■海外の部 西アジア中東地域  最優秀オーツキ賞(A・B共通)
「点字が人生を変えた」
ニキール・ジァイン 33才 (インド 男性)
 
 私は生まれつき目が見えず、「見えない」ということがどのようなことか分かりませんでした。幼いころに見えない感覚とその違いについて繰り返し教え込まれましたが、ほかの子供と違うことが理解できたのは7才のときでした。それまでは完全に他人に依存していました。
 一般の幼稚園に通っていましたが、上級クラスを卒業すると、進級できなくなりました。活字で読み書きて学ぶことができなかったからでした。いろいろと探した末に、デリーにある盲人救済協会付属盲学校の中学2年に入学したのは、7才半の時でした。初めて自分と同じ境遇を持つ仲間と出会い、自分というものを知ることができました。
 今も最初のクラスの7時限目のことを思い出すのですが、点字を担当するネジ先生が、私の机のの上に一枚のカードを置きました。先生は私の指をその上に乗せ、触れた感覚を尋ねました。ヒンドゥー語のアルファベットを表した点に触れた瞬間、本当に興奮しました。これで独力で学習できると実感できたからです。それは長い間待ち焦がれていたものでした。突然、人生がバラ色になり、将来に向けて夢が描けるようになったのです。
 学校生活は順調で、鮮やかに変わって行きました。点字のお陰で、ヒンドゥー語、数学、英語、サンスクリット語、さらに様々な社会科学の勉強ができるようになりました。目の見える学生と同じように勉強し、教育に必要な基本的なテキストも整備されてきました。
 私は子供時代からの沢山の本に触れ大変感銘を受けました。点字のお陰で、読書に親しみ、文学の世界にも深く入り込むことになりました。点字による読書から大きな喜びが与えられるだけでなく、理性を育み、文学への興味をいっそう駆り立てられるようになりました。点字はスポーツの分野にも、各種のカードゲームやチェスなどにも使用され、楽しませてくれます。
 大学の生活でも点字は、目の見える学生とともに学ぶうえで大変強力な武器になっています。点字を使うことで私の自信を深めるだけでなく、講義にも点字を用いることで集中することができます。そこで学んだ知識を忘れないためにも、またセミナーで話し合われたいろいろな事柄について忘れないためにも点字は本当に役に立ちます。
 点字はコミュニケーションができるきっかけにもなります。多くの人が点字を知りたいと話しかけてきて、バスや電車などがその主な場所になるのです。こうした相互のやりとりが形を変えて現在でも続いています。
 全インド盲人協会が主催して毎年開かれているカーラリーは、点字を通して視覚障害者と健常者との溝をなくすためのイベントになっています。視覚障害者には、点字のルート図が渡され、各方面で活躍されている健常者がドライバー役となります。視覚障害者のナビケーターと健常者との間の相互の理解が深まるのです。これは私に大きな楽しみと興奮を与えてくれますが、同時に、社会のなかで皆が平等なのだという実感が強くなるのです。
 実は私の生涯のパートナーもこうした相互理解の中から巡り会えたのです。彼女の点字を学びたいという強い望みが、お互いに将来一緒に歩んでいこうという気持ちにさせたのです。
 私の人生のなかでいろいろと成功を収めることができたのも、この点字が大きな夢を持たせてくれたのです。また、こうした夢を実現させたのも、私を駆り立たせたのも点字でした。夢の実現のひとつとして、私が講師として成功したのもこの点字のお陰です。
 点字は、単なる文字というのではなく、私達の生活を最大限活かすための方法を教えてくれるのです。点字により健常者と同等になり、より必要とされる個性が身につくのです。
 私は世界障害者の日の記憶が、まだ新鮮に残っています。インドの大統領と首相の前で、点字で謝辞を述べたことがありました。私のスピーチと英語の発音に大きな賞賛が寄せられました。これにより私は自信を深めることができ、英語を学びたいという意欲が更に強くなりました。こうした経験を大変幸せに思っています。
 人生は実り多いものです。その人生で宝をつかむのは私達自身です。点字がそれを教えてくれました。自分の弱さから抜け、自立に向けて挑戦する力を与えてくれたのが点字なのです。社会のさまざまな障壁に立ち向かい、新たな社会を作り上げる上で、点字が大きな力を持つのです。

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