海外の部 ABU地域 ジュニア・グループ 優秀賞
「ネットコミュニティーで共生へ」
インド サトビール・シン (23歳・男性)
 21世紀に入り、情報・コミュニケーションテクノロジーの発展によって、メディアやコミュニティーに関する概念は、これまでよりずっと大規模で具体的なものになりました。これまでにない革新的な情報テクノロジーや教育、グローバリゼーション、人々の好奇心の高まりが、私たちのニーズを変化させ拡大させてきました。常に変化する現在の環境では、これまでとは異なる視点から社会を分析する必要があります。ここでは、ソーシャルメディアの与える影響、ニーズ、そしてソーシャルメディアとコミュニティーとの関係、特に視覚障害者コミュニティーとの関係を、アクセスの観点と、テクノロジー、イデオロギー、インクルージョン(共生)の立場から分析し、ソーシャルメディアのプラス面とマイナス面に光を当てます。
 まず、ソーシャルメディアの本質、実態、社会に与える影響を見てみましょう。ソーシャルメディアは、新聞、ラジオ、テレビといったこれまでのメディアとは異なる形態のものですが、実際には全てのメディア形態を一つにしたものです。ソーシャルメディアとは、コンピュータ、モバイル、タブレットなどを介したインターネット上のウエブテクノロジーのアプリケーションであり、またその結果生まれたサービス、さらに、仲間同士で常に情報を作成し共有しあうバーチャルなグループを指します。ソーシャルメディアでは、テキスト、写真、音声、そして映像などの形式で情報を交換します。フェイスブック、ツイッター、オーカット、リンクトイン、ワッツアップ、タンゴ、スカイプなどがその代表です。eメールは極めて個人的なものであることから、ソーシャルメディアの領域からは外れると考えられていますが、多少異なるとはいえ、eメールでもまたソーシャルメディアを通じた情報交換ができます。
 手頃な価格のテクノロジー、教育の普及、都市化、そしてトレンドの変化によって、ソーシャルメディアは私たちの生活になくてはならないものとなりました。世界中で何百万もの人々がソーシャルメディアに繋(つな)がり、多数のバーチャルなコミュニティーが形成されています。情報交換のスピードとコミュニティーの規模の大きさが、ソーシャルメディアの影響力をさらに大きくしています。ソーシャルメディアは、情報や知識の取得において新しい次元を作りだし、私たちに恩恵をもたらしています。ただし、正しい情報は有益ですが、中途半端な誤った情報は危険でもあります。数カ月前、インドのバンガロールで、インド北西部の住民に対する否定的で好ましくない意見がソーシャルメディアを通じて広がり、緊張が高まりました。このことはソーシャルメディアの限界を露呈しています。さまざまなコミュニティーが、ソーシャルメディアの中で自分たちのニーズに応じたグループを形成し、自分たちの目的達成を後押しするような意見を創造するために、情報を流布したり勧誘したりすることに躍起になっています。これらソーシャルネットワークサイトの他に、グーグルやヤフーなどが提供するメーリングリストやグループメールも、ソーシャルメディアの領域に含まれます。
 ソーシャルメディアは、社会に存在するさまざまなコミュニティーに対し、多様な影響を与えています。社会におけるソーシャルメディアと視覚障害者の関係、そして両者の持つ異なる側面について考える前に、コミュニティー、特に視覚障害者コミュニティーについて検討してみましょう。
 基本的にコミュニティーは、それに属するメンバーの共通の目的、ニーズ、興味、視点を基に、他のコミュニティーに対峙(たいじ)する形で形成されます。これらの基本的な要素によって、そのコミュニティーの性格が、地域的なものか、国的なものか、国際的なものかが決まります。言葉や文化、地域的要素、生活様式、宗教、そしてカーストだけでなく、先進国か途上国かといった、それ以外の理由でもコミュニティーが形成されます。
 障害はこれまで、コミュニティー形成において重要かつ基本的な要素でした。視覚障害者コミュニティーは、視覚上の問題を持つ人々の集まりです。障害に関係したコミュニティーなので、本来はグローバルな性格のものですが、他のコミュニティーと同様、各コミュニティーの個別のニーズ、問題、目的によって、さまざまな国や地域でそれぞれ別のアイデンティティーを持っています。視覚障害者に関係する人、例えば障害者の親、専門家、支持者、その他の活動家を、視覚障害コミュニティーに含めるかどうかについては、いまだに議論が続いています。さらに、実在の視覚障害者コミュニティーを分析対象とすべきなのか、それともソーシャルメディアを通じたインターネット上のコミュニティーとして解釈すべきなのかということも考えなければなりません。実際のところ、そのどちらのコミュニティーについても分析し、テクノロジーや影響力といった観点から異なるカテゴリーを作らなければならないでしょう。ソーシャルメディアの影響を、視覚障害者コミュニティーの視点から、熟考されたものか唐突なものか、直接的なものか間接的なものか、ポジティブなものかネガティブなものかを理解することも非常に重要です。
 では、ソーシャルメディアが視覚障害者コミュニティーについて一般的に作り上げている意見をみてみましょう。ソーシャルメディアを通して視覚障害者の抱える問題を広く発信することによって、視覚障害者の側に立った意見が集まりました。これによって、視覚障害者に対する偏見が減り、視覚障害者を社会に受け入れる動きが強まりました。ただ、ソーシャルメディアによって、そうした動きがどこまで達成されたか、またどの程度成功したかについては別途検討が必要です。
 視覚障害者コミュニティーが、どのようにソーシャルメディアと繋がっているか、またそこでどのような問題を抱え、どのような役割を担っているのかを考えなければなりません。視覚障害者コミュニティーがソーシャルメディアに完全に参加する上で直面している問題には、技術的な問題と視覚関連の問題の二つがあります。
 まず技術的な問題は、基本的にはウェブテクノロジーに関連したものでアクセスの問題が中心です。具体的には現行の画面読み上げ機能と拡大レンズソフトの限界、そしてコンピューター向けアプリケーションと携帯向けアプリケーション間の非互換性が挙げられます。さらに、タッチスクリーンの技術的な限界や簡単アップデートの問題もあります。
 ソーシャルメディアは、その性質上、視覚的なコンセプトにより近く、そのため視覚障害者にとっては問題が生じています。例えば、写真についてはコメントができません。ビデオも同じです。写真は個人を識別するのに使用されますが、視覚障害者にとってはそれが問題です。自分の写真を投稿しようにも誰かに頼らざるをえません。若い女性の場合は、プライバシーも大きな問題です。
 ソーシャルメディアによってインクルージョンの機会が広がります。心の狭い人たちは視覚に障害を持つ人々と話したがりません。それは視覚障害者でも同じです。視覚に障害があるという理由で、自分から話しかけたり、他者と関わったりしようとしないのです。でも、ソーシャルメディアでは障害は分からないので両者が簡単に繋がることができます。
 ソーシャルメディアが視覚的なコンセプトを使用しているために、視覚障害を抱える人々が、自分たちだけの孤立したコミュニティーやグループを形成していることは残念です。インクルージョンのコンセプトに反します。インドのアクセスインディアなどがその一例です。
 解決策を模索する人々の不断の努力と能力によって、こうした障壁はずっと小さくなり、ソーシャルメディアの中に視覚障害者コミュニティーの居場所が確保されました。視覚障害者について社会に広がっていた以前の偏見は、ソーシャルメディアによって取り除かれました。視覚障害者コミュニティーは、ソーシャルメディアを通じて社会へのインクルージョンが実現する日を心待ちにしています。