堀 威夫氏 プロフィール
ほり・たけお 32年、横浜市生まれ。明治大卒業後、カントリー&ウエスタンバンド「堀威夫とスイング・ウエスト」を結成。60年に引退し、ホリプロの前身「堀プロダクション」を創業し、社長。舟木一夫、和田アキ子、山口百恵らを育てた。84年に会長、02年6月から取締役ファウンダー。会社は89年に株式を店頭公開し、02年9月に東証1部上場。

阪井   お休みの日はどのようにお過ごしでしょうか。仕事と重なりますが、家でも音楽や映画を楽しまれていますか?
  今日の取材、苦労されるかもしれませんよ。まず私たちのジェネレーションは、家でTVやスクリーンの前に長い時間座る習慣がありません。映画館だったら、覚悟して2時間なり見ますが、家だともったいなく思い、ついからだが動いてしまいます。今日の取材を通じて私に、家でじっくり映画を見させるようなカルチャーショックを与えてください。(笑)でないと、私をここに呼んでいただいたのはミスキャストということになってしまいすから。(笑)
阪井   では、改めまして休みの日は?
  忙しくて自由な時間はなかなか作れないのですが、今年の1月からギターを習い始めました。
阪井   もともとカントリーのバンドでこの世界に入られたと伺っています。ギターはプロの腕前でお弾きでしたね?
  ギターは確かに弾けますが、自己流で憶えましたし、長いブランクがあります。今回は先生というより知り合いのギタリストに自宅に来ていただいてきちんと教わっています。
ギタリストの指先を確認する阪井
阪井   長いブランク、といいますと、仕事がお忙し過ぎて、ギターから遠ざかっていらしゃったのですか?
  それもありますが、当時の日本の文化ではギターそのものに不良のイメージがあり、ちょうど子供が生まれたころに、家の中にギターがあるのは教育上まずいと思って、遠ざかっていました。今では考えられないことですが(笑)。おかげさまで二人の息子は、ミュージシャンにならず真っ当に生活しています(笑)。
阪井   腕前を皆さんに披露されることはないのですか。
  先日、昔、カントリー&ウエスタンを一緒にやっていた仲間の古希(70歳)の祝いで久しぶりに演奏しました。メンバーのうち二人は現役のミュージシャンですが、私は脳の動きと指の動きにギャップがあり苦労しました。もう少し練習すれば、指も昔の感覚を呼び戻せそうです。
阪井   それでは、恐る恐るですが、本題のホームシアターの話題に入っていきたいと思います。
---はじめに「U.S 9.11チャリティコンサート」と「ハリーポッター」を視聴して頂きました。
阪井   コンサートと映画をご覧頂きましたが、印象はいかがでしたか。
  ほーっ、いい感じですね。驚きました。普段からコンサートや映画を、エンターテイメントビジネスとして作品の出来を見てしまいますので、なかなか手放しで、心から楽しむところまで行かないのが、仕事の悲しさなのですが。こんな風に映画館以外で、家でリラックスして楽しめるというのは、すごいことですね。
映画は、先ほどもお話した通り、自宅で見ることがあまりないのですが、見たいものとしては非日常感覚を楽しむ、バカバカしくて笑えるものがいいですね。気分的には下駄をひっかけて近所の映画館に「寅さんシリーズ」を見に行く感じです。もうひとつ非日常としてリラックスする要素として、自然というかアナログ的な要素が多いものが好ましいですね。
  最近ではSFXやコンピューターグラフィック処理が増えていますが、これは落ち着かないですね。あと、私たちの年代でホームシアターを楽しむなら、やはり操作性が重要です。取り扱い説明書は読むのが面倒ですし、読んでも複雑で理解しにくいものが多い。この部分のソリューションはONKYOさん、頑張ってくださいね。
阪井   率直なご意見ありがとうございます。今後の製品に反映させます。それでは、今度はアナログというか人間の香りがするミュージカルをご覧頂きたいと思います。
---「リバーダンス」をご覧頂きました。
阪井   ホリプロのミュージカルといえば日本で長ロングラン、スタンダードとして定着している「ピーターパン」ですが、最初のきっかけは何だったのでしょうか。
  「ピーターパン」は現在、主役が6代目になっています。初代はご存知の方も多いと思いますが、榊原郁恵でした。彼女のマネージメントを考えている時に、ニューヨークのエージェントから話が持ち込まれ、彼女にピッタリということで採用しました。ミュージカルとの付き合いはここからですね。最近はミュージカルもメジャーになり、作品そのものが商品のように取り扱われる傾向もありますが、皆様に感動していただく、夢をお届けするということでは、「ピーターパン」はミュージカル史上でも最高の作品だと思います。作品の内容はもちろんですが、実はビジネス的にも心温まるものがあります。このロイヤリティの80%は作者の遺言に従い、イギリスの親のいない子供のための病院に寄付されています。私も最初知らなかったのですが、その病院から感謝状が届いて、その事実を知りました。このロングラン作品は来て頂けるお客様にも大きな変化が見受けられるようになりました。それはお客様が3世代に渡ってご覧頂いていることです。今のお母さんが、子供の時に親に連れてこられ、そして自分が親になり、また子供を連れてくる。中にはお子様の年齢が1〜1歳半くらいと小さすぎて内容が理解できるか心配な時もありますが、お母さんの気持ちはよく理解できます。ほのぼのするいいライフスタイルだと思います。
それと最近、導入したミュージカルは「シカゴ」となります。映画のほうで一躍有名となりましたが、ベースはこちらです。是非、一度ご覧になってください。よい作品です。
阪井   少し盛り上がってきましたが時間のほうは残り少なくなりました。ぜひ、ご覧頂きたいコンサートがあります。
---山口百恵「伝説から神話へ」をご覧頂きました。
阪井   山口百恵さんのラストコンサートでしたが、いろいろな思い出深いエピソードをお持ちだとおもいますが?
  懐かしいですね。この大画面(140インチ)で見ると、腕の種痘の跡が当時の子なんだと記憶が蘇りました。彼女の結婚は1980年11月、その1か月前に伝説的な日本武道館ラストコンサートがあったのですが、マスコミの方々にばれないように結婚式の準備をするのは、大変でした。この年の3月までは社内でも一部の人のみが知る秘密事項でした。このコンサートを行なった頃には、すべての準備も終わり、お互いに充実した時間を過ごしました。
阪井   一番印象的なものとして、マイクをステージに置く場面がありますが、これは堀会長の演出ですか。
  このコンサートは彼女の希望を色濃く反映させたものでした。このマイクの演出も彼女の発案だったと思います。そういえば、先ほどの「ピーターパン」は、このコンサートの翌年から始まりました。世代交代の大きな節目の年でもありました。こういう快適なサウンドで感動の舞台を目の当たりにすると、ひときわジーンとくるものがありますね。
阪井   ありがとうございます。ご自宅やオフィスにも、シアターをお持ちだとう伺いましたが?
  そうですね、自宅には、結構上質のシアター設備があるのですが、どうも家では、じっと鑑賞するのが苦手だったのです。こんな風に楽しめるのだったら、家のAV機器や山ほどある映像ソフトやCDにも出番を作る必要がありそうですね(笑)
阪井   是非、ご自宅でも楽しんでいただきたいと思います。もっと、お聞きしたいことも用意していましたが、時間となってしまいました。本日はありがとうございました。
聴を始める前に、簡単に視聴室の仕組みについてご説明差し上げるのですが、部屋の構造などを熱心に尋ねられました。“視聴者”ではなく常に“提供者”の顔が ちらほら。いつかゆっくりとご自宅で溜まったDVD映画や音楽を楽しんでいただけるようになればいいな、と思いました。
提供者と視聴者、プロデューサーとオーディエンス、創る側と楽しむ側。その中間に位置する私どもメーカーは、両者のニーズやトレンドを的確に捉え創る側の意志や思いを確実に伝えていく責務を負っていることを改めた感じたひとときでした。

 


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