■国内の部 優秀賞 「光のかけら」 秋田県立盲学校 丹波久美子(20) |
| 中学2年で盲学校に転校して、すぐに点字を習いました。その頃は、まだ墨字を使っていましたが、「見えるうちに」と思い、知識として点字を覚えました。 次第に、「まだ見える」と思いながらも、視力が低下するのを感じるようになりました。初めは目で読んでいた点字を指で読むようになり、フロアバレーボールのボールが見えにくくなっていったからです。 それでも普通科では見ることも、聞くことも楽しんでいました。漫画本を読むこともできたし、難聴のせいであまり好きでなかった音楽を聴くことも好きになってきたからです。 専攻科に入り、点字に切り替えると、勉強内容はもちろん、勉強方法も大きく変わりました。テスト勉強のために、要らない用紙に何度も走り書きすることができなくなり、代わりに点字用紙の山を何度もつくるようになりました。 目の前には形のない世界が広がっていました。輪郭のぼやけた霧のかかった世界のような。「以前はどんな風に見えていたんだろう」と思うこともありました。 さらに私は、補聴器を外すと何も聞こえない状態なので、補聴器をしている時と、外した時ではまるで違う世界にいるようです。 それでも、そのことを気にしなかったのは勉強だけで精一杯だからです。静かな世界を求めて補聴器を外し、ひとりの世界にひたりこむようになっていました。以前は少しの時間があれば、読書や詩を書くこともありましたが、その余裕もなくなってしまいました。読書や書き物をすること自体がたいへんでもありました。点字の本は厚くて重いので教科書以外の本を持って歩く余裕はありません。もはや目の視野だけでなく、行動範囲や情報の視野も狭くなっていました。 そんな中、ある先生が「ブレイルメモ」を紹介してくれました。これは点字の読み書き、文書の保存のほか、パソコンなどともつなぐことができる点字ディスプレイです。 はじめはお金のことや使いこなせるかどうか心配で迷いましたが、「補助ができるし、パソコンに比べれば電子手帳のようなもの」と言われ、購入し使ってみることにしました。 使い始めると、ノート整理がとても楽になりました。検索機能もついているので、見直しもしやすいです。 何より、書き直しがしやすくなりました。それはぼんやりした考えを何度も書き直しながら文章を書けるようになったのです。何か詩のアイデアが浮かんできた時、ブレイルメモに書き込むようになりました。そして、今回もブレイルメモで何度も書き直しながら書いていきました。 また、読みたい本のデータを入れて勉強の合間に読書をすることもできるようになりました。残念ながら点字データの入れ方はまだ覚えていないので、その都度、先生にお願いしています。まだまだ読みたい本があるので、これからその方法を覚えて、自由に点字データを入れられるようになりたいです。 さて、私がブレイルメモで読んだ本の中に福島智さんの「渡辺荘の宇宙人」という本があります。盲ろう者として初めて大学に進学した彼のエッセイ集です。読む前は、自分とはかけはなれた人生経験談が書かれているのかと思っていましたが、読んでみると共感を感じることや参考になること、笑いがこぼれるようなところもありました。例えば、点字が盲ろう者でも自力で情報を得る手段であることにはとても共感しました。難聴では音声より点字の方がはっきり「言葉」が分かるからです。「やっぱり、点字覚えておいてよかった」と思いました。 その本を読む頃、私も指点字を習い始めたところでした。ちなみに指点字が盲ろう者のコミュニケーション方法であることは聞いていましたが、それを発見したのが福島さんの母であることには、その本を読んで初めて分かりました。私は「耳が聞こえるうちに、学校にいるうちに」と習い始めたところでした。最初はなかなか読み取れませんでしたが、今はゆっくりなら読み取れるようになりました。 盲学校で習う点字が用紙に書かれている「点字」だけでなく、指と指とを重ね合わせて読む「指点字」の二種類になるとは、転校当初は考えもしなかったことでした。 点字は視覚障害者のみならず、盲ろう者にとっても、とても必要なものだと思います。私は指点字をもっと速く読み取れるようになることが目標です。それが私の「世界」を広げていくものになると思っています。 また、ブレイルメモをパソコンにつなげられるようになれば、インターネットからより早くより多くの情報を得られると思います。 国家試験の勉強も大切ですが、指点字やブレイルメモ、パソコンなどを使いこなせるようになることも大切だと思います。それが私のこれからを開いていくものになると思うからです。豊かなコミュニケーションと情報を得るためにも。 |