海外の部 EBU地域 シニア・グループ 優秀賞
「おなかの上の点字」
スロバキア ジョセフ・ズブラネック(57歳・男性)
 もしもこの世界点字作文コンクールの案内がなかったら、私は、自分がまだ小さな小学生だった時に点字を学んでから、今年がちょうど50年目にあたるということには気づかなかったことでしょう。このような節目の年には、何か記念になることをしなければならないと思いました。そこで、人類にとっては大した偉業にはならないと思いますが、楽しい作文を書くことに挑戦してみます。
 小学校に入ったばかりの頃を思い出してみても、点字の読み書きを学ぶのに特に苦労をした記憶はありません。大人になってからマスターすることに比べたら、小学校の1年生が読み書きを学ぶのはさほど難しいことではないのです。
 私も他の小学生たちと同じように、いくらか時間をかければ、例えば皆の前で朗読を披露するくらいには早く読めるようになりました。生まれ持った素質によって培われたこの読むスキルについて、私個人のメリットはほとんどありません。ただ、美しい言葉をちりばめた文章を書き、それを読むだけで、何度も何度も褒められました。実際にはそこまで褒められるほどの人間でなくても、時が経つにつれて、たいした問題もなくそのような状況に慣れていくものです。
 私は今、私より年上の男性たちとアマチュアのカントリー・バンドで活動しています。そして、そこで簡単に聴衆からの称賛を手に入れようと、この読むスキルをこっそり使っています。3人のバンドメンバーは弦楽器を演奏しますが、それぞれの前には歌詞とコードの載った譜面台が置いてあります。私の楽譜はもちろん私の頭の中にあるのですが、私はそのレパートリーの中から4分の3くらいを歌わなければなりません。ただ、都合のいいことに私の楽器はハーモニカで、歌を歌っている間はそれをズボンのベルトのところに結わえ付けておくので、手が空いています。いくら鍛えられた視覚障害者の記憶力とはいっても、常にその機能を十分に発揮できるとは限りません。何百もの歌詞の中は二つや三つ、どうしても覚え切れないものもありますし、新しい楽譜ならなおさらです。そこでカンニングペーパー、つまり楽譜を点字にしたシートの出番です。点字シートを自分のおなかの上に貼って横隔膜を震わせます。そして、おなかの上の点字を読む動作が自然な体の動きに見えるように、立って演奏して、わざと大げさな動きをするのです。
 でもそれは見ている人にとっては見慣れない動きなので、中には私の仲間のところに来て、そっと質問する人がいます。「なぜあの人は歌っている最中に自分のおなかをたたくんでしょうか」と。はじめの頃は、バンド仲間は笑いながら事情を説明していました。しかしやがて、この説明をするたびに、最後にはいつも私が称賛の的になることをうらやむようになり、バンド仲間全員にもちょっといいことがあるような、ずるがしこい答えを考え出しました。「実はですね。彼にはとても悪い癖がありまして治らないんですよ。おなかがすいたり、喉が渇いたりすると、ああやっておなかをたたくんです」。いつも複数の答えを用意していて、その時々でメンバーに足りないものに合わせて答えを選んでいました。そしてこの話がイベントの主催者に伝わるやいなや、解決策が提供されます。おかげで、私たちはそのたびにレストランやパーティー、カントリーボールなどに行くことができます。もちろん楽器を持って。
 しかも、私のおなかはXXLサイズです。そして点字の存在。なんとも愉快で、もっともらしい話だとは思いませんか?