■海外の部 西アジア中東地域 Aグループ(26才以上) 佳作
「心安らぐ思い出」 … 頭の中にある眼 …
タラント・ショルドッシュベコフ 45才 (キルギス 男性)
 
 私がとても小さかったころに、老練な教師が私に言いました。「見える人と君が同等になるためには、彼らよりはるかに優秀でなければならない」
 その時、その言葉の意味を全く理解していなかった私は、先生の言われたことを気に留めませんでした。
 私は町外れに住んでいました。私たちの地区の大きな家々の外側には、木立が点在し、石に覆われた小川が流れ、数キロに渡り緑地が広がっていました。私はよく少年たちと単純な遊びをして過ごしたものでした。野の花を摘んだり、クワの実を食べたりしました。私以外の子供たちは皆、キリギリスを捕まえましたが、私だけは捕まえられませんでした。虫がチリチリと鳴いていましたが、それがどのような姿をしているのかが判りませんでした。言葉で憂さを晴らすことも出来ずに、私はひどく落ち込みました。おまけに、少年たちはきゃきゃと声を上げ、箱の中の奇妙なガチャガチャいう生き物をお互いに見せ合っています。
 私は勇気を振り絞って、みんなから離れた野原に身を置いてみました。草の上に横たわり、辛抱強く待ち始めました。草むらのあらゆる居住者たちに慣れ親しむまで、じっと横になっていました。そして、一匹のだまされやすいキリギリスを私の鼻の下に見つけるまでそうしていました。そこにいたのか! キリギリスは誘拐され、厚紙で出来た牢屋(ろうや)に入れられました。私は獲物を見せるために、野原に飛び出しました。もちろん、誰一人として信じてくれませんでした。しかし、私は少しも気に留めませんでした。この虫が、今までのどんな贈り物よりも大きな喜びを私に運んできてくれました。
 少し前まで落ち込んでいたのは、この私だったのか? 今、私には大勝利の小さな証であるキリギリスがいます。私はキリギリスを放してやりました。なぜなら、キリギリスは、私に自分の置かれた状況を乗り越える力があることを感じさせてくれたからです。私は、全盲の先生が私に何を伝えようとしたのかが判りました。
 今、年を重ね、歩んで来た道を振り返ってみると、変わることのない真理がそこにあります。
 − 創造主があなたに見える眼をお与えにならないのは、あなた自身の中に眼を探す試練をお与えになっているのかもしれません。身体的に損失があるために、おそらく精神力が高められなければならないのでしょう。自分自身を見つめてごらんなさい。今まで一度も想像したこともなかった領域をあなた自身の中に探してごらんなさい。そうすれば何かが表面に現れてきます。
 読むことを学んでから、私はいつも読書をするようになりました。ですから、大学の門をくぐった時は、言い表すことができないほど興奮しました。全盲の子供たちのための学校ではなく、より多くの機会を提供してくれる学校でありました。静かな講堂では私の点字タイプを打つ音が響き渡ってしまい、そのきまり悪さに打ち勝つことが一番大変でした。勉強以外にすることは何もありませんでした。
 数カ月後、試験前に私はコースの半期の復習をしていました。私の詩は、何紙かの新聞や雑誌に掲載されていました。私は若く、誇りに思いました。私はこの世の中で偉大なことを成し遂げるつもりでした。両親から300マイルも離れた地方の教員になったのもそのためでした。家を建て、ランの花を植え、次の世代の詩人を育てるなどの多くの計画を立てていました。それがどんなに困難なことかなど判りませんでしたが、一部分は実行に移しました。なぜなら、次世代の人たちと共に今も仕事をしているからです。
 当時のソビエト連邦が崩壊し、それに伴い経済も衰退しました。無秩序が世をむさぼり、失業がはびこり、そして店のカウンターからは人の姿が消えました。市民は皆、商売を始め、私も同様に商売をしました。
 どのようにして教員の給与で家族を養うことが出来たのか自分でもとても驚いています。2年後にマンションを買いました。新築ではありませんでしたが、いい物件でした。私は全財産を使い果たしてしまいましたが、決して後ろは振り返りませんでした。私には私のやり方があります。素晴らしい家族がいて、両親は健在で、私の詩は相変わらず活字になっています。しかしながら、私の目指す頂上にはまだ届いておらず、私は、あのキリギリスの音を何とか聞こうとしています。
 征服することの出来ない頂上などありません。私たちを望む道へ導く意志があります。人生の計り知れない大きさに近づく日がいつか来ると信じています。そして、その頂きの神々しい美を拝するでしょう。先生のように、私もクロウタドリあるいは他の何かとなって近づき、誰かのために歌を歌うでしょう。そう信じています。しかし、その前に今を大切にしなければなりません。
 
 人生を愛し、人を愛すこと
 与えた愛より多くの愛を受けるのは確かなこと
 長い間待ち、ようやくその光を見るとき、全能の創造主に向かって呼びかけるその主の名は重要ではない
 入り口にたどり着くまで、誰もが歩んだ道を行くがいい
 その先からは君の心が導いてくれる
 あらゆる思いが現実のものとなる、そんなところへ、立ち止まらずに
 この宇宙は癒やしの場だ
 欲するものは、手に入れることが難しいように見えるかもしれない
 だが、表面の輝きだけで満たされず
 ここまでと思わず、もう一歩先に踏み出してごらん
 そうすれば宇宙の彼方に手が届くはず
 悔やんで時間を無駄にしてはいけない
 誰かが生まれている、そう、君の友になるために
 君の物語の、君はヒーローだ
 だから戦は、自分の力で戦うんだ

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