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プロがプロに聞く経営の話
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 「安値日本一への挑戦」の二代目が、いま語る創業者の背中
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Guest   株式会社コジマ専務 小島章利
Host オンキヨー会長 大朏直人

理年商三千億円突破で家電量販店業界トップに躍り出たコジマ。
現在、専務取締役を務める二代目から見た父・創業者の存在とは?
創業者と二代目が、事業承継の本音を語りあう。

大朏会長

大朏直人(おおつき・なおと)氏

1941年東京生まれ、56歳。
65年3月、駒澤大学文学部卒。同年4月、ラジオ部品メーカーに入社後独立。電子機器製造の日本電通 を設立、社長に就任。85年、自動車部品メーカーの丸八工場(現在のテクノエイト)の再建を契機に、4社の再建に成功。93年6月に東芝傘下のオンキヨーを個人で買収、1年半で黒字経営に転換した。現在、12社の企業集団を率いる。

小島氏

小島章利(こじま・あきとし)氏

株式会社コジマ専務取締役営業企画本部長
1963年栃木県生まれ。87年、東海大学政経学部経営学科卒業。同年、コジマ入社。上三川店、東店主任を経て、89年システム室室長。90年取締役。91年情報システム本部長。93年営業企画本部長。95年常務取締役。98年6月専務取締役。



『末は電機屋』を叩き込まれる

大朏 まずは、家電業界トップの年商三千億円突破、本当におめでとうございます。まさにコジマさんのキャッチフレーズ、「日本一」を達成されたわけですが、いまのお気持ちはいかがですか?
小島 ありがとうございます。実はあの「安値日本一への挑戦」という言葉、定款に入っているんですよ。
大朏 それは、素晴らしいですね。
小島 定款ですから、全社員に根付いています。私など、小学生の頃から父に作文を書かされましたよ。「日本一安く売る店」をつくりますってね。まだ、一店舗の頃ですよ。その当時から、末は電機屋になるんだ、って叩き込まれましてね。他の道があることなんて、耳にも入れてくれなかった。それでも、小学生や中学生の頃は、パイロットだとか芸術家に憧れていましたけれど、高校生になって、ついに心を決めました。「ああ、親父の跡を継いで、電機屋になるんだな」と。それで、パッと勉強しなくなったんです(笑)。
大朏 それは、誰もがたどる道ですよ(笑)。
小島 そして、大学卒業と同時に父の会社に入社しました。
大朏 私も息子がいる立場だから、お父様の気持ちがよくわかるんですが、二代目をすぐに自分の会社に入れるのか、それとも人様の釜の飯を食べさせてもらって修業させるかは、悩むところなんですよ。でも、いろんな方のお話を伺うと、「どうせ自分の会社を継がせるんだったら、最初から入れておいたほうがいい」という意見が大半ですね。その点、二代目からするとどうですか?
小島 広い世界を見て、広い知識を得てからの方がいいんじゃないでしょうか。その方がものを見る目が広がりますからね。うちは単純な業界ですし、とにかく忙しかったですから、学校を出てすぐに入りましたけれど、今思い返せば、もっといろんなことを勉強しておけばよかったと悔やみますね。
大朏 いやぁ、私だってこの年になってもまだ、今のビジネスが自分にぴったりかどうか、迷っていますよ。今でも、仮の姿の気持ちですね。そんなこと、決して口にはしませんけれど(笑)。
小島 大朏会長は、政治家か大学教授がぴったりという雰囲気ですよね。
大朏 まあ、つまりはインチキタイプってことですね(笑)。ところで、だいぶ以前にお父様にお会いした折りに、「ああ、この会社は伸びるな」と直感したんです。メーカーとしてコジマさんに納品させてもらっていますが、とにかく社員のみなさんの対応が素晴らしい。仕入れ先に対する姿勢が見事だな、と思いましてね。どちらかといえば、仕入れ先が大事にされる事は稀だったので、すごく新鮮な感動を覚えたんです。そういう姿勢を見せられると、グッときますから、「安くて、いい商品を素早く」納入しようとこちらも意気に感じる。ラーメン屋でも、「あそこの会社の人っていい人だな」と思えば、熱々のおいしいラーメンを届けたくなるし「あそこの人はちょっとね」と思うと、伸びたラーメンでもいいかってなるのが人情でしょう。コジマさんが急成長された原因は、「他とは一味違ったもの」、つまり仕入先を大事にする姿勢を徹底されたからだと思いますね。お父様にお目にかかった時、こちらは手ぶらだったのにお土産までいただいて、「これなら毎週お伺いしてもいいなあ」と思いました(笑)。これが商売ってものですよ。うちの会社も何百億円という取引がある仕入先がありますから、社員にはとにかく応対は丁寧にと言ってますが、コジマさんの場合は、どんな社員教育をされているんですか? 大朏会長
小島 創業者からみっちり教育された立場としてお話しますと(笑)、とにかくお客様に喜んでもらうことが小売りの使命である、いい商品をお客様に届ける事が仕事だ、と叩き込まれました。何か特別 な教育システムがあるわけではありませんが、購買担当者の応対はきっちりしてますね。


行商のオバさんが安売りの原点

大朏 もともとは栃木県宇都宮市で、家電販売店をされていたんですよね?
小島 ええ、定価販売していました。駅前に店があったんですが、秋葉原の紙袋をさげた人達がうちの前を素通 りしていくんですよ。これはいけないと思って、東京へお米の行商に行くオバさんに、帰りに秋葉原の商品を運んでもらいましてね。それが安売りの原点になったわけです。でも、いい商品を調達するのには、心底苦労しました。その苦労は会社の歴史に染み込んでいます。
大朏 まさに、流通革命をやられたわけですよね。
小島 やがて、メーカーさんも古い商品の在庫を回してくださるようになり、除々にロードサイド店舗の展開をおこない、コンピュータを導入してデータ管理をするといった理論的戦略を構築していったわけです。
大朏
メーカ側は、どこの販売先にたいしても、リーズナブルプライスで卸しているわけですよね。すると、コジマさんが他を制したのは、販売経費を安く抑えているからですか?
小島 販売効率の違いが価格差に現れているんだと思いますね。販売管理費は、一昨年で13%、昨年が14.8%、今年も14%で推移しそうです。
大朏 それはすごいですね。よそは大体、21%〜22%ぐらいですから。確か、GE(ゼネラルエレクトロニック社)の製品を仕入れてらっしゃるのは、唯一コジマさんだけだと思いますが、こうしたルート開拓は、どんなきっかけから始められたんでしょうか?
小島 ちょうど円高で1ドル85円台の頃ですね。アメリカ本社に直接アタックして、しばらくすると、向こうから「一度、会いたい」という連絡があったんです。為替相場が100円を切って、たとえば大型冷蔵庫や冷凍庫などは日米間でものすごく価格差がでました。冷蔵庫の買い替え需要の三割は、冷凍庫の買い替えですから、「じゃあ、冷凍庫を気軽に買える雰囲気をつくろう」ということで、当時一挙に4千本を仕入れた。すると、1週間で売り切れです。次の4千本が入荷するまで、4ヶ月待ちという、うれしい誤算になりました。
大朏 確か章利さんも、二年前ぐらいにGEに出向されてましたよね。
小島 二ヶ月研修させてもらいました。人事、ファイナンスから、製造プランニングまで、各部署を回してもらい、関連会社にもいったんです。うちは本当に小さな会社ですが、あちらは何十万人という大企業でしょう。それに小売りとメーカーという違い、日米の違いがある。とてもいい勉強になりましたね。
大朏 勉強しようという気持ちで二ヶ月過ごすのと、そうでないのとでは、その結果 は十年分ぐらい違うものですよ。私も大学卒業して、四ヶ月ほどサラリーマン生活したことがありましてね。副社長の秘書を二週間やって、「もう、この人から学ぶことは何もない」って生意気にも思ったんです。会社に入ったら、何でもいいから、何か学んでやろうと思ってましたからね。ものの感じ方といったものまで、どんどん貪欲に吸収していました。
小島 素晴らしいですね。私などは、入社十年目で、やっと二メートル先、一坪の範囲が見えてきたかな、という感じです。これまでは、いつも五十センチ先ぐらいを視野に走ってきましたから。
大朏 それは、謙虚におっしゃているだけですよ。二メートル、一坪といっても、社員から見れば違うんですから。二メートルの尺度が、同じモノサシじゃないわけです。
小島 まあ、はっきり言って冷蔵庫の担ぎ方はうまいですよ(笑)。


商売自体は追い越せる、でも人格は圧倒的

大朏
ところで、お父様はどんな方ですか?
小島 経営者では、素晴らしい先輩方がたくさんいらしゃるので、何とも言えませんが、育ちが育ちですから商売人という世界で言いますと、誰とでも心を開いて、常に対等でお客様のことを本当に大切にしている人ですね。この点に関しては、「勝てないな」と思います。技術的なものは、まあ、わかりませんが。
大朏 それは学べるし、追い越せるものですしね。 小島氏
 
小島 人とのつきあい方でいえば、偉い人たちはもちろんですが、そうでない人とのつきあい方がスゴイナァと思いますね。
 
大朏 そういう姿は、息子にも変わらない?
 
小島 息子には甘いですよ。
 
大朏 結局、商売自体は追い越せるんですよ。だからこそ、親父は人格者でなければならない。商売がうまくいっている人は、みなさん本当の意味で人間がいい方ばかりで、本当に学ぶところが多い。それは部下や若い世代でも同じことで、学べるところがあると、いろんなことを任せてみたくなるものでしょう。息子でも、自分を超えたものを持っていると、スゴイナと思う。でも、「育てたのはオレ」なんだって心の中では思うけれどね(笑)。いやあ、それにしても、お父様は魅力的な方ですよ。
小島 ありがとうございます。
大朏 魅力的な人というのは、「人たらし」なんです。それは、言いかえれば「人格者」ということ。人格がにじみ出るんですね。その辺りは幼い頃の教育が大きく影響するもので、一つの才能といえるでしょうね。
小島 頭の先から足の先まで、電機屋やってますから。
大朏 ある意味で、親父よりも電機屋でしょう?
小島 創業者は、いろいろな物事のなかから選択する。二代目は、もうその道一筋にどっぷりですからね。他の事は考えなくなる。
大朏 でも、社長はそれでいいのかもしれない。
小島 いやあ、視野はどう考えても狭いですよ。


父は四十年かけて、自分でできる安売りをした

大朏 二代目というのは、揶揄される部分もあるでしょう。
小島 いや、恵まれていると思いますね。二代目って親のつくってくれた信用とか人脈とか、普通 では手に入らないものが最初から手に入るじゃないですか。この環境は有り難いですよ。すごく得しているなあ、と思いますね。
大朏 お父様に負けず劣らず、人格者ですね。親父にしてみれば、息子が二代目って言われるのつらいんですよ。でも、息子の方から「だって、オレ得してるもん」って言ってくれるとホッとする。息子が「イヤだな」って思っていたら、親はたまらないですからね。コジマはもっともっといい会社になりますね。与えられた条件がもともと上なんだから、親父の築き上げたものよりももっと上に行こうと思えるのは素晴らしいことですよ。ところで、お父様と違う立場で会社を見てこられて、急成長の決定的な要因は何だと思いますか。決定的なものがあると、周囲は安心するんですが(笑)。それとも企業秘密ですか?
小島 いや、それはないです。とにかく、常にお客様のことを大切にする姿勢が、私でも驚くぐらい根付いているといいましょうか。会社が十億、百億、千億、三千億と成長していっても、その姿勢だけはまったく変わらない。
大朏 具体的にいうと、その姿勢ってどんな感じですか?
小島 たとえば、先程お話ししたGEのケースですが、四ヶ月待ちになっている四千人のお客様一人ひとりに、あと何日で納品されますから、という内容のレターを担当者が一生懸命したためるわけですよ。一通 、一通にタオルも添えたりして送る。それも、上からの指示でやるんじゃなくて、自然とそれができる雰囲気があるんです。採算考えたら、そんな無駄 はやれませんよ。でも、それを許す雰囲気もちゃんとある。この点に関しては、他に絶対負けないと自負できますよね。
大朏 そういう場合の手紙やタオルは、百枚のチラシを配るよりも百倍以上の効果 があるよね。つまり、一万倍の効果になる。そういったセンスや企業文化を、この急成長の波のなかで、どうやって伝承するんですか?
小島 伝承というよりも、社員がみんな、自然に理解しているんです。誰も、非効率だからそんなこと止めましょうとは言わない。手紙書きを全員がやらなくてもいい、ただそれが許される文化が育てばいいんです。それと、急成長の背景としては、時代の流れに乗ったことも大きいと思いますね。つまり、客を大切にする「街の電機屋の文化」を維持したこと、「時代の流れ」がうまくマッチングしたんじゃないでしょうか?
大朏 時代の流れだけでうまく行ったら驚異ですね。ところで、公正取引委員会から不当廉売の疑いがあると警告を受け、いろいろご苦労がおありだったと思いますが、「安値日本一への挑戦」の旗は決して降ろさない、という姿勢は見ていてとても心強いものでした。でも、実際には腹立たしさや理不尽さを痛感されたんじゃないかと思うのですが。
小島 父はあまり悩んだ姿を見せないので、よくわかりませんが、たとえば量 販店で上位になると、一度はメーカーとケンカして取引停止になるものなんですよ。でも、うちはそういったことが一度もなかった。それは、無理をしない自然な経営をしてきたからだと思いますね。だから、大きな摩擦にもならなかった。安く売れない時は、無茶をせずに細々と安売りを続ける。父はかなり気の長い人なんでしょうね。四十年かけて、自分でできる安売りをしてきたんですよ。まあ、公取問題もいろいろ意見はありますが、現実は難しいですから、話はこの辺りで。
大朏 いやあ、コジマさんの日本一で、環境がガラッと変わるんじゃないかと期待してますよ。日本の共産主義的体質には、大いに逆らって頂きたい。いずれ産業界が声を上げる時がくるでしょうから、その時は、僕も旗を持って応援しますよ。

大朏会長&小島氏

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雑誌「企業家」1998/9月号より転載。
本欄は(株)企業家ネットワーク様のご好意により実現したことを記し、謝意を表させていただきます。

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