海外の部 ABU地域 最優秀オーツキ賞
「二ューテクノロジーに置き換えられない視覚障害者のための点字」
インド テジ・シン・タク (66歳・男性)

 コンピューター、CD、カセット、iPod、携帯端末等のニューテクノロジーは、主に聴覚に依存しています。点字は触ることで、視覚障害者が文字を読めるようになります。聴くことと見ることの違いは、点字とニューテクノロジーで使用される媒体を比較するのに似ています。点字は誰もが使えますが、ニューテクノロジーは裕福でないと入手できません。人、社会、国が裕福であればあるほど、機器の利用が容易になります。点字は単純な技術があればできますが、ニューテクノロジーは発達した科学機器を必要とします。点字は、裕福な人でも貧しい人でも、子供でも老人でも、僻地の村々でも大都市でも、誰もが普通に使えます。電気の供給のないところで、ニューテクノロジーに何ができるというのでしょうか。
 全宇宙は五つの主要な要素で構成され、これらの五つの要素の特性は、目、耳などの感覚器官の能力と同調しています。聴覚は空間の特性と関係しています。全ての言語は単語に基づいているので、すべての知識も単語に組み込まれています。知識は精神を集中させて単語の意味が得られたときに初めて、意味を持つのです。しかし精神は、生来不安定にできています。したがって、聴覚だけに頼って一つ一つの言葉の意味にたどりつくのは困難です。目的を持った点や線の助けを得ることで、意味を確定することが容易になります。だから、書き言葉というのはより役に立つのです。
 私たちは、聴覚や視覚という手段を通じて言葉を理解します。言葉を書くことは、実際のところ、目でその言葉を理解することにつながります。点字の場合には、触覚が目と同じ役割を果たし、 私たちは聞くだけではなく、触ることで言葉を理解できるようになります。
 点字をニューテクノロジーに依存する手段と置き換えるのは不可能です。その理由を以下に説明します。
 1.体系的な知識:体系的に得られた知識は、安定しています。 アルファベットのサイズ、順番、アルファベットの組み合わせ、二つ、三つ、それ以上のアルファベットの組み合わせや言葉をつなげた文などを体系的に習うことができた場合にのみ、アルファベットについての知識が可能になるのです。聴覚に依存するニューテクノロジーを使用した手段で得られた知識は、こうした側面には焦点が当たらず、あらかじめ決められた方法でいきなり教えられることになります。
 2.見直しの便宜:学習中に邪魔が入ったり、内容が理解されていない場合に、同じ内容を繰り返し学習することは、どんな科目でも必要です。繰り返しは必要な作業ですが、聴覚に依存する手段の場合には、やり直しが可能でない場合も多くあります。聴覚的な手段の場合には、学習内容が理解されていない場合であっても、繰り返しがされない場合があります。その原因としては、まったく同じ内容に戻ることができないとか、または単に面倒くさいために繰り返しを省略してしまうからです。点字の場合には、単語や行を好きな回数だけ戻って読み直すことが可能です。
 3.正確なつづり:発音が正しくされない場合も多いために、正確なつづりの知識を得ることは不可能と言っていいでしょう。したがって、アルファベットの細かい違いを理解するには、点字で読むことが必須となります。
 4.場所による発音の違い:つづりが同じである単語であっても、場所によって発音が異なります。アメリカ人、イギリス人、インド人はそれぞれ同じ言葉でも違った発音をします。したがって、異なる場所に住む人が聴覚だけに頼って正確なつづりを理解するのは、比較的難しいのです。でも、点字ではそのような問題は起こりません。
 5.句読点の知識:カンマ、ピリオド、コロンなどの句読点、区切り記号は、話の内容を理解するのに役立ちます。視覚障害者は点字を使って読むことで、聴覚ではじゅうぶんではない、これら区切りの知識を得ることが可能です。
 6.正確なページ位置:手紙や申請書には、日付や住所などを書く所定の位置があります。論文を書く場合には、左隅、右隅、ページの中央など、主題や副題を書く所定の位置が決まっています。これらの知識は CDを聞いただけでは得られないため、点字が唯一の有益な手段です。
 7.困難な時にも役立つ:点字は日夜いつでも好きなときに読むことができます。特に、慢性疾患に苦しむ高齢患者、不眠症に悩む患者、年をとっていてあまり睡眠時間を必要としない人などに点字は役立ちます。その他の手段の場合には、電気と電気代を必要とし、深夜などに使用した場合には、家族に迷惑をかける場合もあります。
 8.信頼性:目が見える人は視覚だけを信じて、聴覚と触覚に頼るという方法を信じられないかもしれません。同様に視覚障害者は、聴覚との比較では、点字を読むことにより信頼をおきます。彼らの視覚能力とは触覚によっているためです。
 9.高齢者がニューテクノロジーを習得する困難:若者や子供がニューテクノロジーに慣れるのは簡単かもしれませんが、高齢者は目が見えていてもいなくても、ニューテクノロジーを習得することを避けようとする傾向があります。技術を習得してもメリットが無いと考えるからです。
 10.エネルギーを与える点字:点字を使う高齢の視覚障害者と点字を使わない高齢の視覚障害者を観察する研究を行えば、点字を使う視覚障害者の方がより精力的で、幸福であるという結果が出るに違いありません。というのも、彼らは自分たちが持つ最善の能力を生かして本を読むのに時間を費やしているためです。点字を使わない視覚障害者は悲観的で、人生に不満を持ち、心が不安定でしょう。
 11.点字を通した独立心:点字は勉強中にメモをとったり、教師として教え、テストを採点したり、銀行や郵便局の口座のお金を管理したりと、様々な局面で満足感を与えます。点字を使えば、冷蔵庫の中にある食べ物も管理できます。これらはニューテクノロジーを使っても行えるかもしれませんが、点字を使ったほうがより独立心が生まれます。
 12.当事者意識:ニューテクノロジーの使用者と点字の使用者との違いは、視覚と聴覚の違いと似ています。聞くだけでは、点字を使ったときほど理解を高めることはできません。点字を使う事で、聞くだけとは違った当事者意識が生まれます。
ニューテクノロジーにしても点字しても、どちらにも限界があります。ただ、ニューテクノロジーが依存的であるのに比べ、点字は独立心を育てます。ニューテクノロジーで使用される機械は目や耳に悪影響を与えますが、点字ではそのような障害はありません。実際のところ、点字を使うことによって触覚が増進されるため、その能力は人生のその他の分野で役立つことでしょう。
 ニューテクノロジーは時が経過するにつれて、古くなります。以前はオーディオカセットが非常に役に立ちましたが、現在ではCD が使われるようになり、将来は別のものがCDに取って代わるかもしれません。しかし、点字の場合はそのようなことはありません。 ニューテクノロジーと点字は、遅くても確実な亀が競争に勝つ、「ウサギと亀」の話に、ある意味似ているかもしれません。
 以上のように私の見方では、視覚障害者にとって点字は、ニューテクノロジーに比べ、はるかに重要だと思います。