海外の部 EBU地域 シニア・グループ 佳作
「6が広い世界中を駆け抜ける」
ドイツ  ゲルハルト・ポルツィン(70歳・男性)
 「むかしむかし」。おとぎ話はこの言葉で始まります。その中で、主人公はあらゆる危機や災難に挑みます。でも、彼らは魔法や非現実的で不思議な力を駆使します。
 私は5〜6歳の頃、何よりもこういう物語が大好きでした。自分で大好きなおとぎ話を読めるようになりたくて、早く学校に入学したくてたまりませんでした。ドイツの童話として世界的に有名な、グリム兄弟の童話の中で、私は六人の男のユニークな物語が特にお気に入りでした。それは、六人の男たちが喜びも悲しみもともに乗り越えていく物語でした。力持ちの男、狩人、風男、足の速い男、寒気男の五人が、貧しい退役兵士の男を困難から救うという内容でした。
 ところが、自分で読むという私の夢はそう簡単には実現しませんでした。私は8歳で突然視力を失ったのです。私の童話の世界、そして私の前途ある世界はすべて永久に終わったように思いました。
 私にはいいアドバイスが必要でした。童話に出てくる主人公の6人の男たちは現実の世界では全く通用しなかったのです。
 そんな時、私は六つの友に出会いました。彼らは、その後の人生に、どんなおとぎ話にも出てこないような魔法の力をくれました。彼らはとても小さく、弱々しく印象的ではありませんでした。彼らを理解し、その力を知るには繊細な感覚が必要でした。その小さな六つの点に助けられて、私は高校、大学を卒業し、教職を得て、博士号をとり、十分に幸せな人生を送ってきました。それは、200年前にグリム童話集が刊行されてから10年も経たないころ、ある16歳の全盲のフランス人男性によって発明され、それ以来、目の見えない人々を絶望から救ってきました。ルイ・ブライユ氏の6点式の点字が、彼らの教育や人生の成功を導き続けているのです。
 私にとって、この「魔法の6」は、童話よりもはるかに大切なものになりました。
 これまでの人生経験をもとに、ルイ・ブライユ生誕200年の時に、彼が発明した「六つの点」のおかげで、目の見えない人たちが世界を股にかけて生きていることをたたえ、次の詩を捧げました。  
「点」
 それはバラバラで丸くて小さく
 まったく何の豊かさもない
 しかし、文になると、力を増す
 文章を完結できるのだから

 丸が三つの一列では
 意味は謎めいている
 想像し、考えさせる
 その3点が何を意味するのか

 率直に声高に、はっきり言おう
 今、これこそが最高であると
 この弱々しくも、傑作な点たちが
 盲人のための文字なのだから

 世界が知るべきは、馬具職人のむすこが
 2世紀近く前に創りだしたもの
 今日、確実に、世界中に、
 6点式点字の友達がいることを