■海外の部 アジア太平洋地域 Aグループ(26才以上) 佳作
「私の人生を変えた点字」
モウンティン・モエ 33才 (ミャンマー 男性)
 
 私は、中央ミャンマーの小さな村落の貧しい農家に生まれました。20才で高校を卒業すると、生まれた村の小学校で教師として働き始めました。貧しいこの村の子供たちに教育という光をもたらすことができることをとても幸せに思い、一生懸命働きました。このころが私の人生で最高の時代でした。
 突然、私の身に災いが襲いました。ありとあらゆる希望と夢は閉ざされ、自分の将来が修復不可能な廃墟の中に、たった一人で閉じ込められたかのように思えました。事故によって両目の視力を完全に失ったのです。それは、まるで光の世界から引きずり出され真っ暗な奈落の底に突き落とされたかのような衝撃的な経験でした。どうしてもあきらめて、この新しい状況を認めることはできませんでした。
 友人や隣人はいつの間にか私のもとを離れて行き、残されたのは、私の運命を嘆き悲しむ家族の声でした。一番心を痛めたのは、可愛い子供たちのためにもう何もすることができないと悟った時でした。この救いようがなく希望を見失った状態のまま、8年間という長い孤独な時が過ぎました。まるで警備が非常に堅い刑務所の囚人のようでした。心の中は灼熱(しゃくねつ)の地獄の炎に囲まれていたかのようでした。
 そんな時、中央ミャンマーのどこかに盲学校があると聞き、情報を集めて調べ始めました。本当に存在すると分かった時は、喜びに打ち震えました。そして、どんなことをしてでもその学校に行こうと決心しました。その盲学校では一般の教科教育のほかに、手工芸や音楽といった分野の教育も行っていました。
 盲学校の中に初めて入った時のことを今もはっきりと覚えています。校内に響く教科書を読み上げ、暗唱する子供たちの声に、教員時代の記憶がまざまざと呼び戻り、我を忘れるほどの喜びが全身に駆け巡りました。実習室から流れてきた音楽の調べを聴いた時、あまりの恍惚(こうこつ)感に天国にいるかのような気持ちがしました。
 そして、人生で初めて私の指先が点字印刷の凸点を触れたその瞬間、私は新しい人生が始まったと確信しました。
 点字が問題なく使えるようになるまでは、一生懸命勉強しなければなりませんでした。でも、一度点字の基本を覚えてしまうと、私の人生は日に日に輝きを増していきました。この新たに発見した学習手段のお陰で、読書への興味を再び追求し始めただけでなく、やがて大学での勉強を修了することも出来ました。一番素晴らしかったのは、自分の最も好きな、教えるということができることです。今度の私の生徒たちは、目の見える子供たちではなく、目が見えない子供たちです。
 点字のお陰で、新たなことに視野が広がり、今は志を持って生き生きと生活しています。点字は自分で描いた目標を達成できるという自信を与えてくれました。そうなのです。点字は人生を良い方向に変えてくれました。私と周りの世界の間にあった偏見や差別という壁は、点字が取り壊してくれました。
 点字は私にとってかけがえのないものであり、私のすべてです。

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