海外の部 WBU-AP地域 シニア・グループ 佳作
「最善を尽くし『私もできる』ということを証明する
         ――視覚障害者に対する世間の見方を変えたい」
香港 フー・タイ・フン(35歳・女性)
 「彼女に近づくな。白杖(はくじょう)が当たると、3年は不運に付きまとわれるぞ…」
 「視覚障害があるなら、街中を歩くべきではないよ…」
 視覚障害を持つようになり、私の世界は完全に変わり、当然のことながら、日々の生活は決して快適なものではなくなりました。しかし、視覚障害者に向けられる世間の人々の見方を変えるために私に何ができるでしょう。
 たった一人の微々たる努力では、視覚障害者に対する世間の人々の見方を変えることは不可能だと思いました。それでも、私は最善の努力を払い、この価値ある目標に向かっていくつか個人的に行動を起こしました。
 一つは、ランニングでベストを尽くし、他の視覚障害者のよき模範となることでした。事実、私は香港でフルマラソンを完走した初めての女性視覚障害者です。長距離レースを完走するには、汗と時間と忍耐が必要です。視覚障害選手向けのウエアにマラソンのゼッケンをつける度に、強い使命感が湧き上がってきます。私がレースに参加することで、健常者にできることは視覚障害者にもできる、というメッセージを伝えるのです。
 予想通り、私は通常の選手以上に練習をしなければなりませんでした。けれども、ゴールの際、拍手で迎えられたこととは別に、自分の中で、長い間失っていた自信の高まりを感じることができました。これにより、将来の困難に立ち向かえるような強さを獲得しました。
 昨年、海外のマラソンで走った香港の視覚障害者ランナーの数は延べ60人にも上りました。こうして仲間とともに行動することによって、視覚障害者もスポーツを楽しみ健康で快適な暮らしをすることができることを世界に証明できました。香港の視覚障害者が参加した全てのマラソンで、仲間の選手や観客から拍手喝さいの称賛を受けました。まさに、マラソンが視覚障害者の閉ざされた心の扉を開く鍵となり、マラソンに参加することで自信を取り戻し、人生の新たな生きがいを見つけることができると分かったのです。
 「犬は、この施設に入ることができません」。こうした注意書きを見ると、香港に盲導犬を導入する試みがこれまでに2回も行われたことを思い起こします。1回目は1970年代、2回目はわずか2年前の2012年のことです。
 盲導犬使用者として、私は、香港における世間の盲導犬に関する認識と理解不足から生じる拒絶反応や非難に苦しみました。視覚障害者が外出するときは白杖を使うというイメージが世間に深く定着していて、盲導犬が視覚障害者の通勤や旅行の助けとなり、白杖の代替手段になるとは考えられていませんでした。白杖では、腰の高さ以上の障壁や障害物を察知することは困難です。盲導犬と外出すると、盲導犬が私の眼となってくれるので、より安全に、より遠くまで、より早く歩くことができます。
 この2年間、私は、世間の人々の盲導犬への理解を深めるための支援プログラムに力を注いできました。さまざまな場所を訪れ、マスコミのインタビューを受け、学校を訪問して体験会を行い、盲導犬を身近に感じる機会を提供する活動に数多く取り組んできました。こうした活動を通して、盲導犬が公共の場で無駄ぼえや興奮しないように、厳しい訓練を積まなければならないことを人々に知ってもらいたいと思っています。視覚障害者にとって盲導犬とは、肢体が不自由な人にとっての車椅子と同じです。どちらも、体が不自由な人が自由に移動できるようにするものです。盲導犬を所有することは、視覚障害者にとって日常生活を送る上で必要不可欠なことであり、単なる特権ではありません。
 実際、視覚障害は機能障害にすぎません。意志あるところに道は開け、そして私たち自身が諦めなければ、「障害がある」すなわち「できない」というわけではないのです。
 昨年、視覚障害者としての私のこれまでの人生を 記録した本を書きました。本を書いた目的は、視覚障害者の内面世界を世間の人々に理解してもらうためです。全ての人を受け入れて共に生きる社会ができれば 、障害の有無に関わらず、皆が一つになり仲良く暮らしていくことができると思います。