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雑誌「企業家倶楽部」2002/4月号より転載
プロがプロに聞く経営の話
 介護ビジネスにも参入 高機能複合商社を目指す
Guest   日通商事社長 橋本 章
Host オンキヨー会長 大朏直人


オンキヨー会長
Host 
大朏 直人 Naoto Ohtsuki

日通商事社長
Guest 
橋本 章 Akira Hashimoto

石油・LPガスの燃料販売、特殊車両の製造、リース事業から国際物流をサポートする事業まで、物流周辺の多彩な事業を展開する日通商事。目まぐるしく変わる経済環境の中で、物流の最先端ではどんなことが起きているのか。物流の枠を超え、商流にまで踏み込んだ一貫システムをグローバルに展開する同社は介護ビジネスにも参入する。


■ 240tトレーラーもつくる

大朏 まず日通商事について教えてください。
橋本 うちは物流関連だが物流業はやってなくて、トラックも持ってない。物流施設を持たずに物流周辺のさまざまな事業を行っているところに、当社の特徴があります。
大朏 どんな事業をやっているんですか。
橋本 たとえば自動車の整備工場を全国38ケ所に持っていて、大型トラックやクレーンなどの整備事業を行っています。製作部門ではお客様の要望に応じて、240tトレーラーなどの特殊車両をつくっているんです。売り上げで一番大きいのは、石油やLPガスなどの燃料販売事業で、全売上高の三分の一を占めます。しかし、単なる燃料販売業者ではありません。当社は物流を核とした高機能複合商社をめざしているからです。
 
大朏 高機能複合商社とは。
 
橋本 各事業の専門性の向上による競争力の強化と、複合化による相乗効果を生み出すことです。物流システムの高度化を「核」に産業と暮らしの基盤を支える「拡」物流へと事業を展開しております。このコンセプトを象徴するマーケティングシンボルが「ALOZ(アロッズ)」です。ロジスティクスの頭文字「LO」と「すべて」を意味する「A〜Z」を組み合わせた造語です。
 
大朏 ロジスティクス・サポート事業ではどんなことをしているんですか。
橋本 輸出梱包を主体としたサービスです。当社は梱包業界のリーダーと自負していますが、そもそもはオートバイの輸出梱包から始まっているんです。オートバイを船に積む時、海が荒れても転倒しないようにきちっと梱包する必要があった。そこが原点なんです。そこから始まって現在では自動車メーカーさんたちの海外自動車工場に入れる部品を検品し、梱包して、ジャストインタイムで生産ラインに組み込むような仕事に発展しています。梱包のやり方も時代とともに変わってきて、以前は木材を使っていたのですが、環境問題があるので、現在はスチール梱包が主流になっています。スチールだと再利用できるから問題ないのです。
大朏 オンキョーの立場でいうと、昔はオーディオセットを発泡スチロールでガードしていたんですが、今は発泡スチロールなんかはヨーロッパでは受け入れてくれない。そこでうちではダンボールを折り紙のように畳んで緩衝材にしています。あれもすごい改革だと思います。
橋本 うちは最新鋭のダンボール工場も持っており、ISO14001を取得しています。


■ 各業種の相乗効果を狙う

大朏 そうした仕事は元々は日本通運さん自身が受けていたのですか。
橋本 昔は日本通運には保険代理店、自動車整備会社、自動車販売会社、燃料会社、梱包会社などいろいろな関係会社があった。そういった会社を今後どうするかとなったとき、日本通運自体は物流に特化し、物流周辺の事業は日通商事にまとめることになったのです。
大朏 1966年にはリース事業を開始していますね。どんなものをリースしているのですか。
橋本 自動車関係が多いですが、他に情報機器や産業機器を取り扱っており、まったく一般のリース会社と同じです。業界で三十位ぐらいの会社になっています。
大朏 本当にいろいろなことをやっているんですね。
橋本 私は大学を卒業してからずっと日本通運にいて、副社長を経て、'99年に日通商事に来ました。日本通運の副社長をしていたとき、関連事業を見るというのが、私の役割の一つとしてありました。
大朏 では下地があったわけですね。
橋本 ところがこんな会社だとは思わなかった。あまりにいろんなことやっているので来てみてびっくり。しかも、積極的に新規事業に取り組める素地があるのに、またびっくり。半期ごとの業績を眺めてるだけではわかりません。
大朏 一般的にはいろんな業種をやるより、一つの事業に特化された方がアナリストなどの受けがいいですよね。時代時代で変わるのでしょうが、コアになる事業以外はすべて外注にするとか、そうでなければダメなような風潮が今はあります。これについてはどう思われますか。
橋本 私どもは単にいろんなことをやっているのではなく、いろいろな事業が折り重なって相乗効果を生み出しています。各事業部門がお客様を共有化しております。たとえば自動車を買いたいお客様には、関係会社の太洋日産自動車販売がありますし、リースでというお客様にはリースもできます。販売、リース、どらでも提供できる。それから特定の銀行やメーカー系列に属していないため、お客様に最適な物件を提供できます。
大朏 いろいろな事業を行っていることが御社の強みなんですね。
橋本 実際に情勢の変化により各業種ごとの業績のばらつきはあります。一昨年は燃料部門で大変苦労しました。原油価格が一気に上がったのに、ガソリンスタンドは競争が激しくて、たいして値上げできないから、700億円以上売ったのに利益はほとんどゼロでした。でも他の事業がカバーして、昨年はトータルでは創業以来、最高の利益を出したんです。2001年3月期の連結売上高は3351億円(23%増)、経常利益は51億円でした。こういうことは燃料だけの会社にはできません。
大朏 ある事業がダメでも別の事業でカバーし、安定的な利益を確保しているのですね。
橋本 今、ガソリンスタンドの運営は大変厳しく、ここ1年間で10ケ所閉鎖し、2ケ所をセルフ化しました。このように部門ごとの改革は当然やっておりますが、部門を切り捨てることは考えていません。
大朏 700億円の事業をして、たとえなんにも利益が出なくても、700億円の市場をつかんでいることは大変なことです。燃料だけの事業のように見えても、そのなかにリースや保険も利用しているお客さんも必ず持っているわけですから、利益がないからゼロというわけではないんですよね。その部分がアナリストなどにはなかなかわかってもらえない。
橋本 ガソリンスタンドは単にガソリンを入れるだけではなくて、いろいろな品物を置いてついでに買ってもらう。自動車用品だけではなくて、産直品を置いたり、また現物を置くだけではなくて通信販売をやると。申込書を置いておいて、いろいろな商品の注文を受け付ける。そういう意味で相乗効果があるわけです。
   
大朏 それは御社の資産ですから、そういうものを上手に活かしていくべきでしょうね。
橋本 いかにうまく利用するかですよ。やり方によっては非常に面白くなると思います。


■ 世界企業の物流部門を担う

大朏 物流に携わっていると景気や業界の変化がダイレクトにわかると思いますが、最近はどんな変化が見られますか。
橋本 やはり産業の空洞化がものすごい勢いで進んでます。今まで国内でつくっていたものを国外でつくるようになり、国内外の部品、設備などを今度はタイ向けですよ、インド向けですよという形で世界中に配送されるようになっています。この動きは引き続き、ものすごい勢いで進んでいます。海外向けの部品なども、梱包の中身がどんどん変わっています。
大朏 そうした中で、御社はどのような対応をしていくのですか。
橋本 ロジスティクスとは、これまでは単純に品物を運ぶとか保管する意味でしたが、今では生産から集金まで、トータルで考えるようになってきた。そこで私どもは顧客に代わって物流全般をコーディネートするサードパーティー・ロジスティクス事業を展開しています。ファーストパーティはお客さま、セカンドパーティは物流業者、そして私どもがサードパーティーです。
大朏 どんな事業なのですか。
橋本 情報機器メーカーなど、世界中に拠点があるグローバル企業に最適な物流システムを提供しています。これらの企業では世界中に工場や拠点がありますが、部品メーカーへの発注から組み立て、在庫管理、出荷までの一貫管理を私どもが請け負い、世界中の拠点に供給しています。私どもが部品をメーカーから買って、それを売り渡すという形にしているので、メーカーは出荷の段階から在庫の心配も何もしなくていいし、物流の部門をまったく持たなくていいのです。
大朏 部品の価格は誰が決めるのですか。
橋本 発注者であるグローバル企業と部品メーカーです。
大朏 すると顧客にとっては資金繰り面でも利用価値がありますね。
橋本 そうです。その意味でお客様の方は資産圧縮になるわけです。
大朏 それで御社の利益率そのものは低くなっているのですね。
橋本 そうです。ただ着実に利益は出しています。
大朏 そういうお客さんの作り方ができるのは、御社の財産、強みですよね。
橋本 日本通運のワールドワイドな組織網は世界一ですから。アメリカだけでも日通の物流拠点は100以上あります。当社はこのネットワークを活用し、世界企業のどんな要望にも対応できるのです。


■ 介護ビジネスに参入

大朏 昨年10月に東証二部への上場が予定されていたのを、株式市況の低迷を理由に延期されましたね。
橋本 上場の承認は得ているのですが、その直後に米国で同時多発テロ事件があって、市況が最悪の状態になりました。調達資金はITシステム基盤の拡充に活用したいと考えていたのですが、市場の環境が悪すぎるので延期しました。今後の上場は、市場の環境を見て決めたいと思います。
大朏 今後の事業展開についてお聞かせください。
橋本 2月から介護ビジネスに参入しました。介護用品・器具のレンタルと販売をします。インターネットで車椅子などを注文すれば、日通が届けてくれ、請求なども同時に一括でできるソフトを開発しました。介護関係の費用は九割が国や市町村が持つのですが、そうした請求も一括処理できるシステムなので、ユーザーにとって非常に便利なサービスです。
大朏 介護器具会社だけではなく介護をする会社とも組むのですか。
橋本 そうです。介護施設、老人施設などで使っていただきます。
大朏 介護会社をつくるわけではないのですね。
橋本 自社で行います。「福祉用具貸与専門相談員」の資格を、約100人の社員が取得しました。2月中に首都圏の一都三県でスタートし、順次全国展開を進めていきます。一番のポイントはソフトを開発して手続きを簡単にしたことです。
大朏 お客さんは主にどんな方になるんですか。
橋本 介護を受けている個人と施設、老人ホームなど両方を対象にしています。
大朏 面白そうですね。
橋本 それから今、日通のペリカン便を利用しての通信販売代金の集金代行サービスを行っていますが、これを拡大して債権買い取り、決済事務代行の一切を請け負う「ペイメントサービス」を事業化しようとしています。ネットショッピングなどの支払方法には代金引換、クレジットカード、銀行振込、郵便振込、コンビニ決済などがありますが、すべての支払い手段に対応して、決済事務も含めて代行する。通信販売業者はうちを通すことによって、銀行や郵便局などの入金を個別に集計する必要がない。すべての入金が一覧できる形で提供できる。一切をうちに任せればいいのです。これには航空貨物や引越の代金回収も含まれます。また決済手段にかかわらず決められた日に、代金をまとめて振り込むので、入金サイトが短くなるという特長もあります。
大朏 いろんなことをやっているからこういうことができるのですよね。あまり特化しない良さですよね。
橋本 これがビジネスモデルとして成り立つかどうか、今相談してます。
大朏 メーカーの商品では、こういうのは全く特許にならないんですよ。たとえばテレビにラジオを付けたり、電子レンジにアイロンを付けたりした複合商品を作っても特許にはならない。でもビジネスモデルについてはまだまだあるかもしれないですね。アメリカなどではどんどんビジネスモデルの特許をとっていますから、是非がんばってください。最後に、読者に伝えたいことはありますか。
橋本 一番大事に考えているのは、現在持っているこれだけの業種、部門を活かして高機能複合商社として会社全体を伸ばしていくことです。会社の歴史は古いですが多様な可能性を秘めているので、絶えずベンチャー精神でチャレンジしていきたいと思っています。




大朏 直人(おおつき・なおと)氏

1941年東京生まれ。
65年駒沢大学文学部卒。
同年4月、ラジオ部品メーカーに入社後独立。電子機器製造の日本電通を設立、 社長に就任。85年、自動車部品メーカーの丸八工場(現テクノエイト)の再建を契機に、 4社の再建に成功。93年6月に東芝傘下のオンキヨーを個人で買収、1年半で黒字経営に転換した。
現在、12社の企業集団を率いる。
橋本 章(はしもと・あきら)氏

1936年7月4日、栃木県生まれ。59年、東京大学法学部卒業後、日本通運株式会社に入社。 83年渋谷支店長。85年新宿支店長。86年中国支店総務部長。89年大分支店長。 91年仙台支店長。93年取締役。95年常務取締役東北支店長。97年代表取締役副社長。 99年日通商事代表取締役社長。趣味はコントラクトブリッジ。

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雑誌「企業家倶楽部」2002/4月号より転載。
本欄は(株)企業家ネットワーク様のご好意により実現したことを記し、謝意を表させていただきます。


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