海外の部 WBU-NAC地域 シニア・グループ 佳作
「点字は死んだ? 点字よ、永遠なれ!」
アメリカ リサ・ラージェス (48歳・女性)
 点字の継続性や視覚障害者への点字教育の実用性について、一部で議論が進んでいます。点字書籍はかさばる上に制作費も高いと点字反対者は言います。また、特殊な文字の組み合わせである点字コードは、複雑で地味な暗記作業が必要です。さらに、デジタル技術の発達によって、点字はまるで黒板に手書きしたり数字を書いたりするのと同じように、時代遅れになってしまったのではないでしょうか。
 6歳の頃、私は点字が大嫌いでした。クラスメートがツルツルの印刷本を使って読む勉強をしているのに、私は大きくてみっともない点字版と格闘していたからです。子供なら誰でも、人と違うのは嫌がるものです。私だけが他の友達と違う。点字はそのことを象徴しているように思えたのです。
 でも、2年後の8歳のときのことでした。自宅で大嫌いな読書の課題にしぶしぶ取り組んでいたときに、突然、自分が読書嫌いだということを忘れてしまったのです。物語に引き込まれ、登場人物達がこれからどうなるのか知りたくなりました。物語の展開を知る方法は一つ。読むことです。突如として読書が楽しくなりました。点字も思ったほど悪くないなと思いました。
 それから間もなく、点字はただそれだけではないということを知りました。点字で言語を学びました。単語が結びつくと単にそれぞれの単語の寄せ集めではなく、文章になるということを教えてくれたのは、点字です。点字を通して、文法や句読点、構文などの謎を解くことができました。コンマをどこに付けるか、段落をどこで始めて、どこで終わらせればいいか、構文はどうなっているのか。こうしたことの答えを教えてくれたのは、点字です。
 点字によって私は言葉の魅力に取りつかれました。高校生のとき、『メリアム・ウェブスターズ カレッジエイト英英辞典』の点字版36巻を売りたいという広告を見ました。その場でほしくなりました。すぐに電話をして、辞典はまだ売れていないということを聞いたときは天にも昇る気持ちでした。値段は350ドル。一つのものを買うのに、それほど高い金額を支払ったことはありませんでした。当時の私の貯金とほぼ同じ金額だったのです。
 それでも、何箱もの辞書が届いたときはワクワクしました。それを収納する専用の本棚を祖父が作ってくれました。大学にも大学院にも持っていきました。卒業して初めて住んだアパートにも持っていきました。それから数年後、ついに次の引っ越しの時には手放そうと決め、遠くに住んでいる女性に譲りました。辞書が自宅に届いたとき、その女性は私に電話をかけてきてくれて、辞書を受け取って本当に嬉しいと言ってくれました。彼女の気持ちは私にも十分わかりました。
 子供の頃に読書の楽しさに目覚めたとき以来、たくさんの変化がありました。技術の進歩によって、私を含む視覚障害者にはあらゆる可能性が開かれました。今では、読書にはほとんどデジタルオーディオ機器を使います。本棚一つ分の本をiPod Touchにダウンロードして、服の後ろのポケットに入れて持ち歩いていマす。部屋全体を埋め尽くすほどの量の点字本が、今では小さなメモリーカード やサムドライブに入るのです。
 でも、デジタル時代でも点字は利用されています。幸運にも私は点字ディスプレイを持っています。それをワイヤレスでノートパソコンやスマートフォン、そしていつも手放せないiPodにつなぐことができます。ウェブサイトや文書、電子書籍をスクロールすると、私の指の下で点が踊り、盛り上がり、平らになり、形を変えていきます。ほんの数年前までは手に届かなかった知識や情報を、今ではこんな素晴らしい方法でも入手することができます。
 しかし、こうした優れた技術があったとしても、もし点字を読むことができなければ、私の人生はもっと貧相なものだったでしょう。点字の情報伝達は、オーディオほど容易でもなく効果的でもありません。でも、点字を通して、今でも構文の豊かさを学んでいます。それだけでなく、点字のおかげで文学の素晴らしさを堪能しています。気になった箇所で指を止め、一つ一つの言葉の意味をかみしめることができるからです。
 言葉やコミュニケーションについて点字を読んで学んだことは、単なる楽しみ以上のことを私に与えてくれました。そのおかげで、私は地域社会の一員として貢献できるようになりまし。仕事で発表をする機会がよくありますが、パソコンで資料を作り、点字ディスプレイを使って見直し、点字エンボッサーを使ってハードコピーにします。これは一例ですが、このようにして私の点字を読むスキルと新しい技術を組み合わせています。
 点字をはじめとするいろいろなもののおかげで、私は読書の喜びを知り、知識と情報の世界へと導かれました。「点字は死んだ」という人がいるかもしれません。でも私は「点字よ、永遠なれ!」と言いたいです。