海外の部 ABU地域 最優秀オーツキ賞
「ソーシャルメディアと視覚障害者コミュニティ」
イラン アリアスガル・アサディ (35歳・男性)

 今やインターネットを使っている人の多くは、フェイスブック、ツイッタ―、グーグルプラスなどといったソーシャルネットワークのうち、少なくとも一つには登録しているのではないでしょうか。
 そこでまず浮かぶ疑問は、私たちはそのような仮想世界にそれほど深く関わる必要があるのだろうか、ということです。
 この質問に対する答えは、そのようなウェブサイトで積極的に発信する必要性を感じるかどうかによりますが、必要だと感じるからこそ、そのようなサイトやソーシャルネットワークに登録するのでしょう。
 このようなサイトやネットワークに登録するのには、さまざまな理由があります。
 楽しむため、ソーシャルネットワークへの好奇心から、新しく友達を探すことや昔なじみと会うため、友人関係かそれとも結婚へ結びつく恋人候補を見つけるため、ネットワーク上の異なるグループに参加して興味を満たすため、孤独を避けるため、自由に考えを話し合うため…といったことがあるでしょう。
 こういった新しいサービスは、私たちの生活を全く異なったものへと激変させてきたし、今も変えつつあります。このようなウェブサイトは、信じられないほどの可能性がほぼ無料で手に入るということで、評判になりました。
 プロの歌手でなくても、何か面白いことを発信すると、あっという間に莫大(ばくだい)な数の人に自分のことをネットで見てもらえるかもしれません。
 社会活動グループは、ネット上で活動を展開することで、市民の関心を引くことができるかもしれません。社会的少数派は、ネット上で存在を示して、自分達への理解を深めてもらえるかもしれません。
そして、少数派としての障害者もその例外ではありません。
 同じように多くの恩恵にあずかることができるのです。それではなぜ、障害者はこのようなソーシャルネットワークへ参加しようとしないのでしょう。
 障害者の中でも影響力の大きな視覚障害者は、この必要性を理解し、ソーシャルネットワークにもっと参加しようとしています。ソーシャルネットワークに参加すれば、視覚障害者のことやその才能、能力を晴眼者にもっと知ってもらうことができます。
 この素晴らしい手段を使えば、ネット上で多くのグループから支援を受けたり、障害者関連のNGOとのつながりを深めて、寄付金などの経済的な支援を受けて活動を続け目標を達成したりすることによって、自分たちに必要なサービスを広く訴えたり、障害者への差別を解決するための運動を起こしたりすることができます。その活用方法は、数え上げればきりがありません。個人であれ集団であれ、ソーシャルネットワーキングによる視覚障害者のこうした目標達成や恩恵を考えると、このような機会をどうして活用しないのでしょう。
 ここで重要なのは、できる限りそのようなサイトへアクセスしやすくすることです。
 アクセスしやすくなると、視覚障害者もソーシャルネットワーキングにどんどん参加しようとするでしょう。規格を標準化して、視覚障害者がさまざまなプラットフォームや端末を使って利用できるようにしなければなりません。
 多くの人がスマートフォン、アップルの端末、ポケットPCやその他の機器を使ってフェイスブックやツイッタ―、電子メールを利用しています。これらの機器は従来のラップトップやデスクトップコンピューターに置き換わっています。ソーシャルネットワーキングサイトと携帯端末の、どちらに対してもアクセスしやすいことが必要です。
 しかし、アクセスが容易なネットワーキングサイトとこれらのサイトへアクセスするのに必要なアプリケーションがあるだけでは、必ずしも視覚障害者が晴眼者と同じように情報を簡単に入手できる訳ではありません。専門の企業などが作るスクリーン読み上げソフトも、ウェブサイトの変更に合わせて常に最新の状態にしなければなりません。変更によってアクセスしにくくなったり、まったくアクセスできなくなったりするウェブサイトやアプリケーションがあるのも事実ですが、ほとんどの場合は変更後にはアクセスが向上します。例えば、変更後にマイクロソフトやアップルの製品はアクセスが向上し、逆にフェイスブックの新しいサイトのデザインやヤフーメールのサイトはアクセスに問題が発生しました。スクリーン読み上げソフトに対応したインターフェースであれば、とても助かります。
 一方で、コンピュータを使う視覚障害者はネット上のウェブサイトを利用するために十分な知識を持っている必要があり、スクリーン読み上げソフトの機能を存分に発揮して効率的に使えるよう備える必要があります。そうすればアクセスの問題はなくなるか、少なくとも軽減されるでしょう。視覚障害の問題に取り組んでいる機関や組織・NGOは、ネットワーキングの可能性を正しく理解し、自分たちのリンクやサイトをいろいろなソーシャルネットワークサイト上で共有し、自分達のウェブページを作って、その活動や会員の最新情報をユーザーに提供しています。
 ではここで質問です。ネットワーキングは視覚障害者にとって、その他にも恩恵があるでしょうか。もちろん答えは「はい」です。
 視覚障害者たちが晴眼者の友達や家族・仲間にネットワークサイト上の自分たちのホームページを見てもらい、そこから視覚障害者の他の情報源にいってもらうことができれば、視覚障害や視覚障害者に対する固定観念を変えることができるでしょう。これまでは、少数派の声や叫びを社会に届けるには、多くのお金を使って社会の意識を高めたり、各種の媒体に広告を出したり、デモ行進やジョギングといった人目を引く行動を起こしたりするしかありませんでした。でも今は、視覚障害者もソーシャルネットワーキングを使って、社会の一員としていろいろなことができます。
 こうしたことも、ソーシャルネットワーキングサイト上でまったくお金をかけず、あるいはほんのわずかの資金でできる上に、このようなウェブサイトは多くの人が見るので、今までの方法よりもはるかに効果的です。
 ボランティアや賛同者を募ったり、寄付を集めたりすることもできます。だから、より良い方向へ変えていくためには、このようなサイトで積極的に発信することが、視覚障害者の義務といっても間違いではありません。
 アクセスできないソーシャルネットワーキングサイトに対しては、アクセス可能なサイトからサイトのオーナーに改善を促すことができます。また、そうしたサイトにアクセスする必要がある人に配慮した法案を通すよう、政府に働きかけることもできます。
 また、こうした新世代のメディアを使えば、運動を起こして注目を集めることによって公共の場所へのアクセスを向上させることもできます。つまり、これは不可能を可能にする新しい方法で、この方法を快適に使いこなすスキルは、身につけるだけの価値があります。すべての人の願いを叶える新しいツールです。
 さあ、ためらっていないで、皆でこのツールを使いましょう。