っている人間性とか経験は中小零細企業にとって実は、非常に有用なんです。そういう人たちの中には企業のコンサルタントができる人もいる。現役のコンサルタントはサービスを安く売れないけれど、リタイアした人たちは安く売れる。この人たちの能力こそが、きっと日本の中小零細企業を救うんですよ。 |
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大朏 |
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いいですよね。僕なんかも社員が10人いるかいないかの会社を立ち上げたころから、給料計算、失業保険の計算、労務管理などのためにプロを雇っていた。月に一回会社に来て計算してもらう。顧客との契約などは弁護士に任せ、おカネのことは経理のプロに任せる。とにかく僕は、プロを使うことだけをやっていた。そういう使い方をすれば、会社は競争力ができるし、極めてやりよいですよ。でもそういうことをやる経営者は意外と少ない。今のベンチャー経営者は、頭はいいはずなのにコストに関してはあまりよくない。 |
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佐藤 |
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そうですね。最近若い人たちで、アウトソーシングしている会社はありますが、それでもまだ人材を抱え込んでやりたい、という人たちが半数はいるでしょう。 |
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大朏 |
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そのアウトソーシングも一つの流行で、自分の会社に必要なものを見極めずに、何でもするというのはどうかと思います。だからそういうことを知っているリタイアした人たちを生かせたらいいなあと思いますね。佐藤さんが北海道に特化してやっていらっしゃるのは非常にいいことだと思います。特化していれば、他の会社はまず入ってこれませんからね。 |
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佐藤 |
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そうですね。それは経営の明確なポリシーとしてやってきました。人材紹介において札幌のマーケットの7割は占めているでしょう。小さいマーケットですが、非常にシェアが高かったんです。 |
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大朏 |
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ままそういうことがありますね。札幌支店の人だったら、支店のことを決めるのは東京だからといって、本社に行ってしまうわけでしょう。だから現場でやっちゃうキャリアバンクが強い。 |
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佐藤 |
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ええ、札幌では強いのですが、問題はやはり次のステップですね。東京でわれわれが勝てるのだろうか、ということになると、今のところ全然自信が無いですね。 |
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大朏 |
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それはやはり、リタイアした人たちを上手に使われたら、チャンスはものすごくある。そういう人たちを大いに利用されたらいいのではないでしょうか。話は変わりますが、北海道のベンチャーに、特徴はありますか。 |
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佐藤 |
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自分で一旗上げて成功したい、という欲を持って最初からスキルを磨いている人たちが少ないですね。 |
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大朏 |
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公務員とか、大企業へ就職したい人が多いんだ。 |
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佐藤 |
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公務員が一番偉いといった風土がある。私は大学を卒業してすぐ自分で行政書士の仕事を始めて、勤めたことが無いんです。だから自分で事業を行うことが楽しくて面白いことはよく知っているつもりです。たくさんの人にチャレンジをしてもらいたいけど失敗する人もいる、それが資本主義なんだ、ということを根付かせないと、地域が勝ち残るなんていうことにはならない。ただ、私も実は一度失敗しているんです。それはエア・ドゥという航空会社で、会社設立から関わりまして、資金集めを担当していました。途中から行政が関わったのですが、全然ダメですね。 |
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大朏 |
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商売人じゃなかったんですね。 |
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佐藤 |
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もう話にならないですね。あんなに行政ってひどいものだとは。僕はちょっと甘かったですね。だから今行政の人たちに対して、行政でカネに関わる、つまり収益が発生する事業は、全部僕にアウトソーシングしませんか、と言いたいです。行政がやっているものを民間に落とせば、そこに新しい民間の雇用も発生するし、サクセスもできる部分がたくさんある。行政がやるから悪いんです。民間がやれば簡単に利益が出る。 |