海外の部 ABU地域 シニア・グループ 佳作
「ネットにおけるアクセシビリティの改善」
インド シュリニバサン P.S. (45歳・男性)
はじめに
 技術の発展により、私たち視覚障害者が他の人とのつながりやコミュニケーションを求める機会が多くなりました。人は社会的動物であり、それは視覚障害者も同じです。最新技術に支えられた友達づくりやその関係維持が日常になるにつれ、視覚障害者のコンピュータリテラシーに必要とされるスキル向上が差し迫った課題となっています。

ソーシャルメディアとは
 ソーシャルメディアとは、仮想のコミュニティーやネットワークの中で情報を創造、共有、交換するための革新的な交流方法と言えます。アンドレアス・カプランとマイケル・ヘンレンは、ソーシャルメディアを「インターネットに基づくアプリケーションの一群であって、ウェブの思想的、技術的基盤の上に形成され、ユーザ生成コンテンツの作成や交換を可能にするもの」と定義しています。ソーシャルメディア技術は、マガジン、インターネットフォーラム、ソーシャルブログ、電子メール、音楽共有、インスタントメッセージなど、さまざまな形態を取ります。
 このようなグループのメンバーは、ツイートやブログによって、同じような趣味や考えを持った仲間と出会い、自尊心を育み、新しい考えや技術の最先端に触れます。また、ソーシャルメディアを、人道的問題、環境や経済の問題、政治論争などに対して自らのメッセージを世の中に伝えてプラスの影響を与えるための方法と捉える人もいます。ソーシャルメディアは思考の糧となるにとどまらず、思考の過程をも形づくるのです。

アクセス向上に対するAFBの取り組み
 フェイスブックは2年にわたり、アメリカ視覚障害者基金(AFB)と共同で視覚障害者に対するソーシャルネットワーキングサービスのアクセス向上に取り組んできました。この非営利団体の代表であるカール・アウグストはブログ記事で、視覚障害者がウェブページ閲覧の際に遭遇する問題や、ウェブ出版社、ウェブ開発者、ウェブデザイナーらの協力を得てこの問題をどう解決していくかについて説明しています。パソコンユーザの大半にとって、ソーシャルネットワークへのユーザ登録は簡単なことで、プロファイルの設定、友人の検索、他のユーザのウォールやページへのコメントの投稿に長い時間を要することはありません。しかし、1ページに何百ものリンクがはられたウェブページの場合、同じことが、視覚障害者にとっては時に悪夢のような体験となることもあります。
 アメリカ視覚障害者基金はマイスペース、フレンドスター、フェイスブック、リンクトインの四つのソーシャルネットワーキングサイトを対象に調査を実施しました。評価の基準は、画面読み上げソフトの基本的なスキルを身につけた視覚障害者が独力でユーザ登録、標準プロファイルの作成、写真の投稿、グループの他のメンバーとのやり取りができるかどうかです。  そこで明らかになったアクセス上の最も大きな問題は、晴眼者の補助なしには、視覚障害者はマイスペース、フレンドスター、フェイスブック上でユーザアカウントを作成できないことでした。それは、「キャプチャ」と呼ばれる(わかり難く表現したランダムな文字列)の使用に原因があります。ユーザーは画面に表示されたその文字列を再入力する必要があります。キャプチャは「画像認証テスト」として、スパムがコンピュータシステムに入り込むのを防止することで知られていますが、残念なことに、視覚障害者も同時に排除されてしまうのです。キャプチャは無地の図形内に乱雑に埋め込まれた文字であり、視覚障害者が読み取るのは困難で、しかも画面読み上げソフトも読み取ることができないからです。
 グーグルブロガーが現在提供しているような音声形態のサービスや、視覚障害者向けの代替的な登録方法を提供しているソーシャルネットワーキングサイトはありません。リンクトインは調査した中でただ一つ、ユーザ登録の過程でキャプチャを使用していないサイトです。マイスペースやフレンドスターのようなサイトにラベル付けがほとんど、あるいはまったくされていないリンクがいくつかあることが分かりましたが、メッセージ送付、友人の追加、インターネット閲覧、編集、コメントなど他のツールのほとんどがアクセス可能であったことはAFBの調査で評価されました。

ソーシャルメディアの問題点改善
 アクセシビリティに関する問題は、キャプチャに代わる方法を採用する、ウェブインターフェース設計時に、フォームに適切なラベル付けをする、特にナビゲーションリンクとして用いられる画像の代替テキストを提供するなどの方法で、その大半は解決できます。ウェブデザインを少し変えるだけでも、世界の何百万という視覚障害者に対するアクセシビリティが向上します。実際、ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアムの一協議会であるウェブ・アクセス・イニシアチブ(WAI)は、アクセスしやすいウェブページを作成するための方法などを説明した広範囲にわたるガイドラインを提供しています。

オーディオブーへようこそ
 オーディオブーは、視覚障害者がサイトやアプリケーションを通じて音声を共有したりコミュニティーを形成したりすることを支援しています。オーディオブーは音声に焦点を当てたネットワークで、視覚障害者がこれまでできなかったような方法で他の人たちとつながることができます。また、従来のブログサイトでできないような音楽ブログの作成にも使われています。音声読み上げ、画面読み上げのような特別な機能をスマートホンやタブレットに持たせることで、視覚障害者もオーディオブーアプリケーションを使用できます。オーディオブーがソーシャルネットワークとしてすでに多くの視覚障害者に受け入れられている理由は、ユーザが簡単に音楽コンテンツを作成、共有し、聞くことができるからです。

ソーシャルメディアを活用した私の挑戦
 私にはおよそ40人のスカイプの友人がいて、パソコン上での作業の仕方を一つ一つ教わっています。アプリケーションの使い方が分からないときでも、友人にスカイプで連絡すればすぐに解決します。インドには、視覚障害者のメーリンググループが数多くあり、私たち視覚障害者の仲間がゆっくりと、しかし確実にソーシャルメディアを使い始めていることを示す確かな兆しが増しつつあります。

メディアの奇跡
 視覚障害を持つケニアの行商人サムエル・ワンブアは、トム・マクアというかつての学友とある日ばったり出会いました。そのときに交わした会話からトム・マクアはワンブアが大学を退学したことを知りました。ワンブアは特殊教育の学位取得のために勉強していましたが、2年間の課程を終えた後、金銭的な理由で働かざるをえず、退学を余儀なくされました。意を決したトムをはじめとする有志らは友人や支持者をまとめあげ、ワンブアの大学への復学目的としたキャンペーンを始めました。フェイスブックにワンブア教育基金グループを立ち上げて、ツイートやダイレクトメールのやり取りが行われ、その結果、友人たちから支援が多数寄せられて、ワンブアは復学しました。トム・マクアがケニヤッタ大学を訪れたとき、ワンブアはトム・マクアに「ソーシャルメディアが私の人生に奇跡を起こしてくれたのです」と話しました。

最後に
 ソーシャルメディアの出現は、私たちの想像以上にコミュニケーションに劇的な変化をもたらしました。ソーシャルメディアにより、コミュニケーションは瞬時で境界のないものとなりました。視覚障害者がソーシャルメディアにもっと活用できるように、ウェブデザイナーはアクセシビリティの問題を最優先課題として取り組まなければなりません。ソーシャルメディアを活用することで、視覚障害者が輝かしい未来への階段を上り、障害者も晴眼者と同じ環境を手に入れられることを祈っています。