■海外部門 佳作
「点字を通し幸せを収穫」 インドネシア サリム・ハルジョ(47歳・男性)

 あまりに険しくとも通り抜けることのできない道はない
 あまりに深くとも下りることのできない谷はない
 あまりに高くとも登ることのできない山はない
 あまりに広くとも渡ることのできない海はない
 意志あるところに道はあり
 努力のあるところに結果あり
 ローマに至る道は多くあり

 障害のある人、特に視覚障害のある人は、これらのスローガンをしっかり心に刻むべきです。強い意志と不屈の魂があれば、望みは確かにかなえられるのです。神様は世界を完璧にお造りになりました。意味の無いものなどないのです。この世で起こるすべてのこと、この世で人が経験するあらゆることには意味があり、目的があるのです。ああ、しかし人は神のご意思を理解できないことがあまりにも多いのです。
 私は視力を失ってしばらくの間、点字の存在を知りませんでした。全くの暗闇にいると感じていました。視覚的にも精神的にも暗闇だったのです。どうしていいのか分かりませんでした。もう読むことも勉強することもできず、行動は極端に限られていました。悲しみや失望、戸惑い、怒り、希望のなさといったもののすべてが混ざり合っていました。まるで手錠をかけられているようでした。そのような状態が数年続きました。心のやすらぎも希望も持てない日々は、点字にようやく出会った時に終わりました。
 1970年1月5日にスラバヤの盲学校で点字を教わってからというもの、太陽を覆っていた雲が徐々に晴れていきました。再び勉強することができたのです。そのとき私は4年生でした。
 点字があれば墨字を読み書きするのと全く同じように読み書きできました。点字は三つずつ縦に並んだ2列の点、つまり計六つの突起した点で成り立っています。大きさはちょうど指先で触れるのに良い大きさです。1の点から6の点を組み合わせることで、アルファベットや数字、句読点や他のさまざまな記号を表すことができます。これで盲人はどんなことでも学ぶことができるのです。この読み書きの仕組みは、1809年1月4日にパリから48キロほど離れたクープレで生まれた盲目のフランス人、ルイ・ブライユによって作られました。この発明は、シャルル・バルビエにヒントを得たものでした。バルビエはフランス騎兵隊の司令官で、12個の点を使って「夜の文字」を開発し、それを軍事目的で使ったのです。ブライユの死後も、彼の作り出した点字の仕組みはさらに改良され、アラビア語などの非ラテン語にも使われるようになりました。
 私にとって、点字はとても大きな意味を持っています。点字を使って読み書きできることで、再び学校で勉強することができたのですから、それも当然です。学校へは目が見えなくなったため3年間行っていませんでした。点字を教わらなかったらどうなっていただろうとしみじみ思います。愚かで、周りから遅れ、自立できず、貧しく、屈辱にまみれ…、きっとそうした状況のまま、それをどうすることもできずにいたことでしょう。点字と、それを書くための点筆と点字盤によって、私は人生をより良い方向に変える力を得たのです。点字が私の将来を覆っていた「灰色のカーテン」を取り払ってくれたのです。

 点字は今や私の人生の一部になりました。それがなければ、もはや自分に自信が持てません。点字は私の魂を照らし、心に火をともして、将来の幸せをかなえるトーチライトのようなものなのです。
 私は盲学校を卒業して、普通学校で勉強を続けました。「点字のアルファベット」で私は目の見えるクラスメートと張り合うことができたのです。学業を終え、盲学校の教師として働き始めました。もちろん点字は授業をするのにとても役に立っています。それだけでなく、点字によって本当の自分を見いだすこともできましたし、自立して学び、自分を成長させることもできました。またいくつかの社会組織に参加し、役員の1人として務めを果たすこともできました。
 人生で点字が最も意味深いものになった忘れがたい出来事は、後に妻となる、ある女性に恋をした時でした。当時のコミュニケーション方法は今ほど発達していませんでした。私は彼女とコミュニケーションをとるのに点字の手紙を使いました。彼女が点字の読み書きができたのは幸いでした。彼女は障害児教育の教員養成大学の学生で、点字を学んでいたのです。でも、彼女の両親は私たちの交際に賛成していなかったので、私は点字を使わなくてはいけませんでした。点字のお陰でとうとう、私たちは結婚に漕ぎ着けたのです。今は2人の子どもと共に幸せに暮らしています。
 私の幸せは、奇跡を発明してくれたルイ・ブライユのおかげです。点字は存在し続け、盲人の役に立ち続けるに違いないと思います。今までも私たちは科学技術の進歩に遅れずに来たのですから。


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