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プロがプロに聞く経営の話
日本経済の復活の決め手は大規模な減税である
Guest   ケン・コーポレーション代表取締役社長   田中健介
Host オンキヨー会長 大朏直人


オンキヨ−会長
Host 
大朏直人 Naoto Ohtsuki

ケン・コーポレーション代表取締役社長
Guest 
田中健介 Kensuke Tanaka

外国人向け高級賃貸住宅の仲介で著名なケン・コーポレーション。田中健介社長は趣味の囲碁から学んだ“必勝の哲学”を自社の経営で実践。良質な不動産の創出が東京を活性化させ、社会貢献につながると語る。増税政策では日本経済の復活はありえないと減税による日本の再建を熱く主張する。


■囲碁で培った必勝哲学

大朏 まず創業のきっかけをお聞きしますが、田中社長は早稲田大学を出て、まず何をやられたのですか。またなぜ不動産業に入られたのでしょうか。
田中 学生時代は囲碁部に入りまして寝食忘れて囲碁に取り組みました。あまり成績は良くなかったし実家が薬の卸問屋だったので、いずれは商売をやりたいと漠然と思っていました。それで大学卒業後、時計バンドなどをつくっていたマルマンに入社しました。マルマン創業者の片山豊さんという方が社員一人一人を事業主に見立てるユニークな経営をしていたので、とりあえずそこに潜り込んだのです。そこで都市担当の卸屋にされまして、時計店やデパートを回っていたのですが、ちまちましたものを扱うのに嫌気がさしまして、たまたま入社した翌年の2月に盲腸で入院したのをきっかけに会社を辞めました。もともと英語が好きでしたから、英語を使った仕事で身を立てたいと思い、英語の猛勉強を始めました。その後ジャパンタイムズなどで求人を探すと、運良くケンのルーツである外人向けの賃貸住宅のお世話をする会社に巡り合ったのです。やってみたらこれが性にあっていた。車を運転しながら日本に来る大商社の若手のエグゼクティブと勝手なお喋りをするのです。不動産とはいいながらコンサル業務もできるし、資産家との人脈もできるし企業とも繋がりができる。プライドを持ってできる仕事だと思いました。私はこの仕事を真面目にやってあらゆる外資系企業、日本の企業、個人の資産家と繋がろうと思いました。最高の人脈、企業脈ができるじゃないかと考えたのです。当初からそれを利用したビッグビジネスをやろうと考えていて、いつの間にかそうなりました。
大朏 実際東京に赴任している欧米のエグゼクティブの65%以上がケン・コーポレーションの仲介したマンションにいると聞くのですが、私の知り合いの外国人は80%以上が御社を利用しているんじゃないかと言っていましたよ。このようになった秘訣は何かありますか。
田中 私は得意なものをさらに磨いて無敵なものにすることが生きがいなのです。戦々恐々とするのは好きではない。また運不運が左右する麻雀などの賭け事も好きではない。それに対して囲碁というのは論理学、危機管理学、分析学、先見学を駆使する理論的、戦略的なゲームなのです。だから囲碁は性に合っているので極めようと思い打ち込んだのです。無敵の状態になろうと努力するうちに囲碁的な考え、つまり必勝哲学が身に付きにきました。事業として外国人に英語を使って不動産を仲介して管理する、また新しいものをオーナーにつくらせる。この分野は資本の論理などではできない分野だ、これなら勝てると思いました。分析してみるとディベロッパーの不動産業はつくってもつくっても売れ残りで利益がなくなる壮大な自転車操業になっている。だから本格的に不動産業を営むならオーナーでなくてはいかんと思い、今ビルを買ったりホテルを買ったりしています。
大朏 ケン・コーポレーションはバブルの時にまったくバブルに乗らなかった唯一といっていいほどの不動産業者ですよね。やはり囲碁の先見学によるものでしょうか。
田中 先見学と哲学ですね。どんどん買って値上がりを待って転売するというのはようするにマネーゲーム。皆さん恐慌を知らないのですか。そんな危険なことなぜするのと冷ややかな目で見ていました。猫も杓子もみんな買い取りに走り、銀行がわれわれの元へも融資しますと多数押し寄せました。しかし私は断り続け、必要なもの以外買いませんでした。さらに1990年頃のことですがバブルが崩壊しそうだという気配を感じ、すぐゴルフ会員権などを全部売りました。その上マネーゲームはビジネス道から外れている。やはり成果報酬的な収入でいくべきだと思いました。また5年、10年、30年とオーナーが守ってきた物件を、弱っているからといって安く買い叩くなんてことは絶対しない。買い取り、転売というのは儲けるためにやるものですから積極的に禁じ、物件はできるだけ直接仲介をして売る方にも買う方にも満足してもらいなさいと社員に言っています。


■良質の不動産が社会貢献につながる

大朏 不動産の仲介のほかにもさまざまな事業をやっていますね。社会貢献が目的だとお聞きしましたが具体的にはどのようなことをやっていらっしゃるのですか。
田中 世直しが趣味なのです。今はビルが30数件、ホテルも10件ぐらいあります。それらはビジネスの資源でもありますし、再生することで社会貢献につなげていくことができる。ホテルをやる理由は、日本の一つの道としての観光国化に貢献したいということです。それと地域の活性化に貢献すること。音楽事業もそうですよ、渋谷を新宿・歌舞伎町のような街にしたくない。もっとグレードの高い文化の街にしようということで渋谷にライブハウスをつくりました。六本木もそうです。私は社会貢献という大義名分がない事業はやりたくないのです。
大朏 ライブハウスに行きましたが水商売とは離れた文化を感じますよね。若者が真面目にいい文化をつくり上げてくれるのなら、そういう場を提供してあげようということなのですね。
田中 大中小のライブハウスに1日2,500人前後の人が出入りしているのです。程度の高い人がお金を払って見に来ている。すると彼らをターゲットに必然的にいいお店が進出してくる。核になるものをつくれば先導しなくても周りに影響を及ぼしていくのです。そういうことを啓蒙するために有線放送会社のシブヤテレビジョンを買い取り、宣伝などに使える街頭テレビを6個に増やしました。区の掲示板としても利用され区役所からも喜ばれました。かつて渋谷に商工中金の不良債権で10年を目途に売却するということで引き受けたビルがいくつもあったのですが、リニューアルなどをしてどんどん再生させたのです。それがまた街並みをよくしていきました。
大朏 よく地域住民によるマンション建設反対運動が起こったりしていますが、そういうことはありますか。
田中 われわれがコンサルしてつくらせるマンションには住民の反対が出たことがありません。なぜならオーナーを説得して高級マンションをつくってもらうからです。グレードの高いものをつくれば、グレードの高い人が入居し、それが周辺地域の資産価値を高めることにもつながるのですから。
大朏 田中社長は普段から自分の哲学をお話しされて、それを建物など形にして示していらっしゃるのでみんな信用してくれるのでしょうね。
田中 東京は首都なのだから住宅のグレードも上げていかなくてはならないと私は思っています。だからオーナーには、その地域で考えられる一番いいものをつくってくださいと言っています。そうすれば周りが競争心を燃やして負けじとばかりにいいものをつくってくれるのでその地域全体のグレードが上がる。それはすなわち自分の財産を守る最善の方法じゃないかと。つまり大衆向けのマンションではなくお金持ち向けのマンションをつくるべきだと提案しています。
大朏 お金持ちが入ったほうが周りの印象も違いますよね。
田中 「1件入れば5件分以上の家賃になります」と言うと「けれどそこが空いたら大変でしょう」とオーナーは言います。それに対しては「そこはプライドと高い収入が取れるのだから長い目で見てほしい。財産を保全するという意味でもできるだけグレードの高いものをつくることが得策です」と説得するのです。しかし問題は、そうやってせっかくつくった高級マンションなのに、日本の相続税はそれを売らないと払えないくらい高いのです。しかもバブルの頃に上がるだけ上がった路線価を不動産が暴落したのに徐々にしか下げていないのです。地方自治体の税収が下がるからです。相続税が非常に高いのはそのためです。今経済苦による自殺者が増えています。だから本当は相続税をはじめ税金をすべてをなくしたい。まあそれは無理としても、すべ ての税を一律安くしてほしいですね。これに関することなのですが世直しの一環として、「日本経済復活の会」の支援をしています。


■財政再建の決め手は減税しかない

大朏 「日本経済復活の会」とはどういった会なのでしょうか。
田中 小野盛司さんという方が代表を務めています。彼が財政赤字を軽減して日本経済が復活に向かうシナリオがないものかとニードというスーパーコンピュータを駆使して計算したところ、こうすれば必ず日本経済は復活するというシナリオが完成したのです。それを啓蒙しているのがこの会なのです。
小泉総理の政策は無駄な金は使わずちまちま節約しましょうということなのです。ところが国の700兆円にもなる膨大な借金はそんなことではどうにもならない。解決のシナリオはないのです。しかし小野先生はあるとおっしゃっています。それは赤字国債を発行するのと平行してGDP(国内総生産)を高めること。そのためには消極財政ではなく積極財政にするべきなのです。
大朏 そこで増税ではなく減税にするべきだとおっしゃっているのですね。
田中 現状の税制はジャパニーズドリームを全く消してしまっている。法人税、所得税をちゃんと払った上で貯めたお金はどう使おうと勝手なはずなのに、本人が死ぬのを待って、さらに遺族から取り上げるのは財産略奪ではないか。この相続税は憲法違反なのではないですかと言いたいですね。これが日本企業の足腰を弱くしている。二代三代がかりで壮大な事業を成し遂げるというのが世界の歴史を見ても大事業を成し遂げた事業家のやり方なのです。それを日本の政府は認めないということなのですから。
大朏 減税したら国家財政が破綻してしまうのではないか、税収が少なくなりますますやっていけなくなるのではないかという意見も出てくると思うのですが。
田中 そうではないのです。民間企業と個人に回った可処分所得、あらゆる減税分は消費と投資に向かうのです。つまり消費と投資が跳ね上がる。なおかつ民間企業と個人に回った可処分所得というのは1年に何回転もするのです。そして国家のGDP規模が跳ね上がっていき、税収も増える。これなら3、40兆円そこそこ赤字国債を発行したところでびくともしないでしょう。すなわち世界のどこから見ても日本の財政は健全化に向かっているということになる。この安心感が大事なのですね。減税の効果はそこにあるんです。ところが従来の財政投融資に回った分は回転しないで凍りつき借金の累積になっているのです。それと今後の日本の課題は少子化についてです。結婚しない人もいるのだから理論上結婚したら2人以上子どもをつくってくれないと減っていくのです。
大朏 合計特殊出生率が1.29だとかいっているのでしょう。東京にいたっては0.9だというのですから。
田中 このままでは亡国の方向なのです。何が少子化を導いたかというと一つには住宅の貧しさですね。なぜ貧しくなったかというと住宅税制ですよ。少子化を止めるにはいくらでも政策があると思います。例えばイタリアのような出産交付金とかですね。日本なら簡単にできるはずですよ。そういうことも何もしないのはおかしい。
大朏 不動産業というのは日本においては多少なりともうさんくさい感じが残っている業界であることは事実だと思います。しかしアメリカにおいては極めて尊敬される職業ですよね。田中社長に初めて会ったとき、まさにアメリカ的な不動産業をやっていらっしゃる方だなと思いました。
田中 それは当然なのです。ビップ(VIP)と呼ばれる外国人に民間外交親善を兼ねて快適な住宅のお世話をする。そして繰り返し繰り返しその会社のビップたちにいい住宅を紹介していくのです。またいい住宅が足りないのでたくさんつくらせることで住宅の国際レベルを上げる。このようにすべていいことずくめなのです。またなぜアメリカで不動産業が尊敬されるかというと、アメリカンドリームの基盤を支えてくれているからなのです。アメリカでは自宅の場合、値上がっても買い換えたときは税金がかからないのです。日本は待ってましたとばかりに税金を取る。これではいい住宅を買えないですよ。住宅が蓄積にならないのですから。アメリカは蓄積になるのです。どんどん大きくすることもできます。日本経済がこれだけよたよたしている原因は人災なのです。その極めつけが税制というわけです。


■社員の活性化を図る試み

大朏 若手の企業家にメッセージをお願いします。
田中 事業をやるときみんなが失敗するのは価値観が違うからです。夢だけやたら大きくて財務に関する知識が弱すぎる。1億円売り上げて利益を2,000万円残す会社の方が、10億円売り上げて5,000万円の赤字を出す会社よりはるかに上です、背伸びをするなということです。利益が出ない会社は罪悪なのです。倒産したら社員を路頭に迷わしますし、結局社員にも取引先にも迷惑がかかるのです。
大朏 私もそれを肝に銘じ事業に携わっていこうと思います。ではケン・コーポレーションの社員に望むことは。
田中 ケンという会社を利用してそれぞれの夢を達成してほしい。それとやはりユニークで今までなかったような発展を遂げさせて、私が亡くなっても何らかの形で存続してもらいたいなと思います。
大朏 御社の部長さんたちとお話したことがあるのですが、田中社長のことを大変尊敬している。社長も部下の方々を尊重している。そういう感じが自然に出ていて大変いいですね。
田中 私はオリンピックに出るような優秀な選手だけを大事にするのではなくて、底辺を支える人たちも大事にしたいのです。そこで自己ギネス記録という賞をつくりまして、自分のどんなちっぽけな記録でもこれまでの営業成績を破った者を表彰し、いくばくかの賞金を出しています。腐った人間が会社を駄目にするのです。大体4割ぐらいは意欲も何もなくしている。なぜ腐るのか。彼らは認められることに飢えているのです。だから自己ギネスというかたちで認めてあげるのです。彼らをいかに活性化させるか、活性化したらどんなにプラスになるかという経営者的な考えですね。去年から始めたのですが、なぜこれに早く気が付かなかったのかと思うぐらいわれながらいい考えだと思っています。うちは毎月オリンピックをやっていますよ。
大朏 とてもすばらしい案ですね。



大朏 直人(おおつき・なおと)氏

1941年東京生まれ。
65年駒沢大学文学部卒業後、ラジオ部品メーカーに入社後独立。
電子機器製造の日本電通を設立、社長に就任。85年自動車部品メーカーの丸八工場(現テクノエイト)の再建を契機に、4社の再建に成功。
93年6月東芝傘下のオンキヨーを個人で買収、1年半で黒字経営に転換した。
03年2月オンキヨーがジャスダックに上場、3度目の株式上場を果たす。
田中健介(たなか・けんすけ)氏

・1939年愛媛県八幡浜市生まれ。
・64年早稲田大学第一政経学部を卒業後、株式会社マルマンに入社。
 その後、外国人向け賃貸仲介の不動産会社に勤務。
・72年8月株式会社ケン・コーポレーションを設立。
代表取締役社長に就任し、現在に至る。
「日本経済復活の会」の顧問としても活躍している。  

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雑誌「企業家倶楽部」2004/12月号より転載。
本欄は(株)企業家ネットワーク様のご好意により実現したことを記し、謝意を表させていただきます。

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