■海外の部 西アジア中東地域 Bグループ(25才以下) 優秀賞
「私の人生を変えた点字」
マニッシュ・ジャイスワル 17才 (インド キール・バラティヤ・ネトライン・サンガ盲学校7学年 男性)
 
 その瞬間、あまりの絶望に真っ暗になりました。それは、まだ子供のころに誤った投薬のために両目の視力を失った時でした。昼と夜の区別は関係なくなり、完全な闇が私の周りを取り囲みました。この暗闇の中で、自分の存在意義を当てもなく模索しました。夜の後には必ず夜明けが来ると言いますが、私の人生の暗闇にも夜明けの曙光が差しました。それは点字と出会った時でした。
 点字を勉強し始めたのは、失明してだいぶん経ってからでした。両親は私の眼の治療に莫大な時間とお金を費やしましたが、視力は回復しませんでした。しばらくすると、両親は一切の希望を失って私の将来を心配し始めました。彼らの落胆ぶりに、自分が決して再び目が見えるようにはならないことを悟りました。私は一日中家で過ごすようになりました。もし、その盲学校について知ることがなければ、私は無意味な人生を送ることに慣れてしまっていたでしょう。この学校はデリーにあり、アキール・バラティヤ・ネトライン・サンガという名で知られていました。父はここに私を入れることに決めました。
 父と一緒にデリーに来て、最初に学校の敷地に足を踏み入れた時、私は心配と不安でいっぱいでした。まさか、その敷地に再び入る時に、自分が自信に満ちあふれているだろうとは全く思いもしませんでした。入学した次の日から授業に出席し、初めて点字についての説明を受けました。点字本のページに触ると点字の凸点がチクチクする感覚に、顔に笑みが浮かんできました。初めのころはすべてが物珍しく思えた半面、時には苛立ちを感じることもありました。しかし、視覚障害のある先生は、「点字は視覚障害者にとっては視力であり、二つの手がこれからは二つの目となって機能しなければならない」と教えてくれました。「これから二つの手の力で世界を見るだろう」と先生は仰いました。
 自分でも努力を重ね、先生方に指導していただいたおかげで、徐々に点字を習得しました。まずヒンドゥー語の点字を覚え、次に高学年では2級英点字を習得しました。6年生になるころには、ヒンドゥー語、英語、サンスクリット語に点訳された本を問題なく読めるようになりました。
 書籍という新世界に没頭するにつれ、この世界は教科書だけに限られているのではないことに気付きました。点字の6点で、世界中のありとあらゆる知識を網羅できればと切望しました。この強い思いを満たすために、デリー公立図書館の会員になりました。時には学校の図書館から本を借りることもありました。今では、絶望の黒雲は私から永遠に消え去りました。
 たくさんの内面的な変化にも次第に気付くようになりました。失明すると、目の見える人たちが読む文字は、私には意味のないものになりました。どのようにしたら文字を使わずに自分の考えを表現することができるかとよく思い巡らせたものでしたが、これは自分が点字を習得することで可能となりました。この新しい貴重な発見に興奮し、私はたくさん読み、たくさん書いたものでした。点字を使って個人や機関と連絡を取り始めさえしました。人生で初めて、私の手紙にある組織が点字で返信してきた瞬間、言葉で言い表すことのできない喜びを感じました。
 点字の影響は、私の精神面や物事に対する姿勢にも現れ始めました。夏休みに帰郷した際、実家のあらゆるものに親しみを覚え、自分の一部のように感じました。これはおそらく点字が私の心に肯定的な考え方を少しずつ浸透させたからだと思います。ハヌマン・チャリサという有名な長編のヒンドゥー教の叙事詩を家族にすらすらと暗唱してみせたとき、みんなは大いに喜び、心より祝福してくれました。その瞬間、私の失明で両親が抱えていた苦痛が解放されたように感じました。
 点字のおかげで、今は普通の生活を送ることができると気づきました。視覚障害になった直後には、周りに遠慮して、人見知りをしていました。しかし、今ではそのような出会いをわくわくしながら心待ちにしています。隣人でさえ、私が前向きな気持ちでいることを知って喜んでくれました。夏休みが終わると、学校に戻り、再び勉強で忙しくなりました。
 黄金色に輝く未来を夢見ることは人間の本質です。私の目がまだ見えて、晴眼者のための学校で勉強していたころは、大人になったら父のようにビジネスマンとして成功し、多くのお金を稼ぐことをよく夢見たものでした。この夢は失明した時に閉ざされました。夢について語ることはもとより、つつましい普通の生活を送ることさえ考えることが難しくなりました。学校に入学し、点字という力と光を得たことで、今では全く違うシナリオになりました。点字のお陰で人生から暗闇は跡形もなく消え去り、再び普通の生活を送ることが可能になりました。私は再び自分の将来の生活について夢の糸を織り始めました。
 どうやら私は人生に新たな目的を見つけたようです。ビジネスマンになりたくないというわけではありませんが、同時に、社会の中の障害者のために何かをしたいと思うようになりました。光を失い苦しむ人たちは、人生のすべての扉が自らには閉ざされていると決して考えてはいけません。なぜなら人生は無限の可能性で満ちているからです。必要なのは希望という一条の光だけです。私の人生における希望の光は点字によって灯されました。点字を知り、私の思考回路に新しい局面が加わりました。それだけに、点字の発明者であるルイ・ブライユに感謝しています。また、私の人生の方向をすっかり変えた点字に私が精通するまで教えて下さった先生方には深い恩を感じています。

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