海外の部 ABU地域 ジュニア・グループ 優秀賞
「ごめんなさい、ハーニー」
レバノン ナスール・バロート (20歳・男性)
 このつつましい家族は、最初の子供が生まれてくるのをずっと楽しみにしていて、すべては順調に行き、ハーニーが生まれました。 家族全員がハーニーの誕生を心から祝福し、歓喜に包まれましたが、残念なことに、つらい現実が明らかになりました。ハーニーは生まれつき目が見えなかったのです!喜びは厳しい当惑へと変わりました。でも、ハーニーの現状と運命に対する家族の恐怖は、解消されました。レバノン政府が最近、障害のある人々の生活を改善するための一連の対策を実施してきたためです。
 ハーニーが3歳になったとき、家族は彼の最初の人生の岐路に関して激しい議論を交わしました。彼の父親は、ハーニーを視覚障害者の面倒を見る専門の施設に送るのが、彼にとって一番いいのだと提案しました。これらの施設は 、視覚障害者を育て教育し、彼らの特別な要件を誰よりも理解しているのだ、と彼は言いました。
 でも、この提案はハーニーの母親から猛烈な反対を受けました。母親は彼女自身が誰よりも、ハーニーが成長し学習する過程で、彼を育て安心を与えられる一番の存在だ、と考えていました。ハーニーの父親は頑固に自分の考えを曲げず、状況はさらに複雑化していましたが、彼はまもなく、政府が新しく採決した法案により、視覚障害者が特別な施設に行かずに普通の学校に行く権利が保証されているのだ、と気が付きました。
 それはまさに母親が望んでいたことだったのです!  彼女の意見は圧倒的な影響をもたらし、ハーニーは目が見えるクラスメートとともに、一般の学校に通学しました。そして、彼の本当の教育が始まったのです。
 ハーニーの人生の岐路において紆余曲折はあったものの、レバノンの高等教育省と関係する協会が協力して、学校教師、学校経営者、全議員の教育を行ったために、ハーニーは学校教育を受けることができました。これらの教育の目標は、視覚障害者が健常者と同レベルの教育を受ける権利を保証することでした。
 何年も経ち、ハーニーは大学で何を専攻するかを考える時期となりました。彼は何でも好きな科目を選択できると知っていたので、彼の野心を満足させる専攻を選択しました。
 実際、ハーニーは無事大学に入学し、情報学を専攻しました。3年後、彼は大学を卒業し、彼の大学の友達と同様、適当な仕事を探し始めました。就職活動の後、彼は新聞社で働くことになりました。
 この会社でハーニーは、懸命に忠実に働き、彼の同僚よりも優れた仕事をすることが、たびたびありました。 彼は心から自分の仕事を愛しました。当然ですよね。職場でのハーニーのすべての権利が守られ、高く評価されていたからです。
 ハーニーが差別にあうことは皆無で、そのかわり、彼はさまざまな社会、医療サービスを受けました。何よりも、彼がほかの人とは違う扱いを受けることがまったくありませんでした。
 ハーニーはさまざまな業務に没頭し多忙でしたが、同時に魅力的な同僚のナディアに出会い、後に彼らは結婚しました。 結婚生活の中で、ハーニーが家族を持ち、適切な住居を探すにあたっても、障害に直面することはありませんでした。というのも、政府がそのような問題に関連するあらゆる基本的権利を保護していたからです。
 それに加えてハーニーは、彼自身の政治的見解を持ち、投票にも熱心に参加しました。レバノンの内務省が適切な施設や装置を提供したおかげで、ハーニーはいつでも好きなときに政治に関与することができました。
 また、ハーニーは新しい本を読んだり、閲覧することが好きでした。図書館は行きやすく、情報を収集するのも非常に容易だったので、ハーニーは1人で図書館に行き、本を読んだり、インターネットを使ってウェブサイトで調べものをしたりしました。ハーニーは図書館で読書をするのに点字を使い、インターネットに接続するには読み上げスクリーンリーダーを使いました。
 万歳、これこそが人生です。豊かで、簡単で、快適な人生です! ハーニーは何一つ不自由なく育ちました。彼は揺りかごから墓場 まで、全人生において至上の幸福と安心以外の何も経験しませんでした。
 でも、残念ですが、この話が現実的になるには、一つのことが欠けています。レバノン政府は障害者のための国際協定に署名するべきでした。そうでなければ、ハーニーの人生は非常に単調なものになってしまいます。
 ごめんなさい、ハーニー!
 政府がすべての生徒が平等な教育を受けられる総合的な教育規律を是認しなかったために、あなたは「福祉施設」と呼ばれる場所で勉強するように運命づけられています。
 ごめんなさい、ハーニー!
 あなたの教育の道はいばらのとげでいっぱいで、多くの困難に遭遇するでしょう。学校はあなたがほかの生徒と同じ教育を受けさせるのに、十分な準備ができていないからです。
 ごめんなさい、ハーニー!
 残念なことに、あなたの望みに見合うきちんとした仕事に就くことは不可能でしょう。聞いてください、ハーニー、あなたの国では特に障害者のために、労働法に基づいて実施できるはずの最低限のことも是認されていないのです。
 本当にごめんなさい!
 あなたの趣味である読書を楽しむために、1人で図書館に行けるなんて夢にも思わないでください。あなたが使えるようには、道路も図書館も整備されていないし、点字本なんてどこにあるかわかりません。
 それからハーニー、あやまることはこれだけではないのです。ごめんなさい、ハーニー、現時点でレバノン政府は、障害者の権利に関する条約を是認していないのです。