海外の部 WBU-AP地域 ジュニア・グループ 佳作
「視覚障害者に対する人々の姿勢の変化」
ベトナム ヒュン・ティ・トゥ・トゥイ(24歳・女性)
 乗客たちの話し声が入り交じった田舎からの風に吹かれていると、突然、私の携帯が鳴りました。
 優しくて温かい、なじみの声が聞こえてきました。「もう電車に乗った? みんな待っているわよ」
 「もう乗っているわ、5時ごろには着くと思う」
 「ちゃんと食事をするのよ。じゃあ、後でね」
 母は、私のことを6人兄弟の中で一番心配しています。
 特に私が外出するときはいつも気にかけてくれて、全て必要なことはやってくれました。そのことを私はとてもうれしく思っています。
 電車は立ち並ぶ家々の間を、田園風景の中を、スピードを上げて走っています。そのとき、突然ある思い出が頭の中によみがえり憂鬱な気持ちになりました。それは、親戚全員が出席していた姉の結婚式での出来事です。皆、式に夢中で、別の部屋で人形遊びをしている視覚障害者の私のことは忘れているようでした。結婚式が終わり、家族全員が集まりました。そこで父は「式も無事終わったことだし、うれしいニュースを伝えたいと思う。トゥイがダナン市にある障害者学校に通うことになったんだ」。突然、幸せだった雰囲気は静まり返り、皆が父を見つめました。
 「何を言っているの? トゥイに何ができるの? トゥイ、目が見えないのよ! 家に残しておいたほうがいいじゃない。卒業したって何もできないじゃない!」。叔母が立ち上がって言いました。
 心配そうな親戚に向かって父は優しく言いました。「私も最初はそう思ったよ。でも妻と話し合って学校へ行かせることが賢い判断だと思ったんだよ。友達も、もっとできるだろうし」
 私は何も聞きたくありませんでした。叔母の言葉は、刀のように私の心を突き刺し惨めな気持ちになりました。息苦しくなり、涙があふれ、同情と軽視のまなざしから逃げるため部屋を飛び出しました。
 次に頭に浮かんだのは、踊る太陽の光とそよ風が私の喜びの瞬間を祝福してくれている、ある美しい朝の風景でした。私の、ダナン市のグエン・ディン・チエウという視覚障害者学校での最初の日です。人生の新たなページがスタートした日でした。
 時が過ぎるにつれ、家族から離れて生活することには、つねに困難がつきまとっているように感じました。新しい環境では思い通りにならないことばかりで、学校を辞めたいと思っていました。やがて6年生となり、統合教育の一環で晴眼者が学ぶ公立学校へ編入となりました。
 私の人生は新たな、そしてより困難を伴うステージに入りました。先生に連れられて門をくぐると、晴眼者の生徒たちが好奇のまなざしで私をみつめているのを感じました。
 最初の頃、晴眼者のクラスメートは、私と話をすることを嫌がりました。私が授業中ノートをとるために使用する点字器の音にいらいらし、また、点字でノートが取れるように、授業内容を声に出して私に伝えることを面倒に感じていました。嫌々サポートをしているという感じでした。
 でも、点字を習得すると、自分で教科書が読めるようになりました。触覚模型を作ってもらい、幾何学も学びました。点字で提出した宿題は、点字を知っている先生が墨字に変換してくれました。ただ、私にはこの方法がしっくりこなかったので、点字で書いた宿題を教室で読み上げるので、その場で直接採点してほしいと先生に頼みました。私がたびたびテストで高得点を取るようになってから、クラスメートが私のことを認めだし、距離も縮まってきました。中には、問題が理解できないときに私に説明を求めてくる友達もいました。このことで、私の勉強への意欲もがぜん湧き立ち、未来の成功をつかむための活力となりました。
 いくつか賞ももらいました。最初は、市内の優良生徒対象の生物の試験で2位という結果を残しました。また、第39回UPUレターライティングコンテスト全国大会で、特別賞を受賞しました。さらに、教育訓練省のコテックス奨学金制度で「才能豊かなベトナム女性」として表彰もされました。
 その後、ホーチミン大学の社会福祉学部・社会人文学科へ入学しました。一生懸命勉強に励み、全ての試験を突破しました。夏休みの間は、学費の支払いと家族の金銭的負担を和らげるため、宝くじ販売のアルバイトをしました。こうして、私が自立した生活をすることができ、家族や社会の重荷ではないのだということを周囲に証明することができました。
 過去の思い出にふけっていると、いつの間にか電車は駅に到着していました。突然、私の名前を呼ぶ母の声が聞こえました。自宅へ向かう道中、母は終始うれしそうで、私を誇らしく思ってくれていることが分かりました。でも、同時に自分がまた好奇の目にさらされるかもしれないという不安もありました。
 玄関では、うれしそうな笑い声を上げて叔母が出迎えてくれました。これは大きな驚きであり、また、同時に私はホッとしました。
 「お帰り、トゥイ、12年ぶりね。あなたの話はたくさん聞いているわよ。大人になったわね。トゥイは私たちの誇りなのよ!」
 皆がとても温かいまなざしを私に向け、勉強や仕事、受賞した賞について尋ねてきました。長旅の疲れは消え、周りの人々が私を理解し認めてくれていることを実感し、この上ない喜びを感じました。
 私を産み育ててくれ、信念、志、そして困難に立ち向かう力を与えてくれた両親。その両親への感謝の気持ちが心の奥からこみ上げてきました。