海外の部 EBU地域 最優秀オーツキ賞
「政治、文化、経済、社会、家庭生活への
視覚障害者の参加を向上させる点字の役割」
スペイン マリア・ヘスス・カニャマレス・ムニョス (49歳・女性)

 こんにちは、みなさん。私の名前はブライユ(点字)です。あなたは? 私のことを説明させて。私の父はフランス人でルイというの。父が視力を失ったとき、私を創るしかなかったの。父は私に命を吹き込んでくれたわ。そして私は父の生活を一変させたのよ。悲しいことに父はずっと前に亡くなってしまったけれど、私は不死身なの。笑わないで。私は決して死なないわ。だって、本当の人間じゃないんだもの。私はね、システム、記号なの。あなたはいろいろな意味で私を必要とするわ。なぜかって?私を信じてないの?きっと私はあなたの生活を一変させることができるわ。社会的にも、政治的にも、文化的にもあなたの状況を改善できるの。あなたが望むなら、私はあなたの親友になれるわ。
 だれが言ったのかしら。見えない、聞こえないという理由だけで視聴覚障害者は何もできないって。手があるし感じることだってできるわ。そう、ほらね!その手の中に世界があるのよ。そう、その指先に!私と一緒に来て。自分自身で確かめてちょうだい。私に触れてみて。その紙の上にいるから。
 わかっているわ。触ってみるとポツポツしていて不愉快だってことは。だけど我慢して。期待していてね。小さい六つの点。これで、あなたが学ぶすべてのアルファベットを表すことができるのよ。それから安心してね。目が見えて耳が聞こえるからといって、それだけであなたより優れているってことじゃないのよ。さあ、始めましょう!前に学校で私のこと聞いたことがあるでしょう。ここよ。机のところに座って。必要なものは手の届くところに置いてね。
 点字盤と厚手の紙と点筆を用意してね。先生の話をきいて。規則に従って小さな四角のなかに点を打ってね。右に1、2、3。左に4、5、6。これだけよ!パーキンスブレーラーという6点式タイプライターがあればもっといいわ。反対方向にタイプすれば、読むときに紙をひっくり返さなくてもいいの。パーキンスブレーラーでは点字は逆に進むのよ。いらいらしないで!落ち着いてね。すぐにこつがつかめるようになるから。そうすれば楽しくなるわよ。触覚を使うことに慣れるのが難しいのはわかるわ(触覚が発達している人はあまりいないわ)。文字の形を区別して、くっついている行の間の違いを感じるのは大変よね。忍耐が肝心よ。あなたにはすばらしい先生がついているわ!
 クラスメートはどんなふうに読んだり書いたりしているの?すごいわ。あなたも読んだり書いたりできるわ。学校に上がる前に、初めて本を読む子供みたいよ。段々と上手に、そしてもっとスラスラ早くなるわ。
 さあ、次は何かしら?道のりは長いわ。目標を達成するには勉強しなくては。私はどこにでもいるわ。本の中にも、手紙にも、ラベルの上にも。大学へ行くこともできるし、学びたいことなら何でも学べるのよ。あなたと同じ問題を抱えている人を知っているわ。今では薬を買ったり棚から薬を持ってきたりするときに、もう間違えることはないのよ。スーパーで間違った品を受け取ることもなくなるし、誰かに聞かなくてもいつも正確な時間がわかるようになるわ。だって、私がずっと時計の盤面にいるもの。間違うことはないわ。エレベータのボタンを押して、自分の行きたい階に行けるのよ。役所のお偉いさんにだってなれるかも。
 あなたが大人になったら選挙で投票することもできるわ。なぜって、私が投票用紙の上にいるからよ。あなたが誰を支持しているかを誰にも知られることはないわ。
 さあ、たくさんの驚きに満ちた世界が広がっているわ。私と一緒に探しに行きましょう!
 月日の経つのは早いわね。私たちはもう20年以上も一緒にいるわ。あなたは一生懸命勉強して学校を卒業し、輝かしい未来のある大人の男性になったわ。私は今もあなたのシステムよ。読み書きやコミュニケーションするときの記号。そう、あなたの忠実な生涯の友人よ!
 あなたを外の世界へ連れ出して学ぶお手伝いをしたからって、私にお礼を言う必要なんてないわよ。私の方があなたにお礼を言わなくては。どこに行くときも私を一緒に連れて行ってくれて、私のことをみんなに話してくれて。私のことを嫌いな人が私を追い出そうとしたときも必死で守ってくれて。あなたが中学2年生だったあの日のことを覚えているわ。先生が「システム」という言葉はたくさんの意味を持っているって説明したわよね。状況によって様々な違った意味になるって。
 先生が生徒に「システム」という言葉の様々な意味について、どれだけ知っているかを確認するために作文を書くように言ったわ。書き終わった作文を先生が生徒に声に出して読むように言ったわよね。あなたの番がきたとき、あなたは最も優れたシステムは私、ブライユ点字だってはっきりと言ったわ。クラスメート達の顔といったら見ものだったわ。ひそひそとささやいたり、ぶつぶつ言ったり。使う必要がないのだから理解できないわよね。あなたにとってブライユ点字がどんなに重要なのか。
 あなたはとっても大切な人だということを、先生は生徒に穏やかに、そして上手に説明したわ。豊富な知識を活用してとても筋の通った根拠を示したわ。先生の話を聞いているだけで、点が紙の上を跳ね回り、楽しそうに踊りだしたの。そして、その日からクラスのみんながもっとあなたのことや私との体験を知りたがったわね。作文で最高点をくれたのはその先生よ。私は、作文の下に10点満点中9点と点字を打ちこんだわ。誇らしかったわ。
 コンピューターでブライユ点字を使うとき、あなたのことを本当に誇りに思うのよ。携帯電話であなたと遊ぶときも。計算機でまったく間違えずに計算をずっとし続けるときも。こうした最新の機器はすべて基本的にブライユ点字を使っていて、その点字を基にしていろいろな機能が提供されているのよ。
 だから、あなたにお礼を言いたいの。いつも私を生活の中で使ってくれて。さっき話したけど、あなたが子供の頃と比べると、生活はまったく変わったわよね。
これからもずっとあなたが幸せでありますように!