海外の部 WBU-NAC地域 シニア・グループ 佳作
「点字機器とオーディオ機器の型にはまらない新たな活用方法」
アメリカ カロリン・ジュエル・フィッシュ (29歳・女性)
 3才で点字を使い始めてから今日まで、私は利用できるさまざまな点字機器とオーディオ機器を使ってきました。でも、創造的な事が好きで、機械には疎く興味もありませんでした。そこで、視覚障害のために、今まで一人ではできなかった事をやろうと思い、自分のやり方でテクノロジーを活用することにしました。知識と情報を得るための点字機器とオーディオ機器の使い方で、私が見つけた独創的で機能的な例をいくつか紹介します。
 学部生の時も院生の時も、授業で必要な知識を得るために点字機器とオーディオ機器を使っていました。機器を使って教科書を読み、試験を受け、そして大量のリポートを書いたのですが、自分の勉強のやり方に合わせて独自の方法でやりました。例えば、ただじっと座って読んでいると眠くなってしまいます。何か他の作業が必要です。そこで、歩き回りながらBraille Note Apexを持って、点字ディスプレイを読みました。また、運動や料理や掃除等をしながら、ブックセンスやビクターリーダーストリームを使いました。学士号も修士号もこのやり方で取得しました。自分に合った方法で機器を使って成功したのです。
 私はピアノ演奏で学士号を取りました。大学生の頃、耳で聴いて演奏することは全く問題なくても、楽譜を読むことができないという事に早々に挫折感を味わいました。大学3年まで点字楽譜に触れたことがなく、まして学ぶ機会などありませんでした。ピアノ協奏曲のようにたくさんの音が重なり合った作品は、耳から聴いただけで完全に習得することはとても難しいことでした。私は、もっと効率よく楽曲を習得するために、点字楽譜を独学で勉強することにしました。その夏、何時間もピアノの前に座って点字楽譜を勉強し、新しい曲を練習しました。点字の楽譜を膝に載せ、点字楽譜教本を自分の前の台の上に置きます。そして、片手で音楽を読みながら、もう片方の手で読んだ音を演奏していくのです。演奏した箇所を覚えたら、手を代えて同じことを繰り返しました。それから、右手と左手のパートを合わせて覚え、曲全体を覚えるまでこの作業を繰り返しました。この練習方法のことは自分の教授には話していなかったので、秋の新学期最初の授業で、私が曲を最後まで演奏した時の教授の驚きようは、想像がつくと思います。なんという達成感だったでしょう!
 私と夫は、i.d.mate Summitというバーコードスキャナーを持っていて、缶詰、箱や瓶に入ったもの、DVDの中身などを確認する時によく使っています。ある晩、i.d.mate Summitに全く別の使い方があることが分かりました。そのおかげで息子の命が助かったのです。午前2時頃、長男の激しく泣き叫ぶ声で目が覚めました。40℃以上熱がありました。かかりつけの医師に救急電話をかけたところ、熱を下げるためにアドヴィルとタイレノールを交互に与えるよう言われました。でも一つ問題がありました。その前の週末に来客があり、小児薬のボトルがごちゃ混ぜになっていたのです。どの入れ物にどの薬が入っているのか全く分かりません。私は 急いでキッチンに行き、バーコードスキャナーをつかんで2階に戻りました。そして、ボトルをスキャンしてアドヴィルとタイレノールのボトルを確認し、用量を読んで無事に薬を与えることができたのです。およそ8時間後に息子の熱は下がり、救急外来には行かずにすみました。息子は2日もすればすっかり回復しました。
 また、color identifier(色彩判別器)というオーディオ機器も持っています。それを近付けると、近付けた物の色を音声で教えてくれるものです。洋服を合わせたり、アクセサリーを選んだりする時にとても便利です。ある午後のこと、この機器にも別の使い方があることが分かりました。その日、私は生後6週間の次男と病院から帰宅しました。次男はいくつか予防接種を受けたのです。その後、次男は4時間程眠った後に、声を限りに泣き叫びながら目覚めました。どんなにあやしても泣きやみませんでした。息子の腿(もも)の予防接種の接種箇所周辺が腫れていることに気がつきました。腫れの程度を知りたかったのですが、尋ねられる晴眼者が周りにいませんでした。どうしたものかと慌てているうちに、あるアイデアがひらめきました。急いで寝室まで行ってcolor dentifierを取って来ました。そして次男の腿の腫れている部分に近づけると、「赤」という音声が聞こえました。腿のいろいろな部分にそれを当てると、腿の裏側を除いて全体が膝まで全て腫れていることが分かったのです。救急外来の看護師に電話をして状態を説明し、処置の仕方を教わることができました。それ以来、color identifierのおかげで、以前は晴眼者の補助なしではできなかった、けがや発疹や出血の確認ができるようになったのです。もちろん、これを買った時には、これほどいろいろと使えるとは思っていませんでした。
 私は、点字機器とオーディオ機器の自分に合った使い方を見つけて楽しんできましたが、ただそれだけではありません。そうすることで、それまで閉ざされていた世界への扉を開けることができたのです。ここに書いたことや、その他のいろいろな経験を通して得た知識と情報のおかげで、私の人生は大きく変わりました。視覚障害者として、自信を得て自立することができました。私の人生は、新しく発見した自由と可能性に満ちているのです。