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プロがプロに聞く経営の話
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 70万世帯に供給練炭からLPGへ華麗な変貌
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Guest   カマタエナジー取締役 赤津慎太郎
Host オンキヨー会長 大朏直人

大朏直人(おおつき・なおと)氏

1941年東京生まれ、57歳。
65年3月、駒澤大学文学部卒。同年4月、ラジオ部品メーカーに入社後独立。電子機器製造の日本電通 を設立、社長に就任。85年、自動車部品メーカーの丸八工場(現在テクノエイト)の再建を契機に、4社の再建に成功。93年6月に東芝傘下のオンキヨーを個人で買収、1年半で黒字経営に転換した。現在、12社の企業集団を率いる

 

大朏会長

赤津氏

赤津慎太郎(あかつ・しんたろう)氏

1962年生まれ。慶應義塾大学を経て、88年米国ブリッジポート大学国際ビジネス学部卒業後、89年カマタ(株)入社。三井物産へ出向し、MITSUI&CO.INCロサンゼルスオフィスからサンディエゴにある三井物産との合弁会社D.E.S(家庭用コージェネレーション)へ配属。
 91年カマタ(株)へ帰任。特需部課長およびカマタ(株)の九州地区統括会社九州カマタ(株)社長代行を兼務。92年カマタ(株)取締役営業統括本部長に就任。99年6月、情報サービス子会社(株)コムネットイレブン社長に就任。同年7月九州カマタ(株)・レモンガスきゅうしゅう(株)・レモンガスかごしま(株)社長就任予定。


LPガスのレモンガスグループで有名なカマタエナジーは、1931年の設立以来、一貫して家庭用燃料を母体として成長してきた。現在、首都圏を中心に全国70万世帯にLPガスを供給しているが、さらに100万世帯供給を目指している。これは東京ガスの10%の規模に当たる大変な数字である。同社の若きホープとして期待される赤津慎太郎に、オンキヨー会長の大朏直人が率直な質問を投げかける。


顧客に近い商売が代々の不文律

大朏 赤津さんのところは、同族企業でしたよね?
赤津 ええ。昭和17年に、祖父が二つの練炭会社を合併したんです。社名のカマタは京浜蒲田の地名に由来しています。株は父が60%所有していますが、正式には父の兄が社長で、父は専務です。昭和七年生まれの父は三男で、兄弟は五人。次男と四男も会社経営に携わっていますね。
大朏 練炭から始まって、現在はLPGを扱われているわけだけれど、いまは家庭用のみ?
赤津 そうですね。現在、70万世帯を扱っています。世帯数でみると、東京ガスが860万世帯、大阪ガスが460万世帯、東邦ガスが200万世帯、西部ガスが85万世帯ですから、東京ガスの8%ぐらいの会社規模というわけです。
大朏 大変なものですね。
赤津 売ろうと思えば、ローリー売りなどいくらでも展開できますが、創業当初からとにかくお客様に近いところで商売しなさいというのが鉄則でした。オートガス・スタンドも全国で7ヶ所やっていますが、あまり積極的じゃないですね。最大の顧客は、マクドナルドさんで、全国3,000店舗のうち都市ガスが約2,200軒、残りを当社がすべて供給しています。お陰様で無借金ですし、剰余金も180億円ほどあります。
大朏 むかし練炭をやっていて、LPGに替わった町のガス屋さんもたくさんあると思うけれど、営業権はいくらぐらいで取得できるの?
赤津 高い時で一軒25万円、だいたいは10万円程度ですね。これまで鹿児島の会社を買ったり、九州で買ったりしています。キャッシュフローがよかったですから、税金に半分ももっていかれるのは真っ平ご免とばかりに、営業権の買収と償却を繰り返してきましたね。
大朏 創業から60年近い歴史をお持ちで、ローリー売りはしないとか、顧客に密着するといった「カマタ憲法」がありますよね。その辺り、三代目の赤津さんはこれからどうしていくつもりなの?
赤津 たとえば土地に関しても、土地本位制ではなくて、なるべくヤドカリでやってきたんですよ。以前は工場が19ヵ所ありましたが、いまはどんどんスクラップ&ビルドしている。だいたいは元売に土地を借りていますね。昭和30年代の後半からLPGを始めてますから、当時のマーケットと今のマーケットは違うんですよ。配送の効率にしても、以前は都心対郊外が五対五だったものが、今では2対8に変わってきています。まあ、危険物ですから工業用土地じゃないと難しいので、そう簡単には移転できないんですが。
大朏 土地にまったく執着しないというのは、バブルの以前から変わらない?
赤津 創業当初からそうですね。特に父は土地を動かすのが嫌いな人。税金が変わっても、ほとんど興味を示しません。私自身も、今までの方針は正しいと思いますね。


「ベストミックス」が必要とされる

大朏 ところで、都市ガスとLPGの割合は、現在どのくらいなんですか?
赤津 いま全国で都市ガスが2,500万世帯、LPGは2,640万世帯ですから、世帯数では都市ガスより大きいんです。ただ、都市ガスは全224社ある中で、東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、西部ガスの4社が圧倒的な力を持っていますからね。LPGの場合は、地方名士がいて、リーダー的企業でも、直売では150万が限界です。つまり2,640万分の150万ですから、一つひとつの企業が小さいんです。ただ、利益はでている。LPGの場合、これまでは今年30億円もうかれば、来年も明らかに30億円もうかるという予測が立ちました。だから、前の年に償却したものは積極的に設備投資できた。たとえば、給湯器から宅内の配管まで、これまではLPG会社がすべて無償で提供していました。これで約35万円かかります。それでも償却しますから、強いところはどんどん強くなっていったんです。
大朏 まあ、新規参入ができないシステムですからね。
赤津 ところが、二年前から認可制から登録制に変わって、誰でもある一定の条件を満たせば販売できるようになりました。その結果 、高値と安値で6千円と2,990円という差がでたんですよ。
大朏 いかに、今まで丸儲けしていたかがわかっちゃった(笑)。
赤津 おっしゃる通りです。10万円の営業権でも、3年ぐらいで償却できますから、もうかっているところは、どんどん営業権の買収をやりました。ただ、これからは都市ガスや電力が、2割下げて国際価格に準じるといってますから、競争の土壌が違ってくると思いますね。
大朏 都市ガスとLPGの価格差は、どのくらいあるの?
赤津 よく水道料金は全国で3倍の差があるといわれますね。たとえば東京ガスの860万世帯に対し、西部ガスは80万世帯ですから、同じ面 積でも西部ガスは歯抜け状態になっている。その結果、東京ガスは3,500円なのに対し、西部ガスは5,000円という価格差がでています。
大朏 現状は都市ガスに侵食されているの?それともプロパンが頑張ってる?
赤津 いま、すごい勢いで空家が増えてるんですよ。われわれの業界は危険物扱っているわけですから、空家だって同じように管理しなくちゃいけない。ですから、都市ガスもプロパンも拮抗している状況ですね。
大朏 でも、これまでは侵食しあう状況ではなかったんでしょう?それとも、都市ガスが配管してある地域をプロパンに替えることも可能なの?
赤津 法律上はできます。ただし、かなり厳しいですね。うちは、都市ガスのど真ん中でLPGを供給しているわけですから、できなくはない。けれど、やはり近隣住民を巻き込んだりして、プロパンは危険だ、とやられますね。
大朏 現実問題、あまり聞いたことないものね。
赤津
ええ。でも、本来はベストミックスにしていくべきだと思うんです。たとえば、阪神大震災規模の東京直下型地震が来たらどうなるか?
大朏
大変な事態になるのは明白だよね。
赤津
阪神大震災の折、実際に都市ガスが止まったのは、地震発生から9時間後なんですよ。なぜ9時間もかかるのか。他の人の生活もあるから、シャットアウトできないんです。
大朏 一度止めると、今度開いたときに事故がおきるからね。
赤津 そう、すべての家庭をチェックしてからじゃないと、開けられないんです。ですから、一ヶ月半から二ヶ月かかる。でも、LPGなら一週間でできます。あの震災で、うちはLPGと水を30台のクルマに積んで現地にかけつけました。仮設住宅も避難所も、すべてプロパンで煮炊きしたんですよ。
大朏 それは、素晴らしい企業ボランティアですね。東京だって、ほんとうにいつ大地震に見舞われるかわからない。
赤津 そうです。だからこそ、避難所になる公共施設では、ベストミックスを取り入れていただきたいんです。LPGのボンベは地面 の揺れと一緒に揺れるから、安全です。でも、都市ガスの埋設部分は確実にダメになる。ですから、学校の体育館の給湯にしても、ガスだけではなく、プロパンをある程度ストックするといったリスク管理をすべきだと思いますね。宝塚では、震災の教訓から併用をしています。通 常は都市ガスですが、ストックでLPGも持っている。こういう併用配管も、今は可能なんですね。LPGのおかげで都市ガスがカロリーアップしましたから。これは、商売を抜きに申し上げたい。あの震災で、あれだけの人々が生活に困り、復旧にあれだけの時間がかかったんですから。

大朏会長&赤津氏


100万世帯がつながるネットワーク事業の展望

大朏
プロパンの場合、比重が重いから爆発しやすい、というイメージがあったよね。プロパンは危ないんだ、という大企業のプロパガンダがうまかったとも思うけれど、実際の事故率はどうなの?
赤津 現在は、プロパンの事故率の方が二分の一です。ただし比重が重いので、一酸化炭素中毒の可能性は高くなる。そこで、当社は赤外線やファイヤーアラームで24時間集中管理してます。全70万世帯のうちの30万世帯は、常時管制センターにオンラインでつながっている。さまざまなメニューがあって、命のボタンという緊急通 報もあるんですよ。これは、競争力の差別化の一環ですから、セコムさんのようにセキュリティ事業としてやるわけではないんですが、将来的には、100万世帯になった時点で、そのインフラをつかったネットワーク事業を考えています。インフラと課金システムが整備されるわけですから、どなたかとソフト供給の提携をして、さまざまなサービスを提供していくつもりですよ。
大朏 100万世帯と常時つながるというのは、すごいことだよね。家電メーカーも、冷蔵庫とか湯沸かし器に異常を察知する仕組みをつけようとしている。たとえば老人家庭で、冷蔵庫の開け閉めの回数が激減すれば、何かヘンだな、とわかる。高齢化社会になるし、そういうサービスはいいですね。
赤津 MKタクシーとの提携も、その一環なんです。MKの無線予約センターと当社のコールセンターを結んで、救急サービスを始めました。救急車だとどこの病院に連れていかれるかわからないけれど、MKのクルマなら指定の病院に運んでくれる。それに、MKは運転手全員に救護看護士の資格をとらせていますから。
大朏 なるほど。MKさんも、顧客サービスに力を入れているという意味では、方向性が一緒ですからね。MKはいま東京で何台やってるの?
赤津 84台です。外資系企業には評判がいいですね。サービスと価格で絶大な人気です。いま神谷町にMK専用乗り場があるんですが、無線予約が大手四社の一社平均の半分はあります。何千台を相手に、うちは84台ですからものすごい勢いですね。2001年には規制撤廃されますから、あとは資本力の問題次第で、台数を増やせますよ。


「レモンガス」のブランドを広めていきたい

大朏 MKタクシーの行灯に「レモンガス」の名前もついているけど、これはいいネーミングだよね。誰のアイデア?
赤津 ありがとうございます。LはLPG、Eはエネルギー、Mはメディア、Oからオープン、Nはネットワークの意味をこめて、私がつけました。ガスは着臭しているから臭いけれど、本来は無味無臭なんです。だから、いずれは匂いもつけたいなと思っている。テレビCMのスポンサーも始めたんですよ「レモンガス」というブランド名だけ売って、カマタの名前は一切出さない。
大朏 それは、徹底したほうがいいね。会社の名前なんかどうでもいいんだから。うちも、オンキヨーじゃなくて「インテック」のブランドで売ってるけれど、プロパガンダの基本はこれだと思うね。
赤津 ラジオでは10年ぐらい宣伝してきたんですが、おもしろい名前だといって替わってくれる人がいるんですよ。一軒で10万円ですから、ほんとうにあり難い。そういう意味で、利益のあるうちは、広告宣伝にも積極的に力を入れてみようと思っています。
大朏
いろんなチャレンジをされて、ステキですね。これからやってみたいことは?
赤津 ガスの魅力を知っていただくこと。リーズナブルで競争力があって、安全で生活が豊かになるレモンガスをどんどん広めていきたいですね。そして、100万世帯のインフラ整備によるネットワーク事業。LPGは毎月必ず使う上に、課金のシステムがある。あとはどんなサービスを提供するかですね。
大朏 情報インフラは、親父の時代にはなかったものだからね。既存の企業のなかに、どれだけ融合させていくかでしょう。
赤津 おかげさまで負の遺産がないですから、父には感謝してますよ。
大朏 社長にはいつなるの?
赤津 2001年4月の予定です。なかなか譲ってくれる気配がないから、「社長にしてくれるのはいつなんだ。引き伸ばしてるんじゃないか」ってね(笑)。
大朏 なるほど、急かしたわけだ(笑)。でも、親父をまったく一線から退かせちゃうのはよくないよ。最後まで現役でいてもらった方が、息子はラクなんだから。
赤津 本当は、アメリカでキャディーをやろうと思って、会社を継ぐつもりなんてなかったんですよ。だから、商社に入ってアメリカ駐在員になって、インターナショナルな可能性に酔いしれてた。そうしたら、「サラリーマン根性になってきた。そろそろ、帰ってこい」と親父に日本に呼び戻されましてね。まあ、自分でも一旗上げたかったし、ビジネスを親父に学ぶのもいいかなと思ったけれど、カマタに戻った初日は、涙がポロポロ出ましたよ。こんなドメスティックな、小さな会社に俺は骨を埋めるのか、と思いましてね。
大朏 継ぎたくないと?
赤津 卸の世界は、理屈じゃないでしょう。そんな親父の姿を見てましたからね。でも、今ではこれも自分の人生だと思ってます。限りなくベストな選択だってね。まあ、親父がいるから、甘えられる部分もあるし、まだ勝負できるぞと思う。
大朏 そういう思いがあるのは、バランス感覚があるからですよ。それがないと、経営者にはなれない。やっぱり、おじいさんから代々、経営者の血を継いでいるんですよ。


大朏会長&赤津氏

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雑誌「企業家倶楽部」1999/8月号より転載。
本欄は(株)企業家ネットワーク様のご好意により実現したことを記し、謝意を表させていただきます。

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