海外の部 WBU-AP地域 最優秀オーツキ賞
「点字とモビリティ補助器具が視覚障害者に与えた変化」
香港  ホ・カ・リュン (26歳・男性)

 昔々、第六村と呼ばれる村に、たくさんの動物たちが一緒に暮らしていました。この村の周りには、住民の動物たちを守るために高い塀がめぐらされていました。実際、村から出て行くことはとても危険だったので、あえてそんなことをする動物はいませんでした。ですから、塀の向こう側で何が起こっているか、どんな様子なのかについてみんな気になっていました。動物たちの中でキリンだけが背が高かったので、塀の向こう側を覗(のぞ)き見ることができました。
「塀の向こうはどんな様子なの?」。多くの動物たちがキリンに興味深そうに聞きました。
「とっても素敵よ。色とりどりなの!」。キリンが答えました。
キリンは自分が見たものを一生懸命伝えようとしますが、他の動物たちには全容を把握することができませんでした。
 ある日、一番おしゃべりの蛙がキリンのところへやってきて「君の首に登らせてくれないかなあ。僕も外の世界を見てみたいんだ」とお願いしました。
 一番おしゃべりの蛙は興奮してこういいました。「見たことのない、いろんな花、木、草、果物がいっぱいあったよ。僕たちの村の外には大きな川が流れているんだよ。僕はキリンさんの言った“素敵で色とりどり”って言う意味がよくわかったよ」
 一番おしゃべりの蛙がもっと具体的に説明してくれたおかげで、他の動物たちは、もっともっと外の世界のことが知りたくなりました。
 今度は耳がよいウサギがキリンの首によじ登り、こういいました。「塀の外に住んでいる人たちはとっても頭がよさそうだよ。その人たちの姿を見ただけじゃなく、彼らが新しい栽培方法とか、子育てについて話しているのがよく聞こえたんだ」
 こうして、しだいに動物たちは、自分たちを囲む世界を新たな視点で見ることができるようになりました。外の世界で見たものに刺激を受けたり、新しいアイデアを得て自分たちの才能を伸ばしたり、生活を改善するようになりました。しかし、キリンは他の動物たちに外の世界を見せてあげるために、毎回自分の首に乗せてあげなければいけなかったので、だんだん疲れてきたのです。
 ある日のことです。賢いサルは、ブドウのつるが枠を伝って上に伸びているのを見つけました。サルはこれからインスピレーションを得て、はしごというものを発明しました。はしごを使えば牛や馬、豚のような重い動物も、塀の上に登って外の世界を見ることができると思ったのです。このおかげで、やっとキリンは、待ちに待った休みを取ることができました。
 昔は、視覚障害者も第六村の動物とよく似た境遇に置かれていました。
視覚障害者は、他の人が説明してくれる情報に頼るしかすべがありませんでした。このように受身にしか情報を得られなかったため、学びや成長が妨げられていたのです。
 そして点字のおかげで、情報を直接得ることができ、本や雑誌から新しい考えを学ぶことができるようになりました。音声認識ソフトのついているコンピューターなどの技術導入とともに。視覚障害者がインターネット上の情報に直接アクセスできるようになりました。点字に続きモビリティ補助器具が開発され、視覚障害者が外の世界に飛び出し、新しいことを学び、人生経験を得ることが可能になりました。
 その結果、視覚障害者に対しても、大学教育レベルまでの教育への扉が開かれたのです。このようにして、視覚障害者も読み書きができ、他の人たちと効果的にコミュニケーションが取れるようになりました。それは、自分の考えを述べ、才能を伸ばし、問題を解決できる基盤作りに役立ちました。
 第六村の話は、まだ続きます。
ある日、遠くに住むワシが空から降りてきて、動物たちに話しかけました。「君たちがはしごに登っても、本当の世界は見られないよ。この村の外の小さな町が見えるだけさ。はしごに登っただけでは見えない町がまだまだいっぱいあるのさ。君たちが想像もできないような山々、砂漠、そして海があるんだ!私の背中に乗って一緒に飛んでみない限り、そういったものを見ることはできないんだよ」
 「それ本当?」。動物たちは叫びました。「でも第六村から出ることは危険がいっぱいなんでしょう? 空でどうすればいいの? 危険を冒してでも見る価値あるほどすごい景色なの?はしごがなかったら、どうやってここに戻って来られるんだい?」
 勇敢な犬が言いました。「僕たちはできるんじゃないかな。勇気を持って望んだから、キリン君の上や猿君のはしごに登って、外の世界が見られたじゃないか。過去の経験から学ぼうよ」
 「でも私たちが今までにやったことが無駄にならないかしら?」。心配そうに子猫が言いました。「次の世代の動物たちは、キリンさんや猿さんが私たちを助けてくれたことを忘れてしまうわ」
 「そんなことは絶対ない!」。ちびのハリネズミがいいました。「怖気(おじけ)づいてやらないなんてだめだよ。そうしたら僕たちが今までに学んだことが、本当に無駄になってしまう。僕たちは箱から飛び出して世界を見るべきだよ。僕は飛び出して探検してみたい。そして戻ってきたら、第六村だけでなく、広い世界に貢献できるんだ。みんな、自分たちを見くびったらだめだよ」
 最後にワシが掛け声をかけました。「じゃあ、外のすばらしい世界を探検しに一緒に来るのは誰だい?」