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 OMF(ONKYO Micro Fiber)コーン

はじめに

スピーカー振動板はその材料が音質に大きく影響することから、これまでに多くの振動板材料が開発されてきました。
振動板材料の変遷を簡単に追ってみると、初めに木材パルプを抄造したいわゆるコーン紙、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂振動板、炭素繊維やアラミド繊維等の繊維材料を熱硬化性樹脂で成形した繊維強化樹脂振動板、最近では、ホヤ等の天然成分とパルプを組み合わせたバイオ振動板と次々新しい振動板材料が開発されてきました。

現在よく使われている振動板材料は、木材パルプを使ったパルプ系材料、ポリプロピレンなどの合成樹脂を使った高分子系材料、炭素繊維やアラミド繊維などの繊維と樹脂からなるコンポジット系材料の3つに大きく分けることが出来ます。
パルプ系材料は軽くて適度な強さと内部ロスが有るために、従来から振動板材料として長く使われてきています。高分子系材料の内部ロスはパルプ系よりも大きい反面、強さはパルプ並で、比重がパルプより大きいために振動板は重くなります。コンポット系材料はパルプ系材料よりも桁違いに強い(弾性率が高い)反面、内部ロスはパルプ系には劣ります。
従来のパルプ系・高分子系・コンポジット系振動板は、音場感や拡がり感という音の空間を忠実に再現するという点については何れも十分に満足できるレベルではありませんでした。特に高分子系・コンポジット系では弾性率が高くスピード感には優れる反面、材料固有の音色によりソースが色付けられてしまうことが多く、より忠実に再生できる振動板材料が求められていました。
理想の振動板
【開発コンセプト】

このような背景から、私たちは「音場感」「自然な広がり感」「心地良い響き」という3つの目標を掲げ、新たな振動板材料の開発に着手しました。

OMFダイアフラム

「音場感」「自然な広がり感」「心地良い響き」という3つの目標を満足する材料とはどのようなものなのでしょうか?
目標の音質イメージを従来の振動板材料の音質からイメージすると、コンポジット系のスピード感(弾性率)、高分子系のS/Nの良さ(内部ロス)、パルプ系のナチュラルな音場感(弾性率と内部ロスの適度なバランス)という今までの材料それぞれの良い所をうまくバランスさせる材料、それが目標を実現する振動板材料であると私たちは考えました。具体的にはパルプ系のような天然の素材と、コンポジット系・高分子系のような合成した素材をうまく組み合わせることから開発が始まりました。

OMFダイアフラムは、このような発想から開発した振動板材料で、シルク繊維・コットン繊維などの天然繊維をベースに、少量の樹脂で固定し、更に約1/1000ミリの大きさの微細なマイクロフィラー(添加剤)を組み合わせた振動板材料です。繊維の種類や積層、フィラーの種類・形・大きさ、樹脂の硬さなどを変えて組み合わせることにより、振動板物性を自由にコントロールすることが出来ます。
パルプ系のナチュラルな音場感、コンポジット系のスピード感、高分子系のS/Nの良さという今までの振動板材料の好ましいところをすべて実現しており、スピーカーの用途に合わせた音質を実現できる、まさに理想的な振動板材料と言えます
OMFダイヤフラム
【OMFダイヤフラム】

シルク繊維


シルクは繭を作っている繭糸をほぐしたもので、その組成は主にフィブロインとにかわ質のセリシンから構成されています。
私たちが知っているシルクらしい光沢と触感は、この繭糸の表面を被っているにかわ質のセリシンを取り除くことによって初めて得られます。
シルク繊維は振動減衰が緩やかであるために余韻が有り、基音・倍音・三倍音の振動のスペクトラムが明瞭に分離するので、雑音となる中間の振動が少ないことから、古来、琵琶・琴・三味線・胡弓・蛇味線等の和楽器の弦として使われています。このように、古来シルクは響きの優れた材料として使われていました。
シルク繊維の断面
【シルク繊維の断面】

シルク繊維
【シルク繊維】

セリシンを徹底的に除去したピュアなシルク繊維はパルプ繊維と比べて非常に細くかつ長いため(直径:約10ミクロン、長さ:約1500m)、OMFダイアフラムの基材として使用すると、響きの良い繊細な音質が大きな特徴となっています。


コットン繊維


コットンは綿とも木綿とも呼ばれ、ハイビスカスや芙蓉と同じアオイ科の一年草で美しい花を咲かせます。開花後50〜60日ほどで青い実が大きくなり、やがてはじけて白い繊維があふれでます。この白い綿の実(種)を「コットンボール」 と呼びます。
コットン繊維は綿の種に生えた繊維で、種の表皮細胞が細長く生長したものです。

コットンボールから、綿摘み(コットンボールから綿を採る)→綿繰り(種取り)→綿打ち(綿の繊維をほぐす)→糸紡ぎ(繊維によりをかけて糸にする)の工程を経てコットン繊維になります。
人とコットンの付き合いはとても古く、メキシコのテワカン渓谷からは、紀元前5,000年の綿花が、またパキスタンのインダス河下流域では、紀元前3,000年の綿布の切れ端が発掘されています。
日本では、799年に三河の国に漂着したインド人によって綿の種がもたらされ、本格的に綿の栽培が始まったのは1494年(室町時代中期)と言われています。
コットンボール
【コットンボール】

コットン繊維断面
【コットン繊維の断面】

コットン繊維
【コットン繊維】


コットン繊維は、綿の種の表皮の細胞が、細長く成長したもので、長さは、20-25ミリ、太さは、15-24μmです。左の写真にもありますようにコットン繊維の真ん中は中空になっていて、形は偏平になっています。

また、綿繊維には1cm当たりに数十回のねじれ(天然撚り)があります。

衣料用途ではこのような繊維の形が、綿繊維の含気性・柔軟性・可紡性(紡績しやすさ)を高めているといえます。

OMFダイアフラムの基材としてコットン繊維を使用すると、コットン繊維のねじれ構造による弾性率の大きさ、中空構造による軽量性、ナチュラルな音質が大きな特徴となっています。



シルクOMF(ONKYO Micro Fiber)振動板

シルクOMFダイアフラムでは、このピュアな超極細のシルク繊維の特徴をさらに生かすために、繊維を一定方向に揃うように繊維方向をコントロールし、振動板内をよりスムーズに振動が伝わるよう配慮。この方向を揃えたシルク繊維を緩く絡ませて布を作り(不織布)、ピュアなシルク繊維不織布を繊維の並ぶ方向をずらせて何層も重ねたものを基材としています。
スピーカーとして使用するユニットの口径によって、強度が必要な場合は、基材となるシルク繊維不織布層の層数を増やしたり、より強いアラミド繊維などの不織布の両側からシルク繊維不織布でサンドイッチする事で適度な剛性が得られます。更に、コーン形状にするために熱硬化性樹脂を両面からバインドして成形します。

シルクOMFの構造

この時、微妙な音色を調整するために、樹脂の中にマイクロフィラーと呼ばれる1千万分の1程度の大きさの微細なパウダーを加えます。また、樹脂の流れと樹脂量を最適化するによってシルク繊維の良さが引き出され、微妙なニュアンスの調整が可能となります。
シルクOMFダイアフラムでは、ボイスコイル周辺部の強度を上げるため、コーン形状をコントロールし、不要な共振を抑え、ダイナミックレンジの拡大と歪みの低減を図っています。
また、幾重にも重ねたシルク不織布を使っているために、樹脂でバインドされた状態でも、シルク繊維同士や不織布の層同士のズレが起こり易くなり、従来のプラスチック系やコンポジット系に比べて、強さと内部ロスが高い次元でバランスされました。

シルクOMFダイアフラム断面の層状構造は、パルプ系の振動板の断面構造(紙層)と非常に類似した構造で、軽量で内部ロスが増加し易い構造となっています。 層状構造と、樹脂・マイクロフィラーを適度な割合で組み合わせることで、和楽器の弦にも使われているシルク繊維の響きの良さをさらに引き出すことができ、従来の高分子系やコンポジット系では達成することが不可能であった「音場感」「自然な広がり感」「心地良い響き」という3つの目標を達成することが出来ました。 シルクOMFダイアフラム断面


シルクOMF振動板の物性

OMFダイアフラムの物性を従来から有る振動板と比較したのが右の図です。

OMFダイアフラムは構造的には従来から有るコンポジット系に近いものですが、大きく異なるのは、コンポジット系のように単に弾性率が非常に大きい繊維と硬い樹脂の組み合わせたものでは無く、繊維・樹脂・マイクロフィラーを組み合わせたものであることです。

振動板の強さは、ほぼ繊維の弾性率と構成(多層)に比例して大きくなります。また、内部ロスは樹脂とマイクロフィラーの種類と添加量でコントロールできます。

OMF/従来の振動板比較グラフ
【OMFダイヤフラムの物性】

たとえば、弾性率が非常に大きい繊維(カーボン繊維、アラミド繊維)等と、天然繊維(シルク繊維、コットン繊維)のようにパルプ系に近いさほど弾性率が大きくない繊維を薄い布にして重ねたものを基材にすれば、コンポジット系とパルプ系の中間の弾性率を持ったOMFダイアフラムを作り出すことが出来ます。
また、コンポジット系に使われる硬い樹脂に、高分子系のように柔らかい樹脂を混ぜるとパルプ系以上の内部ロスのOMFダイアフラムを作り出すことが出来ます。
このように、OMFダイアフラムは、従来の振動板材料と比較して物性のコントロール範囲を飛躍的に広げることに成功した画期的な振動板材料です。
OMFダイアフラムは、私たちの目指す「音場感」「自然な広がり感」「心地よい響き」の目標を実現するコンセプトであり、構成材料にとらわれずお客様の要望に答えるべく日々進化しています。

 

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